白金自然教育園 ~都心に残された森・秋11月~


 

【東京都 港区 平成24年11月18日(日)】
 
 ずいぶん寒くなりました。11月も半ばです。この時期になるとどこかに出かけるにも穏やかな日を選んでしまいますね。「雨の日でも雨の日でしか見られないものがある」 観察会ではよく使われるフレーズなんですけどね。風邪を引いてもなんですし。

 入口

 ということで、今日は穏やかな小春日和。スタートも昼過ぎからとちょっと遅めにしたので、日差しを楽しみながらゆっくりと歩くのにはもってこいです。さあ晩秋の自然教育園を見てみましょう。

 ウバユリ

 さっそく目についたのはウバユリの果実。中身の種子は落ちきっていて、既に鞘だけになっていますね。2箇月前はこんな感じだったのに。でも、最後までしゃきっと背筋の伸びた花です。

 ムラサキシキブ

 ムラサキシキブの実はとても自然のものとは思えない色合いです。もうちょっと赤みが強いと梅仁丹なんですが。
 庭木としてよく植えられているのはコムラサキの方。ムラサキシキブのように実がバラバラに付かず、茎の葉腋に密集して付きます。それが茎に何段にも付いている姿が可愛くて、園芸用としても重宝されているのです。

 カリガネソウ

 こっちはずいぶんと地味な果実。カリガネソウのものです。大きさはムラサキシキブの実とほぼ同じくらいです。花は派手なんですがね。

 キチジョウソウ

 花が咲くと良いことが起こるという言い伝えがあるキチジョウソウ。漢字では「吉祥草」と書き、「吉祥」とは仏教語で「良い兆し」のことをいうそうです。名の由来は、花が滅多に咲かないからこれが咲くと良い兆しということのようですが、毎年ちゃんと咲きます。確かに花が株元に隠れてしまっていて、ぱっと見は葉が繁っているのみで花が咲いてないかのようではありますが。この花が咲くともう冬が近いしるしです。

 ヒヨドリジョウゴ

 これはヒヨドリジョウゴの実。名前の由来は、ヒヨドリが好んで食べるので「鵯上戸」となったとのことです。でも、実際ヒヨドリがこれを好むという話を聞いたことがないんですよね。ちなみに有毒で食べられません。

 

 園内の観察路を水生植物園に向かって下りて行きます。

 

 池の端にある東屋の前にはたくさんのドングリが落ちていました。小石よりも多いくらい。(大袈裟か。)

 定点写真

 定点写真です。秋がぐっと深くなりましたね。夏にはむせ返るような緑でしたが。

 コバギボウシ

 水辺におもしろいものが。この黒くて薄っぺらいのはコバギボウシの種子です。見ようによってはカサブタです。

 水生植物園

 なんかモズの高鳴きでも聞こえてきそうな風景ですな。チキッ、チキチキチキッ。

 秋の野

 逆光に輝くススキの穂。遠い子どもの頃に見た風景を思い出させます。何か忘れ物をしてしまったような気がする晩秋の午後です。

 ノハラアザミ

 この時期にに見ることのできる数少ない花のうちの一つ、ノハラアザミです。世界には約250種類のアザミがあって、その3分の1が日本に生育し、そのほとんどが日本の固有種だそうです。これって結構凄いですね。アザミと言えば日本、といっていいくらいだと思います。でも、アザミって日常的には目にしませんよね。それは日本のアザミの大部分は高山や山間部に生育しているからだと思います。平地で目にするのは少数派なのです。

 ノイバラ

 午後の光を浴びるノイバラの果実。この実は「営実」と呼ばれ古来便秘の薬として用いられていたそうです。効果がてきめんに現れるようで、用量を間違えるとえらいことになるそうです。

 

 池の中にも秋がたくさん落ちていました。

 エビヅル

 水生植物園から丘の上の武蔵野植物園に向かいます。これはエビヅルの葉ですね。渋い紅葉です。

 武蔵野植物園

 今日は天気がいいので園内を散策する人も多いです。この辺りは雅叙園とか八方園とか有名な結婚式場があるので、ときどきフォーマルな服装で散策しているグループやカップルと出会います。さすがは白金台。

 アブラチャン

 アブラチャンの紅葉。いい色合いです。これからもっと色が濃くなっていくでしょう。

 ゲンノショウコ

 中世ヨーロッパの紋様みたい。ゲンノショウコの果実です。中央の剣のような形のものがはじける前。実が熟すと表面の皮が跳ね上がりくるっと巻きます。その反動で種子を遠くまで飛ばすという仕組みです。ゲンノショウコの別名はミコシグサ。この果実の形が御神輿の飾りに似ているからです。

 シロモジ

 おお、この特徴的な葉の形はシロモジ。その形から「ゴジラの足跡」と呼んでいます。本来関東地方では見られない樹種なので、おそらく植栽したものだと思います。シロモジは中央構造線以南に特徴的な「襲速紀(そはやき)要素」の植物です。(こちら参照)

 アワコガネギク

 秋の花といえばやっぱり菊ですね。菊は日照時間が短くなってくると開花するという性質があるそうです。とはいえ観賞用の菊はハウスで照明をコントロールしながら栽培されるので、一年中供給されていますが。これはアワコガネギク。漢字では「泡黄金菊」と書きます。花が密集して咲く様子を泡に見立てたということです。

 ガマズミ

 たわわに実ったガマズミの果実。これは正真正銘、ヒヨドリの大好物です。

 水鳥の沼

 水鳥の沼までやって来ました。今年の観察開始から11箇月目にして初めてここで水鳥を見ました。すぐ裏手を首都高が通っているので、鳥たちもおちおちのんびりともしていられないのだと思います。

 

 森の中の小径を管理棟に向かって歩いて行きます。園内を一周する頃には、体も心ももうすっかりのんびりとしたリズムになりきっています。

 

 午後3時、もうそろそろ夕方の空になる時間ですね。日陰は空気がひんやりとしています。管理棟の自販機で暖かいお茶でも飲んで、暖まってから帰りたいと思います。
 
 白金自然教育園での定点観察も残すところあと1回。来月はおそらく紅葉が盛りを迎えているのではないでしょうか。都心の紅葉は遅いですからね。楽しみです。
 
 
   自然教育園の周辺の様子