自然教育園周辺の様子

 
 白金自然教育園(正しくは国立科学博物館附属自然教育園)の中の様子は公式ホームページに詳しいので、そちらをご覧いただくとして、ここでは自然教育園の周辺の様子を紹介したいと思います。
 

山手台地と下町低地
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 まずは、都心部の地形から。特徴的なのは西と東とでその様相がまったく異なること。西側は武蔵野台地の東端に当たり、低地との標高差は先端部で20mほどになります(上の図は標高5mのところを黄色に、そこから標高が高くなるほど茶色くなるように着色しています。)。台地の上は細かく浸食されているのが分かりますね。これが東京には坂が多いと言われる所以です。自然教育園は淀橋台という台地の南側に位置していて、北に渋谷川の谷、南に目黒川の谷が切れ込んでいます。淀橋台の北に位置する江戸城は台地と低地をうまく利用して作られているといいます。最も大きな切れ込みは淀橋台と豊島台とを分ける神田川の谷。神田川は江戸時代に洪水対策のため台地の先端を横切るように真東に向けて流路を変えられてしまいました。その深い水路が上の図でもよく分かります。
 都心の東側には真っ平らな低地が広がっています。この低地はそのほとんどが海抜4m以下。荒川河口から四ツ木当たりまでは流路の左右の広い範囲が海抜0mを下回っています。この低地は、もともと縄文時代には関東平野の奥深くまで入り込んでいた海がその後次第に後退していく過程で海岸に沿って作った砂州と、南北に流れる川(古利根川など)が蛇行しながら作った自然堤防からなる、広大な低湿地だったそうです。ここに海抜0m地帯が形成されたのはほんの70年前くらいからのこと。工業用に地下水を汲み上げ続けたことに加え、南関東の地中深くに広がっているガス田からの揚水(ここのガスは水溶性だそうです。) によって急激に沈み始めたのだとか。なお、ガス田からの揚水は70年代初頭には終了したそうです。
 
 自然教育園の周辺は、台地の上を南北に桜田通り(国道1号線)と首都高2号線が走り、東西に目黒通りが走っています。いずれも交通量の多い幹線道路です。周辺は基本的には住宅街ですが、西側には目黒駅を中心として商業施設が広がっています。行政区的には、港区に属していて、西側と南側を品川区に接しています。しかし、よくこれまで開発されることなく残されてきたものですね。 

 
 
 下の4つの図は自然教育園上空300mから見下ろした鳥瞰図。地上の建造物を全部取り払うとこんな感じになるんでしょうね。
 北方向を見ると、渋谷川の奥に広尾や青山、六本木などのおしゃれな街が見えます。西方向には山手線と目黒川が。その向こうには多摩川も見えていますね。南方向には五反田と、その奥に東京湾。そして東方向には品川や高輪など臨海部の街が見えています。

北方向 西方向
 
南方向 東方向
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 参考:東京の自然史(紀伊國屋書店)