金時山 〜山ガールも山元ガールも〜


 

【神奈川県 箱根町 平成25年9月28日(土)】
 
 秋本番。野山歩きにはもってこいの季節になってきました。今回は、yamaneko+妻+職場の同僚という変則メンバーで山に向かいます。目的地は箱根の金時山。4年前の正月に一人で歩いたコースをを辿る予定です。同行のTさんとB君とはこれまでも何回か一緒に山に登ったことがありますが、初心者山ガールのKさんとは今回初めて一緒に登ります。妻は、後日会社の仲間と金時山に登るとのことで、今回はその下見です。
 
                       
 
 新宿駅西口、小田急ハルク前のバス乗り場に6時50分集合。埼玉から埼京線でやって来たTさんは今年1月の筑波山以来の参加。千葉からのB君は3年前に浅間尾根を歩いて以来の参加です。B君はここまでですでに小旅行を終えたような疲労感を漂わせていました。Kさんは登山経験は高尾山と大山のみ。しかも高尾山はビアテラス目的だったということです。
 7時発の箱根行き高速バスは、補助席を全部使うほどの混みよう。人気の箱根とは思っていましたが、ここまでの混みようだとは。確かに都心のターミナル駅から登山口の前まで乗り換えなしで行けるなんて、普通の山登りではちょっとありませんよね。乗客の8割は女性で、その半分は登山、もう半分は御殿場のアウトレットへの買い物客といった感じでした。残り2割の男性はほとんどが登山仕様で、一部ビジネスマンの姿も。お仕事ご苦労様です。
 
 東名高速は川崎ICの先から横浜町田ICまで渋滞していました。途中、御殿場駅で結構下車していきましたが、新たにJRからの乗り換え組が乗車してきて、再び満杯になってしまいました。御殿場からは箱根の外輪山越えです。バスは乙女峠をトンネルで抜けて、目的地の金時神社前バス停には予定より40分遅れの9時30分に到着しました。

 バスを下りて

 バスを降りると目の前にはゴルフの練習場が。金時神社はこの奥です。ゴルフの駐車場の先には神社の駐車場があり(でも停まっていたのは登山客の車か)、そこにトイレもありました。

 いざ出発

 左からTさん、Kさん、、B君、そして我が妻です。軽く準備運動をしてから9時50分、登山開始です。


Kashmir 3D

 今日のコースは、このバス停前から公時神社を経由して、林間の道を山頂方向にまっすぐ登って行きます。途中、金時宿り石の辺りから傾斜がきつくなりはじめ、ヒノキの植林地を抜けると視界が開けて稜線に出ます。明神ヶ岳方面からの道と合流してさらに登って行くと山頂。そこからは箱根外輪山の稜線を乙女峠に向かって下山していきます。

 公時神社

 まずは金時神社へお参りして登山の安全を祈願しました。ちなみにバス停は「金時神社前」でしたが、神社自体には「公時神社」と表記されていました。いずれも「きんとき」と発音します。鳥居のはるか向こうに金時山の山頂が見えています。これからあそこまで行くのです。

 はじめは森の中を歩きます。木漏れ日が登山道をマーブルに彩っているのがいい感じ。空気を肺の奥まで深く吸い込みます。

 シロヨメナ

 シロヨメナは、山地の森の縁に生える、キク科シオン属を代表する野菊です。

 ホトトギス

 変わった造りで目を引くのはホトトギス。山地のやや湿ったところに生える花です。花茎が垂れ下がって咲くことが多いです。名前は花にある斑点を鳥のホトトギスの胸にある模様に例えたものだそうです。

 キイボカサタケ

 鮮やかなレモンイエローのキノコを発見。高さは10pほどで、全体に柔らかい感じのキノコです。帰宅後に調べてみたらキイボカサタケという種類のものでした。先端の突起をイボと称してのネーミングのようです。他にアカイボカサタケ、シロイボカサタケという仲間のキノコがあるそう。毒キノコで、胃腸系の中毒を起こすと記載されていました。

 しばらく行くと舗装された林道を横切ります。この辺りまでは傾斜は緩やかです。4年前に歩いたときは林道を横切るまでに金太郎が蹴落としたと伝えられている大きな岩があったはずですが、見逃したでしょうか。それとも風化したか?

 金時宿り岩

 林道から10分、その昔金太郎が夜露をしのいだという「金時宿り岩」までやって来ました。ここで小休止です。直径10mくらいはある巨大な岩がぱかっと真っ二つにわれています。木の杖や木材などでつっかえ棒のようにしてありますが、これはもちろん実質的な意味はなくてご愛嬌。妻もお決まりのポーズを。
 休憩のついでに小腹が空いてきたのでいつものようにアンパンを食べることに。 ここでKさんが「いいものを持って来ました。」と言ってみんなに虫除けのテープを配り始めました。薬剤が染み込んだ紙製のテープで、リング状にして手首などに巻いて使うものです。ところがこれがなかなかの芳香というか刺激臭で、例えるならば、ショウガから抽出したオイルがあるならこんな匂いかもといった感じ。これを全員が付けたものだから、周囲には異様な匂いが立ち込めました。 後からやってきたグループも「なんか匂うね。」「サンショウの匂いじゃない。」とキョロキョロしながらクンクンと鼻を鳴らす始末。我々はそそくさとその場を立ち去りました。

 スギゴケ

 登山道脇の斜面にスギゴケがまばらに生えていました。本来は絨毯のように密生する特徴があるのですが、この状態はいったい。もともと密生していた場所が崩れ、残った胞子からまた復活する途中なのかもしれません。

 道はヒノキ林の中を行き、次第に傾斜もきつくなってきました。金時山は人気が高くたくさんのグループが登っているので、休憩をとるといくつものグループに追い抜かれていくのですが、その度に「ん?何の匂いだ?」と小首を傾げて通り過ぎて行きます。 (スミマセン…)

 ホトトギス

 どうやら今日はホホトギスの日のようです。路傍のあちこちで綺麗な花を見せてくれています。蕾は…、座薬みたいです。

 キイロスズメバチ

 ノダケの蜜を吸いにキイロスズメバチが来ていました。ノダケとこのハチの取り合わせはよく見かけます。キイロスズメバチは日本に生息するスズメバチの中では最も小型ですが、巣の規模は最も大きく、直径1mを超えるものもあるといいます。攻撃性も強いです。

 木立の間から展望が効くようになってきました。ずいぶん登ってきましたね。眼下に広がっているのは仙石原のゴルフ場でしょうか。

 クサボタン

 変わった花、と思いきや、これはクサボタンの果実です。キンポウゲ科の植物にはこんな白髪のような果実を付けるものがいくつもあります。

 箱根山

 こちらは箱根のカルデラの中心部にそびえる箱根山山塊。最高峰は神山(1438m)で、他にも駒ケ岳(1356m)や冠ケ岳(1412m)、早雲山(1153m)といったピークがあります。中腹から上る噴煙は大涌谷のもの。こうやって見ると箱根山も結構荒々しいですね。

 トリカブト

 秋の花、トリカブトが。箱根近辺は分布域からはヤマトリカブトの咲く地域ですが、これは葉の切れ込みが浅い特徴があります。図鑑には切れ込みの深いハコネトリカブトというのがあると紹介されていたので、これがハコネトリカブトかもしれません。

 合流点

 急な傾斜が一段落し、樹林帯を抜けると矢倉沢峠方面からの道と合流します。案内板には「金時山 20分」。これに元気づけられて、みんなで記念写真を。と、ここでスマホが鳴りはじめました。見ると仕事の電話ではないですか。ううっ、こんなに気持ちのいい山歩きの最中なのに。取り込み中なので20分後くらいに対応すると伝えて、山歩き続行です。

 尾根道

 ここから先は尾根道。ところどころ樹林の中を歩きますが、頭上が明るく、気分も晴れます。小さな子どもたちも登っていて、皆元気がいいです。

 トモエシオガマ

 これはトモエシオガマですね。花茎が倒れていたのでぱっと見ツル性のようにも見えました。

 おお、外輪山が城壁のように続いています。箱根山がカルデラ火山であることが一目で分かる眺望です。箱根火山の成り立ちはこちらを参照。この外輪山がすそ野の残骸だとすると、山本体はいったいどれほどの規模だったのか。相当でかかったことは間違いありません。

 山頂間近

 山頂が近くなりさらに傾斜が増すと、道は渋滞気味に。さあ、あとちょっとです。

   金時山山頂

 そして11時40分、山頂に到着しました。たくさんの人が腰を下ろして休憩しています。これは昼食をとる場所を探すのも一苦労ですね。東京近郊の山ガール御用達スポットとして、まず高尾山、御岳山、そしてここ金時山です。いずれも公共交通機関を使って手軽にアプローチできるところが共通しています。
 富士山の眺望も抜群。金時山に登って富士山が見られないほど残念なことはありませんから、きょうは絶好の登山日和でした。雲の層を境に上下で空気のクリア度が違いますね。山頂には茶屋が2軒。あと綺麗なバイオトイレ(有料)も。これは前回はなかったような。

 いなりずし

 たまたまテーブルが空いたのでみんなで座りました。写真のいなりずしはKさん持参のもの。ただ、Kさんはまさに持参しただけで、作ったのは家事大好きの旦那さん。残業で深夜に帰宅してから酢飯を作り、油揚げを煮込むところからはじめた本格手作り。旦那さん曰く「時間がなく、油揚げは買ってきたものなので、そこが残念」だったとのこと。自宅で油揚げを作るか、普通。その旦那さん、今日は留守番だそうです。

 山菜蕎麦

 B君は山頂の茶屋で山菜蕎麦を注文していました。美味そうなのでyamanekoもまねをすることに。

 食後はさっきの仕事の続きです。数件のメールを打って簡単に差配しました。うち1件はKさんのスマホへ。「さっきから直に聞いてるので分かってます。」 はっ、ごもっとも。そのメールを受けてKさんも関係者にメールをしていました。

 

 山頂からの眺望。外輪山越しの富士山です。一つの山としてのすそ野が広大すぎです。そのすそ野を左に辿ったところにある盾を伏せたような山は愛鷹山。最も右のピークが最高峰の越前岳で、真ん中が位牌岳、一番左が愛鷹山です。富士山の手前には御殿場の街並み。右のすそ野の向こう側には先週登った杓子山が見えていました。

 茶屋

 山頂にはひっきりなしに登山者が上がってきます。じっと座っていると体が冷えてきました。仕事も終わったことだし、午後1時、乙女峠を目指して下山開始です。

 下り始めてほどなく、今日の登山口が見えました。ゴルフ練習場の屋根が見えています。

 上りのコースと違って、こちらは赤い火山灰土です。空気がひんやりして気持ちいい。

 キントキヒゴタイ

 キントキヒゴタイを撮ろうとしたら、花冠の中心に先客がいました。その名もハナグモ。花を訪れる虫を捕食するためにここで待ち伏せしているのです。ハンターですな。

 途中、二つのピークを越えながら、徐々に高度を下げていきます。

 明神ヶ岳・明星ヶ岳

 乙女峠が近づいてきた頃、金時山から東側の外輪山が見渡せました。左の山が明神ヶ岳、右の山が明星ヶ岳。3年前の秋に縦走した山です。

 乙女峠

 2時10分、乙女峠に到着しました。山頂との標高差は200mちょっと。ここには今では閉じてしまった茶屋の跡があります。前回来たときも閉じていたので、営業していたのはもうずいぶん前のことでしょう。峠からは静岡県側の下山口に向かって下りていきます。

 アキチョウジ

 スマートなアキチョウジの花。シソの仲間です。

 2時40分、林道に下りてきました。ここから乙女峠登山口までは5分ほど。

 ふじみ茶屋

 午後2時45分、下山完了。道路を挟んで反対側にあるふじみ茶屋で休憩です。この店は名前のとおり富士山が正面に見えることで人気のようです。

 ビールで軽く反省会。箱根ご当地ラベルでした。今日は帰りに運転しなくていいので、安心して飲めます。とはいえ、バスは3時16分発なので若干慌ただしいですが。
 
 帰りのバスも、補助席は使ってなかったもののほぼ満席でした。ビールの効能もあり、乗車後すぐに眠りに落ちてしまいました。帰りはほとんど渋滞もなかったようで、定刻の15分遅れの5時30分に新宿に到着。秋の日はつるべ落とし、です。高層ビル街はもう暗くなり始めていました。
 
 みんなと別れ、JRの改札に向かおうとして、なんとストックがないことに気がつきました。ストックをふじみ茶屋に置き忘れてきたようです。すぐに電話をしたら、快く探してくれました。すると店の前に落ちていたとのこと。このストックはもう10年以上使っている愛着のあるものなので、ホッとしました。着払いの宅配便で送ってもらえないかお願いしてみると、これも快く引き受けてくれました。また来るかどうか分からない客に対しても親切にしてくれて、有難いことです。今日は最後まで楽しい一日でした。