もみのき森林公園 〜雪上観察会〜


 

【広島県廿日市市 平成17年2月6日(日)】
 
 毎年2月の恒例行事。もみのき森林公園での雪上観察会です。
 この企画は、普段接している自然とはまったく異なる世界を歩いて、いろんなものを見たり、聞いたり、感じたりしようというもの。体力的にも特に厳しいものではないのですが、どうも敷居が高いのか、例年参加者が極端に少ないのです。今回の参加者も総勢9人。交通アクセスが悪いのも影響しているのかもしれません。マイクロバスをチャーターすると大赤字になってしまうので苦しいところです。

 スノーシュー

 まずはスノーシューをレンタルします。これはつま先部分が固定されて、かかとが上がるようになっている「かんじき」のようなもの。軽くて長時間歩いていても疲れない優れものです。ちなみに1日レンタルすると2100円なり。
 10時30分、もみのき荘前の駐車場でストレッチ。
 頭上は薄雲が広がる天気ですが、予報では快方に向かうとのこと。ところどころ青空がのぞいています。

 モミノキをバックに

 風はほとんどありません。絶好の雪上観察日和です。
 今日は昨年の森のフェスティバル指導員交流会の際に自然観察を行ったのと同じコースを歩きます。夏、秋に次いで冬の姿を見てみたいと思います。
 
 スノーシューをとおして感じる雪の感触は場所によって微妙に異なります。例えば、陽が当たるところの雪は表面が一旦溶けて後でそれが固まってざらめ状に堅くなっている。一方、日陰の雪は表面も内部もさっくりしていて柔らかい。そんな発見も妙に新鮮だったりします。
 さっそく動物の足跡を見つけてあーだこーだと話が盛り上がっています。「ウサギかな。」、「キツネじゃない?」、「いやタヌキだろ。」

 カナクギノキの冬芽

 カナクギノキの冬芽です。名前の由来は金釘ではなく樹皮の特徴の「鹿の子」がなまったものという説が有力だそうです。また、この木はクスノキ科の高木の中では唯一の落葉樹。そう言われればそうなのかも。
 
 モミノキの枝が雪でしなっていました。最近テレビで豪雪地域の雪かきのニュースがよく流れていますが、音もなく舞うはかない雪も積もれば予想以上に重たいもの。特にこの辺りの雪は湿り気が多く重たいのです。
 ストックでたたいて雪を落としてみました。

 落とす前  落とした後

 積雪の重さは1m角の大きさでなんと約300キログラム。上の写真の枝にも100キログラムくらいの荷重がかかっていたと思います。雪を落とすとビヨーンと勢いよく元に戻りました。これをすると雪の重さを実感できます。

 チョコクッキー

 真っ白な雪の上にノウサギの落とし物が。
 乾燥して軽く、もちろん無臭で汚いといったイメージはまったくありません。造形的にも見事な出来栄えです。割ってみるとやはり中は繊維質でした。

 オタカラコウ(枯)

 オタカラコウのドライフラワーが立っています。そういえば夏場、ここは小さな湿地になっていて、立派な黄色い花を咲かせていました。
 ときおり雲間から太陽が姿を見せてくれます。薄雲のフィルターに透かして見ると、まん丸の輪郭がくっきりと。いつもは太陽そのものを見つめることはないので、こうやって太陽の輪郭を見ると、あらためて太陽もまん丸い星なんだということが再確認できます。

 誰の家?

 カラスザンショウの木に丸い穴が。鳥か小動物かの巣でしょうか。中は暗くてよく見えませんが、苔のようなものが厚く敷き詰められているようです。残念ながらあるじは見あたりませんでした。
 カラスザンショウはミカンの仲間。幹には鋭いトゲがあり、うっかり触ると痛い目に遭います。この写真を撮る際にも指先を刺してしまいました。
 
 もみのき森林公園にはファミリーゲレンデがあり、親子連れのスキーヤー(あくまでもボーダーではない。)で賑わっています。今日のコースは途中でゲレンデを横切ることになるので、最上部まで上がって迂回することに。
 ちなみにここのクロカンコースは距離も長くなかなかのものです。とはいえ元々がサイクリングコースなので、森の中や渓流沿いといったロケーションはなく、開けた感じのコースです。(以前行ったことのある奥日光の戦場ヶ原にあるコースは鳥肌が出るほどいい雰囲気でした。)

 すべては雪の下

 雪のフィールドは、笹の深い場所とか足場の悪い場所とか障害物が埋められていて、簡単に森の中に入っていくことができます。これは雪のない季節ではできないこと。木々が枝を落としているので森の中は明るく、普段とはまた違った世界を見ることができます。これも雪上観察の楽しみです。

 熊棚の木

 この秋、熊棚が作られていたクリの木のところまでやってきました。今もすこし熊棚の名残があります。ここで青空を見上げながら小休止することにしました。(なぜかあんパンを持参している人が多かった。)
 ビニールシートの上に防寒用のマットを敷いて腰を下ろさなければ、お尻からどんどん冷えてきます。

 吉和冠山

 冬晴れの下、ここから吉和冠の山塊が圧倒的な存在感をもって横たわる姿を見ることができます。冠山のピーク部分は陽光に白く輝き、まるで遠い雪の国に佇む古城のようです。
 
 しばらく見とれていましたが、休憩を終えてまた歩き出すことにしました。

 行き倒れ?

 夏、この辺りの小径には木々に覆われて木漏れ日程度の光しかありませんが、今は積もった雪にも反射して眩しいくらい。サングラスがあればOKです。

 クリの巨樹

 大きなクリの木にたくさんのヤドリギがついていました。
 イクラを一回り大きくしたサイズのヤドリギの実。甘くジューシーでこれがなかなかおいしいんです。ただ極めて粘りけが強く、種をはき出そうとしても糸を引いてなかなか切れない。ペッペッ。くせ者です。

 橙色のタイプ  黄色のタイプ

 ヤドリギはその名のとおり他の木に寄生する植物です。鳥に食べられたヤドリギの実は、その消化器官を通って種が糞とともに排泄されます。そのときに威力を発揮するのが果肉部分の粘りけの強さ。種が消化されるのを防ぎ、排泄後はタラーンと垂れ下がって木の枝や幹に協力にくっつくのです。一度くっついたら雨が降っても容易に流れ落ちることはありません。やがて種から延びた根が木の内部に侵入し根付いていくのです。

 楽に1mくらいは延びます

 ヤドリギの種は鳥の消化器官を通ったものでなければ発芽しないという話を聞いたことがあります。本当だとすれば興味深い話です。鳥に食べられることによって遠くに運ばれる。自分が寄生している木には子孫を残さず、違う場所に子孫を広げるということです。自分の木がヤドリギの過密状態になって衰弱することを防ぎ、それにより自分は安定して実を生産し続ける。そうやって広い範囲に子孫を増やすことができるのです。

 ヒツジ? こびと?

 クルミの葉痕です。ヒツジの顔のようにもこびとの顔のように見えて愛嬌があります。
 葉痕とは枝に葉がくっついていた痕で、ヒツジの目や鼻に見える部分は水や栄養分を送っていたパイプの痕なのです。おでこの辺りにある突起は冬芽です。
 ところで、いつもデジカメはチョークバッグに入れて腰にぶら下げているのですが、デジカメは寒さに弱いので冬にはチョークバッグの底に使い捨てカイロを入れておきます。こうしておくとバッテリーのもちも良いのです。

 けものの足跡  アカシデの冬芽

 雪のフィールドには、まだまだ興味をそそるものがいっぱい。
 あちこちで立ち止まるのでなかなか進みません。気がつくと昼をとっくに回っています。そろそろもみのき荘に戻って遅い昼食としましょう。

 さあ、メシ、メシ

 1時45分、スタート地点に到着。天気はすっかり良くなっていました。