鷲ヶ峰 〜高原の絶景展望台(後編)〜
(後編) |
【長野県 下諏訪町 令和3年8月28日(土)】
霧ヶ峰での爽快野山歩き。後編です。(前編はこちら)
Kashmir3D |
霧ヶ峰を構成する峰の一つ、鷲ヶ峰に向けて登り始め、もうじき1つ目のピークに至ります。時刻は10時50分。スタートから1時間が経過しました。
ミズナラ |
ピークの手前、ミズナラが登山道に覆い被さるように立っていました。長い年月の強風に耐えてきた感があります。
イケマ |
ちょっとくたびれはじめていますが、これはイケマ。根に強い毒を持っているそうです。以前はガガイモ科に属していましたが、今はキョウチクトウ科だそうです。そういえばキョウチクトウにも強毒がありますね。枝を切ってバーベキューの串に使った人がその毒で亡くなるという事故がありました。その割に公園や高速道路の路側帯などに普通に植えられていますが。
1つ目のピーク |
11時ちょうど、1つ目のピークに到着しました。風が気持ちいいです。
北東方向 |
小休止をかねて景色を楽しみます。こちらは北東方向の眺め。荒船山、浅間山などいずれも群馬県との境にある山々です。
ツクバトリカブト |
2つ目のピークに向かっては吊り尾根状の稜線。緩く下ってまた緩く登っていきます。
標高が上がった分、蓼科山の右手に八ヶ岳が見えてきました。そしてその右、ちょうど弧状の雲の下に富士山が見えています。これで奥穂高岳、北岳、富士山と標高ベスト3をコンプリートです。
南アルプスの甲斐駒ヶ岳と北岳は雲に隠れてしまいましたね。
こちらは北アルプス北部の後立山連峰から中央アルプスの空木岳までの大パノラマ。こんな絶景を眺めていると、日常のあれこれが一気に小さなことに感じられますな。
マルバダケブキ |
これはマルバダケブキでしょうね。もうかなり枯れかけていますが。ダケブキは「岳蕗」と書き、字のとおりある程度山深いところで見かけます。
ヤマラッキョウ |
ヤマラッキョウ見つけました。まだ蕾です。この花を初めて見た広島県芸北の中野冠山を思い出しました。野山歩きをはじめてまだ間もない頃でした。
2つ目のピークが目の前です。一足先に妻が到着。
山頂へ |
目線を左にずらすと、山頂に続く稜線が見えました。左端の樹林の向こう側が山頂になります。
2つ目のピーク |
11時20分、2つ目のピークに到着。木立ちはなく360度の展望です。何やらケルンが崩れたような感じに石が折り重なっていました。
北方向 |
写真左がこれから歩く稜線です。その右奥には美ヶ原から連なる山塊が見えています。物見石山などもそのうちの一つです。
少し休憩してから再び歩き始めました。
しばらく歩いて振り返ると、さっき休憩した2つ目のピークがよく見えました。いかにも見晴らしの良さそうな地形ですね。
さてこちらが山頂方向。まだちょっと距離がありそうです。
ニガナ |
ニガナ。漢字では「苦菜」です。食べてみたら苦かったということでしょう。この名が残っているということはそれでも継続的に食べられていたということでしょうが、この花のいったいどこに食べられる部分があるのか。よっぽどたくさん食べないことには腹に溜まらないでしょうね。
更に進んで振り返るとこんな風景。先ほどのピークと車山と八ヶ岳が重なって見えていました。なにか牧歌的です。
少し高度感が出てきましたね。
さあ最後のひと登り。これを越えたら山頂です。
鷲ヶ峰山頂 |
ということで鷲ヶ峰の山頂に到着しました。時刻は11時35分。登り始めから1時間45分かかったことになります。普通の人なら1時間くらいで登れるのでは。
北方向 |
これまでこの山自体の陰になって見えていなかった北側の眺望です。どっちも向いても広々として爽快です。
ランチ |
ひとしきり眺望を楽しんだ後は昼食です。朝、出がけにコンビニで調達したミニ弁当。ちょうどいいサイズです。別途ゆで卵をトッピングしました。
三角点? |
食後、山頂部を散策。三角点らしきものがあったのでよく見てみると「御料局 三角点」と彫られていました。御料局? 調べてみると、御料局とは御料地(皇室の所有地)管理のために明治初期に宮内省に設けられた部署のようで、境界確定や測量などを行っていたところだそうです。この石標はそのときの三角測量に用いたものなんでしょうね。日本の国土全体の測量については、この数年前に当時の内務省によってスタートしていたようです。まさに近代国家としての黎明期のことだったんですね。
下山開始 |
山頂で45分ほど休憩して下山開始。もっともっと長居をしたいところでしたが。
来た道を戻ります。
八ヶ岳連峰 |
蓼科山から八ヶ岳にかけての連なりがよく見えます。これらの峰々はフォッサマグナのど真ん中に突き出た火山群です。まとめて八ヶ岳連峰と呼ばれています。
赤とんぼ |
いわゆる赤とんぼと呼ばれるトンボの代表格はアキアカネでしょう。よく似たナツアカネとの識別はぱっと見では困難で、捕まえて凝視するか写真で確認するほかはありません。識別方法としてよく知られているのは、胸の部分を横から見たときに「山」の字の形(ただし真ん中の縦棒は左右の縦棒の半分の長さ)をした黒い帯模様があるのですが、その真ん中の縦棒の先端が三角形に尖っているのがアキアカネ、水平に切れているのがナツアカネ、というものです(個体差あり)。1ミリ前後の形状の違いなので、飛んでいる状態で見分けるのは無理ですよね。
ところで、夏に出るからナツアカネ、秋に出るからアキアカネ、と思いがちですが、両方とも同じ梅雨時期に発生するのだそうです。ただ、アキアカネは羽化してまもなく暑さを避けて高地に移動してしまい、秋になって涼しくなってから里に現れるため、このよう名前が付いたのではないかということです。写真のトンボは帰宅後拡大して確認したところアキアカネでした。この時期にこの高地にいるということからもその可能性は大ですね。
ツクバトリカブト |
ツクバトリカブトの紫色、デジカメ泣かせです。
この空間の広がり! 小走りに踏み出せば麓に向かって飛んで行けそうな気がします。
2つ目のピークまで戻ってきました。下山後に向かう予定の八島ヶ原湿原が一望です。
コウリンカ |
これは盛りの過ぎたコウリンカか。熾火のような深い橙色が印象的な花です。
ナンテンハギ |
葉がナンテンのそれに似ることからナンテンハギ。別名フタバハギというのは小葉が2個あるから。この2個で一つの葉です。
1つ目のピークも過ぎました。眼下にはスタート地点の駐車場が見えていますね。ここから一気に下って行きます。
駐車場 |
まだ駐車場の空き待ちの車が路側に並んでいますね。
車山 |
車山山頂のレーダードームをアップで。この巨大なレーダーは気象観測用で、静岡県牧之原台地にある同じ機能のレーダーと共に、1999年に廃止された富士山レーダーの役割を代替しているのだそうです。ちなみに、ここには職員は常駐していなくて長野地方気象台から遠隔制御しているのだとか。
マツムシソウ |
山麓に近づくにつれ花の種類が多くなってきました。マツムシソウが涼しげです。
アキノキリンソウ |
アキノキリンソウ。低山でも普通に見かけます。写真の葉はササで、アキノキリンソウのものではありません。
ツマグロヒョウモン |
ツマグロヒョウモンの雌です。翅をゆっくり広げたり閉じたりする際、翅の一部(白い部分とオレンジの部分との間)が光線の加減でメタリックブルーに見えました。その鮮やかさにびっくり。
ヨツバヒヨドリ |
ヒヨドリバナの仲間、ヨツバヒヨドリ。もしゃもしゃしているのは筒状花から飛び出るほどに長い雄しべです。
分岐 |
1時15分、最初の小ピークまで下りてきました。そこから更に下って行き、現れた分岐を左手へ。ここから湿原への近道に入ります。
ゴマナ |
大人の背丈ほどもある藪の中を進んでいきます。これはゴマナ。キク科のシオンの仲間の中では頭花が小さめ。総苞片は縦長で葉には葉柄がほとんどないことなど、比較的見分けるのは簡単です。
ノハラアザミ |
ノハラアザミ。山の上では見かけませんでした。
ノリウツギ |
ノリウツギの「ノリ」は「糊」のこと。枝の内側の皮から粘液を採り、和紙を漉くときの糊に用いたことからこの名が付いたということです。分かりやすい。
ウメバチソウ |
ウメバチソウには草原に咲くというイメージがありますが(yamanekoだけ?)、乾燥気味の山上や少し湿った環境のところでも見かけることがあり、なかなかタフなやつです。
湿原到着 |
草木の生い茂った道を下りきり、八島ヶ原湿原に出ました。時刻は1時30分です。ここからは湿原の縁に沿って木道を歩きますが、続きは次回で。