白金自然教育園 ~都心に残された森・夏6月~


 

【東京都 港区 平成24年6月23日(土)】
 
 梅雨に入ってから半月ちょっとが過ぎようとしていますが、これまでのところ東京ではそんなに雨は降っていません。それでも休日ごとに雑用があったりして、野山歩きは1箇月ぶりくらいです。
 さてさて今月の自然教育園。どんな感じになっているでしょうか。

 路傍植物園

 まずは路傍植物園を歩きます。

 フキ

 いきなりフキの葉がすごいことになっていました。虫の仕業だとは思いますが、変な食べ方をしていますね。でも、これはこれで涼しそう。クールビズです。

 ガクアジサイ

 これはガクアジサイ。装飾花が花序の周囲を額縁のように取り巻くのでこの名が付けられたとのことです。写真の花序はこれから開き始めるところでしょう。

 オオバギボウシ

 オオバギボウシの蕾(?)ではなく、花と萼片がギュッと詰まったもの。これからこの部分が伸びていって、ギボウシ特有の筒状花をぶら下げるように咲かせていきます。

 ここは観察路の左手にある草地です。ずいぶん緑が濃くなりました。この先は立入制限区域です。

 ハグロソウ

 ハグロソウが咲いていました。上下一対に開いた花弁の中に濃い色の斑点が見えます。花弁が2枚の花は珍しいです。ぱっと見、散り落ちた何かの花びらのようでもあります。

 林の中も葉が繁ったおかげで薄暗くなりました。

 ヒイロタケ

 このキノコはヒイロタケ。漢字で書くと「緋色茸」となります。サルノコシカケの仲間です。薄暗い林床でボワッと発光しているようでした。

 ムラサキシキブ

 ひょうたん池まで下りてくると、ちょうどムラサキシキブが満開でした。

 ひょうたん池

 今日は曇っているような日が差しているような、変な天気です。ところでこの池の水、いったいどこから来るのでしょうか。池の周囲に降った雨だけでこれだけの水位を保てるのでしょうか。敷地の外は白金台の市街地ですが、ほぼ全面がアスファルトや建物で覆われていて、雨水がしみ込むような隙間はないような気がするのですが。不思議です。

 定点写真

 定点写真です。いったん木々が緑に覆われてしまうとこれといった変化は見つけにくいですね。でも、よく見てみると、正面や左手の水際にあるアシの丈が一段と高くなっているようです。益々草深くなった感じです。

 イヌヌマトラノオ

 これはイヌヌマトラノオだそうです。初めて見ました。オカトラノオとヌマトラノオとの雑種だそうで、そう言われてみると、穂先を寝かせるところはオカトラノオに似ていて、生えているところはヌマトラノオと同じ水辺です。でも教えられないとなかなか見分けはつきませんね。

 アイスの実?

 ノイバラの葉の裏に変なものがくっついています。うーん、これはどう見ても虫コブ。調べてみるとバラハタマフシというそうです。バラの葉に付く玉状のフシ(フシ=虫コブ)というネーミングなのでしょう。虫コブの名前は概ねこんなように分かりやすいというか理にかなったというか、そういう名前が付けられています。バラハタマバチというハチが卵を産み付けると葉の組織が変化してこんな形になるのだとか。自然の神秘です。

 コバノカモメヅル

 コバノカモメヅルは漢字では「小葉の鴎蔓」と書きます。蔓性の茎に対生する細長い葉が、カモメの翼のように見えるということだそうです。うーん、まあ、見えないこともないかもしれません。ガガイモの仲間です。

 アズマカモメヅル

 コバノカモメヅルの変種で白い花をつけるものをアズマカモメヅルといいます。

 チダケサシ

 チダケサシはこれから盛りを迎えるところ。優しいピンク色をしています。

 アイイロニワゼキショウ

 ニワゼキショウの中でもひときわ青いアイイロニワゼキショウ。帰化植物です。花被片の先端が針のように細くなっているのが特徴です。

 クサフジ

 涼しそうな色合いのクサフジ。この花も今が盛りで、湿地の大半を覆うように咲いていました。綺麗な花ですが、これでも空豆の仲間です。

 ハンゲショウ

 二十四節季を更に3分割して季節を表したものが七十二候。その中に「半夏生ず」というものがあります。今年は7月1日から7月6日まで。ハンゲショウ(半夏生)が咲く頃という意味でしょう。七十二候は二十四節季に比べて細分されていることから、地域的な誤差が出やすいもの。でも、「半夏生ず」はこの辺りの自然の営みとほぼ合致していますね。

 湿地

 ものすごく繁っていますねー。ワッサワサしています。

 トモエソウ

 トモエソウです。花弁がスクリューみたいによじれています。巴(ともえ)とは、「,」(カンマ)のような、勾玉のような形の図形。よく「三つ巴の争い」とかいいますが、これは巴を3つ組み合わせた図形のことで、太鼓の皮の部分に描かれていたりしているアレです。このトモエソウはいわば「五つ巴」ですね。ところで柔道の巴投げはなんで「巴」? 技をかけた状態が二つ巴の形に似ているからでしょうか。

 ノカンゾウ

 この花を見ると夏が来たなと感じます。よく似た花に八重咲きのヤブカンゾウというのがありますが、それに比べてノカンゾウはシャープな印象を受けます。花被片の中央に黄色のラインがあるからでしょう。ただ、ノカンゾウには往々にして不気味な白いアブラムシがビッシリと付いていることがあります。これはキスゲフクレアブラムシというのだそうです。じーっと見ているとぞわっと鳥肌が立ちます。

 ミスジマイマイ

 湿地を離れて再び森の中に入りましょう。
 木の幹にカタツムリが張り付いています。これはミスジマイマイで、基本的には樹上生活者だそうです。殻に3本のスジが入っていることが名の由来ですが、スジのないものから4本のものまでいろいろいるのだとか。気温16度、湿度70%を下回ると休眠状態に入るのだそうです。写真には斜め上にも細長い巻き貝がいますね。

 観察路

 湿地沿いに延びる森の小径を歩いて行きます。この道は途中で折り返すようにカーブして、丘の上にある武蔵野植物園に続いています。


 
 ハンカイソウ


 ハンカイソウは掌状に深く切れ込む大きな葉が特徴。大人の背丈ほどにもなる大型のキクです。その姿が立派なことから、古代中国の猛将「樊噲」(はんかい)の立ち姿に似ているとしてハンカイソウと名付けられたということです。樊噲は前漢時代に劉邦の親衛隊長として活躍した人物だそうです。

 ツノハシバミ

 大きめの葉の下に隠れるようにしていたツノハシバミの実。まだ未熟で秋に向かって大きくなっていきます。堅果はヘーゼルナッツのような味で美味しいです。ハシバミといえば、阿佐山に行ったときにこの実を分けてくれた広島のTさんを思い出します。

 アサザ

 小さな池を覆い尽くすように葉を広げていたのはアサザ。ちょうど黄色い花を咲かせていました。これでもリンドウ科の植物です。リンドウといえば秋の草原ですが、夏の湖沼にもその仲間はいるんですね。

 いつの間にか日が差してきました。

 クサノオウ

 クサノオウも日向が似合う花。ケシの仲間です。茎を折ると黄色い乳液が出でてきて、これが有毒。反面、薬効(沈静・沈痛)もあるそうです。

 タケニグサ

 このタケニグサもケシ科です。2mくらいまで大きくなるので目立ちます。茎が中空なところが竹に似ているから「竹似草」。山中だけでなく、郊外の住宅街などでも見かけることもあったりして、生命力の強さを感じさせます。

 いもりの池

 先月、ここでカルガモの親子が水浴びをしていましたが、今頃どうしているでしょうか。子ガモは大きくなったでしょうか。

 水鳥の沼

 水鳥の沼までやって来ました。すぐ脇を首都高が通っているとは思えない風景です。

 出口近く

 ぶらぶらと歩いて1時間半。梅雨の晴れ間の中、定点観察を終えました。今回も花いっぱいの自然教育園でした。来月は梅雨明け後か? きっと暑いと思います。熱中症対策が必要ですね。あと防虫スプレーも忘れないようにしなければ。
 (さてこれからいったん家に戻って、夕方には新潟に向けて出発です。)
 
  

   自然教育園の周辺の様子