白金自然教育園 〜都心に残された森・春5月〜


 

【東京都 港区 平成24年5月20日(日)】
 
 五月、木々の緑がますます濃くなってくる季節。花々も入れ替わり立ち替わりで盛りを迎えていて、月イチの観察ではフォローしきれなくなっています。さて、今日の自然観察園はどんな感じになっているでしょうか。

 園内に入って最初に目に付いたのはマルバウツギの白い花。ちょうど満開の状態でした。ウツギと名が付きますが、いわゆる「卯の花」のウツギとは別の種です。

 マルバウツギ

 ウツギの花がややラッパ状に開くのに対して、マルバウツギの花は開ききる感じ。そのせいで中央にある橙色の花盤が目立ち、それがかえって白い花のアクセントになっています。花弁が縁取りされているように見えるのもこの花の特徴です。

 トベラ

 トベラの花も白色。つややかな濃緑の葉とのコントラストが鮮やかです。黄色っぽい花もありますが、これは開花時に白かった花が時間経過とともに変色したものです。白い花には白い色素といったものがあるわけではなく、色素がないが故に白く見えているというのを聞いたことがありますが、トベラの場合、開花後に次第に黄色の色素が作られていくということなんでしょうね。

 フタリシズカ

 フタリシズカです。ヒトリシズカの「シズカ」とは静御前のことですが、二人となるとあと一人はいったい誰なんだ(のび太の友達か?)。

 ガマズミ

 ガマズミの花も白。梅雨時は白い花が目立ちます。まあ、涼しそうなので歓迎です。

 散策路を下って池の方へ。

 ???

 地面にたくさん落ちていた花とおぼしきもの。よく見ると花粉のようなものが手のひらに付いているので、糸状のものは雄しべでしょう。頭上を見上げてみると何種類もの樹木があって、いずれも高木でした。

 ミツデカエデ

 これがカエデの仲間だとはちょっと気がつきませんよね。よく見ると葉が対生なのでカエデ科の特徴を踏まえています。

 シャガ

 このアングルのシャガもなかなか新鮮な感じです。普段は正面からの写真ばかりですから。正面から見るより優雅ですね。

 定点写真

 定点写真の場所にやって来ました。先月はまだ芽吹き色の残っていた木々も、もう完全に濃い緑色に変わっています。岸辺の草の丈もずいぶんと長くなりました。

 

 ノイバラ

 おっとここにも白い花が。ノイバラです。この木の仲間はバラエティーに富んでいて、「野」だけでなく「藪」も「森」も「山」もあります。でもそんなに厳密に棲み分けているわけではないでしょうけども。

 池の畔の湿地もみっしりと植物に覆われています。沢山の生命の住処になっているでしょうね。

 チョウジソウ

 チョウジソウが一面に咲いていました。先月蕾の姿を見ていたので、もう花の時期は終わってしまったと思っていましたが、なんとまさに今が盛りでした。これは嬉しい誤算。
 「チョウジ」とは漢字で書くと「丁字」。これは花冠を横から見たときに丁の字の形に似ているからで、香辛料の丁字も同じ由来ですね。
 チョウジソウを見ると津和野の地倉沼の幽玄な風景を思い出します。もう10年も前のことになりますが。

 

 ノハナショウブ

 湿地からすっくと立ち上がる紫の花。いずれがアヤメ、カキツバタ。いやいやこの花はショウブです。正確にはノハナショウブ。花被片の基部に黄色のラインがあるのが目印です。カキツバタはこのラインが白色。アヤメはラインではなくその名のとおり網状の模様があります。ところでアヤメもショウブも漢字で書くと「菖蒲」なんですね。

 

 キショウブ

 こちらはキショウブ。明治時代にヨーロッパからいらした外人さんです。日本全土で野生化しているそうなので、もう帰化手続きを済ませたといってもいいかもしれません。

 池の畔はこんな感じ。ゆったりとしていい雰囲気です。

 森の小径

 池を離れて森の小径に入っていきます。こっちもずいぶん緑が濃くなりました。

 ここも先月と比べると鬱蒼感が一気に増してきました。ちなみにここは港区白金台です。

 いもりの池までやって来ました。するとカルガモの親子が。どうやら水中に落ちている枝を止まり木のようにして、7人兄弟の子ガモが寄り添ってるようです。まだこれから泳ぎを教わるのでしょうか。みんな枝から外れないように一生懸命に枝に止まっていました。親ガモも絶妙な距離感で見守っています。なんとも可愛い光景でした。

 別アングルからのカルガモの親子。行儀がいいですね。「さあ、一人ずつこっちに泳いできてごらん。(母)」

 サイハイラン

 カルガモの親子の様子をひとしきり見物してから、園の出口の方に向かいます。
 藪の奥の方に何か変わった植物が。おおこれはサイハイランですね。本来もうちょっとピンク色で綺麗なんですが、これはこれから満開を迎えるというところでしょう。サイハイランは武将が手にした采配の形に似ているということでこの名が付けられたとか。采配ってハタキを短くしたようなやつですよね(そういえばハタキももう見かけなくなりました。)

 約2時間、ゆっくりと園内を回って管理棟まで戻ってきました。新宿から電車で15分。大都会でこれだけの自然の中に身を置くことができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。このエリア、大切にしなければなりませんね。
 今回も数多くの花に出会うことができました。来月は梅雨のまっただ中でしょう。どんな様子なのか、それはそれで楽しみです。
 
  

   自然教育園の周辺の様子