縞枯山・北横岳 〜花と眺望をお手軽に(後編)〜


 

 (後編)

【長野県 茅野市 平成23年7月17日(日)】
 
 お手軽に花と眺望を楽しもうという縞枯山・北横岳の後編です。(前編はこちら


Kashmir 3D

 ロープウエイの山頂駅をスタートして、まず縞枯山に上り、そこから折り返して雨池山を越えて、今ようやく三ツ岳の手前まで来ています。

 

 壁のような急登が終わると周囲の視界を遮るもののない岩だらけの世界が待っていました。地図上ではここからなだらかな尾根状の地形となっていますが、実際には累々とした岩の海です。

 奥関東山地

 南東の方角には野辺山高原を挟んで奥関東山地の山々が見えました。左から国師ヶ岳(2592m)、朝日岳(2579m)、金峰山(2599m)です。

 三ツ岳

 進行方向に視線を戻すと、三ツ岳が。義経の八艘飛びよろしく岩から岩へ渡って進みます。一つ一つの岩が結構大きいので、比例して隙間も大きく、下手をして落ちてしまったら這い上がってこれないようなところもありました。

 

 しばらく進んでから振り返ると、最初に登ってきたピークが見えました。あの裏側を登ってきたのです。2つ上の写真はあのピークから同じ方角を撮ったものです。

 三ツ岳

 2時5分、いつの間にか三ツ岳の山頂に到着しました。そこいら中がギザギザなので、どこがピークか分かりませんでしたが、山頂を示す柱が立っていたので、かろうじてそれと分かった次第です。

 

 岩にスプレーで書かれた矢印を頼りに、ただひたすらに跳んだり、滑り下りたり、よじ登ったりしながら進んでいきます。腿はパンパン、膝はガクガクです。

 ハクサンシャクナゲ

 このあたりにある緑はみな背の低いものばかり。厳しい環境であることが分かります。このハクサンシャクナゲもそんな中で巡ってきた短い夏に刹那の輝きを見せているのだと思います。

 地獄?

 仏教絵画で描かれる地獄ってこんなんじゃなかったでしたっけ。まさか現世にいるうちに苦行を受けることになろうとは。それにしても下から見たら山の上がこんな状況だとは全く想像もつきませんでした。

 

 写真で切り取ると「北アルプスか?」って感じですが、実際は20mくらいの壁なんです。でもこの鎖、途中でなくなっているんですよね。そっから先がちょっとスリルがありました。

 灌木帯

 ようやく岩地獄が終わって、灌木帯に入ってきました。ちょっとホッとします。

 ゴゼンタチバナ

 ここにもゴゼンタチバナが。やれやれ、花はいいですなぁ。

 コメツガ

 コメツガの球果が枝先にぶら下がっています。大きさはみな2pほどで可愛いです。受粉したての頃は紫色。それが緑色に変わり、これから秋に向かって更に熟してくると、松ぼっくりのように褐色になって種鱗も開いてきます。

 北横岳ヒュッテ

 ロープウエイ駅へと下りていく分岐をやり過ごして更に進むと、やがて北横岳ヒュッテが現れました。時刻は3時10分。今日の行程を終えここに泊まる登山客の人が前庭で談笑していました。yamanekoは建物の脇を通って北横岳に向かいます。

 

 山道の斜度が増してきました。縞枯山と同じようなズルズルと滑る岩っぽい登山道を駆け上がるようにして登っていきます。

 

 だんだん視界が開けてきました。あの向こうが山頂のようです。

 北横岳南峰

 3時20分、北横岳の南峰に到着しました。北横岳には南峰と北峰とがあるのです。あと今更ですが、この山の正式名称は「横岳」で、八ヶ岳の横岳(2829m)と紛らわしいということで、通称「北横岳」と呼ばれているとのことのです。
 写真の奥に写っているのは富士山…、ではなく蓼科山(2530m)です。別名が「諏訪富士」というのも肯けます。

 南方向

 どどーんと八ヶ岳連峰。南峰からの南方向の眺望です。猛々しい峰の連なりと広大な裾野。心と頭がスカーッとしますね、この景色。
 左手前にあるのが縞枯山です。

 南東方向

 南方向の写真から左にパンしたのが上の写真。右端の縞枯山からその左にある雨池山、そして更に左にあるゴツゴツした三ツ岳を辿ってここまで来たのです。縞枯山と雨池山との間にぽつんと芥子粒のように白く写っているは縞枯山荘だと思います。

 南西方向

 今度は南方向の写真から右にパンします。裾野の先に原村や茅野市街が見えます。今朝高速を下りた諏訪南ICもあの辺りになります。その奥には南アルプスの北端部。更にその奥にはうっすらと中央アルプスの稜線も望めます。

 北峰

 さて、ひととおり眺望を楽しんだら北峰に向かいます。北峰の方が8mほど高く、北横岳の標高も北峰の2480mとされていますが、三角点は南峰にあるのです。

 山頂

 数分で北峰に到着。こちらの眺望もなかなか素晴らしそうです。
 山頂には先客が2人。風もなく静かです。ピークに立つと頭上を中心に半球以上の空間が開けていて、そんな中に身を置いていると考えるだけで気分が解放されていくようです。
 しかしここは吹きっさらしの場所で、天候が荒れたときにはじっとしていられないでしょうね。木々の枝の伸び具合がそれを物語っているようです。 

 北西方向

 そして眺望を。北西側には蓼科山が間近に迫っていました。その左奥には霧ヶ峰の山並みが見えています。この蓼科山でも南西斜面に縞枯現象が見られるそうです。

 車山

 霧ヶ峰の主峰、車山です。ここから直線距離で10qあまり。山頂のレーダードームが見えていますね。現物は巨大なのですが、こうやってみるとほとんど点ですね(こちら参照)。

 南峰

 南峰も北峰も横岳噴火口の縁に位置するピークです。写真右手に噴火口があって、小さいながら火口湖もあります。
 さあ、また南峰に戻って下山にかかりましょう。

 七ツ池

 北横岳ヒュッテまで下りてきたら、ちょっと寄り道して七ツ池へ。登山道からは3分ほどです。訪れる人もない静かな池でした。

 分岐

 三ツ岳への分岐まで戻ってきました。直進すれば三ツ岳、右手に下ればロープウエイ乗り場へと続いています。看板には「この先、三ツ岳は岩場で危険です。軽装での方は入らないでください。」と書かれていました。反対側の登り口にも書いておいた方が良いのでは。

 

 壁面のような急な山肌をジグザグに下っていきます。足下には十分に気をつけて。

 

 おっと、ロープウエイの山上駅が見えてきました。あと15分もあれば到着するでしょう。最終便は5時発なので、十分に余裕がありそうです。
 
 今回、お手軽に花と眺望とを楽しもうとやって来ましたが、どうしてこれがなかなかハードな山歩きでした。やぱり足場が良くなかったのが大きいですね。変なところの筋肉が痛くなりそうです。でも、怪我もなく下山できて何より。あとは風呂でゆっくりとしたいところです。