縞枯山・北横岳 〜花と眺望をお手軽に(前編)〜


 

 (前編)

【長野県 茅野市 平成23年7月17日(日)】
 
 梅雨明けしてから強烈な暑さの日々が続いています。今年の梅雨はずいぶんせっかちだったようで、関東地方の梅雨入りは5月27日、梅雨明けは7月9日と、梅雨入り梅雨明けともに平年より12日早かったそうです。季節が2週間近く前倒しになっているのでしょうか。この分だとお盆過ぎには秋風が吹き始めそうですね。
 そんな毎日ですが、先日、石老山に登ったときにあまりに暑かったので、今回長野県は蓼科にある北八ヶ岳に行ってみることにしました。八ヶ岳はハードなので、楽に行ける八ヶ岳連峰です。ターゲットは縞枯山と北横岳。縞枯山の標高は2403m、北横岳は2472mもありますが、2230m地点までロープウエイで上がれるので、手軽に登れるのです。yamanekoの得意なパターンです。
 
                       
 
 午前5時、ドリーム号で新宿を出発。首都高4号線から中央道に入り、、一路長野県を目指します。渋滞を避けようと早めに発ったのですが、やはり元八王子バス停辺りから小仏トンネルまでの間は少しノロノロになっていました。さすがは三連休です。高速道路一律千円の特例措置が終了しても遠出をする人は多いんですね。
 途中、山梨県に入ってから睡魔が襲ってきたので、双葉SAに入って30分ほど仮眠。朝の涼しい空気の中で眠ったので、目覚めがすっきりでした。

 

 諏訪南ICで中央道を下りたら、なだらかに広がる八ヶ岳山麓の道をたどり、徐々に高度を上げていきます。国道299号に入ると北八ヶ岳連峰を正面に見る形になりました(上の写真)。その手前には広大な蓼科高原が広がっています。
 今日登るのは正面の縞枯山とその左の北横岳。まずはその間の鞍部に上がりますが、そこまではロープウエイ。そうなるとあとは見てのとおりなだらかな山のようなので、今日は散歩気分で歩けるかもしれません(と、このときはそんなことを考えていたのです。)。

 山麓駅

 9時15分、ロープウエイ乗り場に到着しました。結構な広さの駐車場が8割方車で埋まっています。眩しいくらいの夏の日射し。でも標高が高いせいか爽やかな感じです。ここの標高は1750m。中国地方の最高峰、大山の山頂とほぼ同じ高さです。
 ロープウエイのゴンドラ1台の定員は100人、この時間帯は10分間隔で運行していました。通勤時間帯並みの混み具合で、どんどん観光客を運び上げています。

 

 所要約7分で山上駅に到着しました。建物を出ると上の写真のような風景。左手の方に溶岩で覆われた荒々しい台地のような空間が広がっていて、その中を遊歩道が通っているようです。なので、山登りでない観光客の人たちはその遊歩道を散策して、またロープウエイに乗って下りていくというのが一般的なパターンのようです。

 

 まずは出迎えてくれたアカゲラと記念撮影です。

 縞枯山

 右手にはこれから登ろうとしている縞枯山が見えています。縞枯山の名の由来は、山肌が等高線に沿うように縞状に枯れてしまうところから。しかもその縞が順次山頂の方に向かって移動していくというから不思議です。そのスピードは年間2m弱だそうです。ただ、この現象は縞枯山に特有なものというわけではないようで、中部地方の山岳を中心に何箇所か有名なところが知られているそうです。共通するのは、、標高が2300mから2700mで、シラビソなどの針葉樹の林となっていて、風が強く土壌の水分が乏しいところ。しかもほとんどの場合山の南斜面で生じているそうです。上の写真は北斜面なので、縞になっていませんね。


Kashmir 3D
 

 今日のコースは、ます縞枯山に登り、そこから折り返して雨池山に登り返します。再び下った後、こんどは三ツ岳に向けて急斜面を登り、三ツ岳からは細かくアップダウンを繰り返しながら北横岳に向かいます。山頂で眺望を楽しんだ後は折り返し、途中から壁面をジグザグに下って山頂駅に戻ってくるというものです。

 

 9時55分、ストレッチをしてから歩き始めました。とりあえず縞枯山と雨池山との鞍部、雨池峠を目指します。峠といってもスタート地点からはほぼ水平移動です。歩き始めてほどなく観光客の姿はなくなりました。

 シロバナヘビイチゴ

 日射しを遮るもののない登山道脇に白い可憐な花が。シロバナヘビイチゴです。

 

 緑に覆われた心和む風景ですが、実はごつごつした岩の台地の表面を植物が薄く覆っているだけです。

 コバイケイソウ

 コバイケイソウの花穂が伸び始めていました。夏ですな。

 縞枯山荘

 やがて縞枯山荘が見えてきました。現役の山小屋です。

 雨池峠

 縞枯山荘を素通りして200mで雨池峠に到着しました。10時20分です。ちょっとだけ腰を下ろします。

 

 さてここからが縞枯山への上りになります。

 シナノオトギリ

 オトギリソウの仲間は分かりにくいですが、葉の黒点、明点の様子から、たぶんシナノオトギリかと。

 ベニバナイチヤクソウ

 ベニバナイチヤクソウです。7月中旬なのにまだ蕾。高さは5pほどでした。

 

 オサバグサ

 おお、これは何だ。シダみたいな葉に長い花茎。ナズナのように左右に花を付けています。yamanekoとしても初めて見る花です。
 調べてみるとこれはオサバグサ。本来はもっと盛大に花を付けるようですが、どの株ももう花期の盛りを過ぎているようでした。

 

 オサバグサとは漢字で書くと「筬葉草」。「筬(おさ)」とは機織りのパーツで、横糸を通した後にトントンと糸の目を詰める櫛状の道具のこと。葉の様子が筬に似ていることからこの名が付いたようです。ピンと来ませんがケシ科だそうです。

 

 登山道はほぼ直線。ガレ石が多く、思ったより体力を消耗します。

 

 キソチドリ  

 樹木の足下にひっそりと咲いていたキソチドリ。涼しそうな花ですね。丸っこいつるっとした葉が特徴です。

 ゴゼンタチバナ

 高山の夏を彩る花の代表選手、ゴゼンタチバナです。花を付ける花茎の葉は6枚、そうでないものは4枚です。

 

 ようやく頂上が見えてきました。足下がずるずると崩れて歩きにくいです。

 縞枯山山頂

 11時25分、縞枯山の山頂に到着しました。周囲の木々はその名に恥じない枯れっぷりです。

 ヒメマイヅルソウ

 山頂は眺望もないのですぐに下山開始。登ってきた道を折り返します。
 林の中でヒメマイヅルソウを見かけました。行きと帰りでは同じ道でも気がつかなかったものを見つけたりしますね。

 

 森の中にぽっかりと空いた空間では様々な植物の小さな葉がひしめき合っています。豊かな森を感じさせる風景。これをそっくり切り取ってベランダに敷き詰めたいです。

 

 雨池峠近くまで下りてきました。正面にこれから登る雨池山、そしてしの左奥に北横岳が見えます。北横岳までは結構距離があるようです。

 雨池山への上り

 雨池峠をやり過ごしてそのまま雨池山にとりつきます。ここも岩が多いですが、縞枯山ほどがらがらしてはいないので、少しは歩きやすいです。

 

 12時20分、雨池山の山頂に到着。振り返ると縞枯山が正面に見えています。その山頂からなだらかに下る稜線の先、最も低くなった鞍部にロープウエイの山頂駅があります。
 ここでは荷物を下ろして小休止。

 

 休憩後、反対側に下ります。この道は岩がほとんどなく、歩きやすい道でした。森林浴気分です。

 

 12時45分、三ツ岳との鞍部に到着。これから上りになりますが、いきなり壁登りのような傾斜になっています。腹も空いてきたことだし、とりあえずここで昼食をとって上りのパワーを蓄えることにしました。

 

 昼食後、三ツ岳への上りにとりかかります。この山も岩っぽい山で(それどころか、後で立派な岩山であることが分かったのですが)、足を上げる歩幅が定まらず、結構疲れます。

 スノキ

 花を見かけるたびに足を止め、荒い息を整えることに。花々が休むタイミングを作ってくれているようです。

 コイワカガミ

 既に花期が過ぎてしまっていたコイワカガミですが、この株が唯一花を残しておいてくれたようです。なんかホッとしますね。

 コケモモ

 淡いピンクの高山植物、コケモモです。実は完熟すると赤く甘くなり、美味しいです。そういえばロープウエイ駅の休憩所でもコケモモアイスやコケモモ大福とかを売っていました。ちょっとした名物になっているですね。

 

 ゼーゼー、ハーハー言いながら一歩一歩登っていきます。ところどころに空いている岩の隙間から、ひんやりとした空気が流れ出ていました。ここでも足を止め、息を落ち着かせます。
 ここまでは様々な植物に出会えて、しんどいながらも楽しい山歩きでした。さてこれから後半に。三ツ岳を経由して北横岳を目指します。《後編に続く》