燧裏林道・三条ノ滝 〜静寂の森・轟々の滝(後編)〜
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(後編) |
【福島県 檜枝岐村 平成26年9月2日(火)】
燧ヶ岳の北側、燧裏林道の野山歩き。三条ノ滝経由で元湯山荘までの後編です(前編はこちら)。
![]() 〔今回のルートを大きな地図で〕 |
尾瀬エリア Kashmir 3D |
御池を出発して立て続けに湿原が現れましたが、これからしばらくは森の中です。
小さな沢を渡ります。いったん川筋まで下ってまたもとの高さまで上ることになるのですが、このアップダウンを避けるためには等高線に沿ってもっと谷の奥まで入って遠回りをしなければならなくなるので、まあやむを得ないところです。
ツインピークス |
ごくごく小さな湿原が現れました。天神田代です。左手を見上げると燧ヶ岳の双耳峰が望めました。左が俎ー、右が柴安ーです。
渋沢温泉への分岐 |
天神田代のすぐ先に右に分ける分岐がありました。登山道のはずですがほとんど小川のように水が流れていました。
分岐の先にベンチがあったのでここで小休止。11時40分、アンパンでエネルギー補給です。
ドクベニタケ? |
かわいいキノコ。図鑑で見てもよく分かりません。ドクベニタケかドクベニダマシか、そんなところでしょう。
ナギナタタケ |
これは特徴的な姿なので調べがつきました。ナギナタタケのようです。
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裏燧橋 |
12時、鉄製の構造物が現れました。「裏燧橋 平成9年11月竣工」と銘打たれていました。この橋がまたぐ沢「シボ沢」は水の流れはほとんど見えませんが、大きな岩がゴロゴロしています。大雨が降るたびに鉄砲水が出て、これまでも何度も橋が流され通行不能となってきたのだそうですが、この橋ができてからはそんなこともなくなったのだそうです。
平ヶ岳 |
橋の上からは平ヶ岳が正面に。下を見ると谷底までは20mくらいあるでしょうか。この沢は燧ヶ岳の山頂に端を発する大きな崩壊地の下流に当たり、燧裏林道では最も大きな谷となっています。
さあ、橋を渡るとまた上ったり下ったり。
ヒノキの巨木。根元で大岩を抱いています。
カニコウモリ |
カニコウモリは森の中に咲く花。これで満開状態です。
ときおり足を止めて見上げると、雲一つない青空。もう気の早い紅葉が始まっているようです。
この辺りにはブナの大木が多かったですが、そのほとんどに昔刻んだ落書きの跡が。ご丁寧に日付、住所、名前まで。昭和40年前後の日付が多く、当時はこんなことはご愛敬という感覚だったのでしょう。それが何十年にもわたって恥をさらすことになろうとは。
タマゴタケ |
おお、美味そうなタマゴタケ。まだ出てきたばっかりという感じです。
兎田代上分岐 |
12時40分、分岐が現れました。兎田代上分岐です。左は段吉新道。ほぼ水平移動で元湯山荘に至ります。ここは右に折れて三条ノ池方面へ。
兎田代分岐 |
標高差にして30mほど下るとまた分岐が。今度は左です。右に折れると渋沢温泉です(かなり距離がありますが。)。
兎田代 |
すぐに兎田代が現れました。久々の湿原です。ちょっとホッとしますね。
そしてすぐに森の中へ。そろそろお腹が空いてきた。三条ノ滝で昼食をとることにして、もう少しの辛抱です。
さあここから急降下の開始。三条ノ滝まで一気に150mほど下っていきます。足元に気をつけて。
下るにつれ左手から地響きのような滝の音が聞こえてきました。
三条ノ滝展望台分岐 |
また分岐が現れました。左は元湯山荘方面。右が三条ノ滝への道ですが、滝で行き止まりなのでまたここに戻ってくることになります。道標の根元にリュックが置いてあるのは、身軽になって滝までピストンしようと考えた人がいるのでしょう。
分岐から道のりにして200mちょっとで滝を正面から見られる展望台に到着。こんな吊り橋を渡って更に岩場の先端に向かいます。もうこの辺りになると滝の音が轟々と響いてきます。
足元に展望デッキが見えました。あそこまで下りて行きます。ものすごい角度の階段がありましたが、その角度ゆえ鎖も併設されていて、それをたよりに下っていきます。晩秋になると鎖が凍結し始めるのとのことで、10月下旬からはこのデッキに降りることは禁止されていました。
デッキの広さは20畳くらい。親子とおぼしき一組が休憩していました。デッキの手すりに寄ってみると、まるで宙に浮いているような感覚です。
三条ノ滝 |
そして正面にドドーンと。ものすごい水量と轟音で、なんか水が流れ落ちているというより、巨大なエネルギーが爆発的に放出されているといった印象です。ここから100mは離れていると思いますが、それでもしぶきが飛んできていました。
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落差100m、幅25m。写真だけでは伝わらないと思うので、動画でも。
昼食 |
で、三条ノ滝を見ながらコンビニ弁当を。時刻は1時35分、ちょっと遅めの昼食になりました。
三条ノ滝では約20分間の滞在。ちょっと慌ただしいですが、元湯山荘に向かいます。山小屋には遅くとも3時頃までには入るのがルールなのです。
カメバヒキオコシ |
花だけ見ればアキチョウジのように細長いですが、葉は明らかにカメバヒキオコシのそれ。先端が矢筈型に切れ込み、その中央から長い尻尾のような裂片が出ています。写真では分かりにくいですが(左下にピンぼけで写っている。)。
ダイモンジソウ |
小さな流れの岩の間からダイモンジソウが花茎を伸ばしています。涼やかな花です。
ジャコウソウ |
三条ノ滝からは標高差150mを上ることになります。疲れを感じ始めた体にこたえますが、次々に現れる花たちが力を与えてくれるようです。これはジャコウソウ。山中のちょっと湿ったところに生えています。
ソバナ |
ソバナです。険しい山道で出会う花です。
いい雰囲気の流れですね。こういう場所での小休止は本当に癒されます。
2時35分、展望のきく岩場の先端に出ました。ここは平滑ノ滝を見下ろせるビューポイントのようです。
平滑ノ滝 |
平滑ノ滝は巨大な岩盤上を滑るように流れ下る滝で、豪壮な三条ノ滝とはまた違った迫力で見る者を圧倒してきます。滝は展望岩場の遙か下を流れていて、不用意に前に出ると転落するので注意が必要です。
ホツツジ |
再び山道に戻りました。これはホツツジですね。花期はこれからのようです。
足腰に疲労が溜まってくると、こういった階段状の山道で突っかかってしまうことも。山小屋まではあとちょっと(のはず)です。
朽ちたブナの木に密生するキノコ。森の世代交代に菌類の果たす役割は大きいです。そんなことを考えながら見上げていると、妻いわく「ミニスカートを下から覗いてるみたい」。…そうですか。
傾斜が緩み左手から段吉林道が合流してくると山小屋はすぐそこです。
2時55分、建物が見えてきました。到着したようです。(妻のリュックは?)
さっきの建物は売店併設の無料休憩所。それを過ぎて見えてきたのが元湯山荘です。左手の小さな建物は電源開発(株)の気象観測所だそうです。
元湯山荘 |
午後3時、無事に元湯山荘に到着しました。御池を出発してからちょうど5時間かかったことになります。
さっそくチェックイン。話し好きそうな管理人さんから説明を受けて、部屋に入りました。平日なので空いているかと思いきやほぼ全室に予約が入っているようです。
荷物を置いてさっそく温泉で汗を流します。ここのお風呂は温泉(加温)なので嬉しいです。
夕食 |
夕食は午後5時から。風呂上がりの散策から戻ってきて食卓に付きました。チェックインのときにオプションで発注しておいたイワナの刺身も(写真左上)。管理人さんいわく「でも地元産じゃないですよ。ここは国立公園内だから」。ごもっとも。でもちゃんと美味しかったです。
消灯は9時。テレビもなくスマホもつながらない環境で、静かな夜は更けていきました。(翌日の様子はこちら)
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