尾瀬沼 〜静かな水辺を巡る(後編)〜


 

 (後編)

【福島県 檜枝岐村 平成28年8月12日(金)】
 
 尾瀬沼一周の散策。尾瀬沼東岸から時計回りに沼尻近くまでやってきました。(前編はこちら

 尾瀬エリア
 Kashmir 3D
〔今回のルートを大きな地図で〕

 今日は、沼山峠をスタートし、大江湿原を楽しんでから尾瀬沼の東岸へ。そこから尾瀬沼を一周して、また沼山峠に戻るという散策ルートです。

 現在地は尾瀬沼西岸。三平下からここまで基本森の中を歩いてきましたが、初めて小さな湿原に出ました。沼尻も近いようです。

 灌木のゲートをくぐります。あらためて、燧ケ岳、こんにちはー !

 ノリウツギ

 ノリウツギの白い花。涼しげですね。でもこれは装飾花で、両性花はその周りにあるブツブツッとした小さいやつです。

 小沼湿原

 ここは小沼湿原。さっきの小さな湿原も含めて小沼湿原です。正面の燧ヶ岳もずいぶん大きく見えるようになりました。ここまで来れば沼尻はすぐそこです。

 イワショウブ

 湿原の天使、イワショウブをアップで。ニッコウキスゲのような存在感はありませんが、夏の湿原を飾る代表的な花です。

 ハクサンシャクナゲ

 これはおそらくハクサンシャクナゲ。もう実が膨らみつつありますね。

 沼尻近し

 おお、沼尻が見えてきました。前方の開けたところです。

 尾瀬沼から川として唯一流れ出る沼尻川。ここの小さな堰がその始まりです。ここから標高差約250mを下って尾瀬ヶ原に出て、下田代と中田代の境を流れ、最終的に尾瀬ヶ原を出るときには只見川となります。

 クマイチゴ

 堰の上に張り出していたクマイチゴ。美味そうです。

 燧ヶ岳

 燧ケ岳山頂部をアップで。ここからだと真上を見上げるような感じです。

 沼尻休憩所跡

 13時5分、沼尻に到着しました。以前ここには長蔵小屋が経営する休憩施設があったのですが、去年の9月に火事で焼失してしまいました。 建物はほぼ全焼だったそうです。基礎は残っていますね。

 木道の分岐の標識も小屋があった面が焼け焦げています。ものすごい熱さだったんでしょうね。

 こちらは小屋の前にあった休憩場所。なんとか原型をとどめています。ちなみに在りし日の様子はこちら。(6年前)

 昼食

 とりあえずここで昼食をとることにしました。かぎや旅館で作ってもらったおにぎり弁当です。美味しそう。

 食後一休みしてから再び歩き出しました。この分岐を右に行きます。正面はナデッ窪経由で燧ケ岳山頂に至るルートです。

 ここからは尾瀬沼を右に見ながら歩いていきます。さっきまでの南岸の道とは異なり、見通しが効き湖水もよく見える道です。

 ミヤマアキノキリンソウ

 ミヤマアキノキリンソウ。少し乾き気味のところに生えています。この辺りの花は大江湿原のものより元気なものが多いようです。こちらの方が開花が遅かったのでしょうか。

 ナンブアザミ

 このアザミはナンブアザミ。総苞は球形で、総苞片は反り返ります。とげとげしいですね。

 午後になって少し雲が増えましたが、晴天です。今日は天気に恵まれて本当に良かった。

 オゼミズギク

 オゼミズギク。これはまだ元気な株ですね。大江湿原で見たものは少し傷んでいましたが。

 オゼヌマアザミ

 こっちはオゼヌマアザミ。アザミも上を向くもの、横を向くもの、下を向くものと様々です。さっき見たナンブアザミは横向きでした。今日は出逢いませんでしたがアヤメ平などでよく見かけるジョウシュウオニアザミは、尾瀬で唯一下を向くアザミです。

 サワギキョウ

 花冠はまるで舞いを踊っているかのよう。サワギキョウ、優美な花です。

 木道は幾つかの森と幾つかの湿原を貫いて伸びています。沼の方から風が吹いてきて暑さは全く感じません。

 オヒルムシロ

 湿原の中を流れる小川。浮いているのはオヒルムシロの葉です。水上に突き出ているのは花穂ですね。

 浅海湿原

 尾瀬沼の北岸では最も大きい浅海湿原。

 長英新道分岐

 何度目かの森の中。ここには長英新道との分岐があります。長英新道は尾瀬沼側から燧ケ岳に登る一般的なルート。平野長蔵氏の子、長英氏が拓いた道だそうです。

 ツタウルシ

 ツタウルシ。秋の紅葉が見事ですが、いかんせんかぶれやすい。ウルシの仲間では最も効き目(?)が強いのではないでしょうか。敏感な人は近づいただけでかぶれてしまうこともあります。

 大江湿原

 森を抜けると大江湿原が見えました。やっぱりこれまでの湿原と比べると格段にでかいです。

 三本落葉松

 三本落葉松。この風景は紅葉の時期も素晴らしいです。よく見れば草紅葉もわずかに始まっているような。

 ウメバチソウ

 ウメバチソウです。 一見雄しべのように見えるものは、花粉を付けない「仮雄しべ」なのだとか。この仮雄しべは蜜のようなものを分泌してアリなどを呼ぶのだそうです。この先、中心の白い塊(本当の雄しべが身を縮めて寄り集まっている状態)から1本ずつ雄しべが伸び上がり、花粉を付け、これが役目を終えて反り返ると次の雄しべが伸び上がる、ということを繰り返すのだそうです。雄しべがいっぺんに成熟せずに、次々順番に成熟するところが、より確実に花粉を受け渡そうとする工夫なんでしょうね。

 T字路に到着。ここでちょうど尾瀬沼を一周したことになります。左が沼山峠方面です。とりあえずいったん尾瀬沼東岸のビジターセンターに行って休憩を。

 ミヤマワレモコウ

 これはミヤマワレモコウ。小さな4弁の花が寄り集まっています。

 メタカラコウ

 これはメタカラコウか。花は終わっています。

 長蔵小屋

 14時30分、尾瀬沼東岸に到着。アイスでも食べましょう。写真は長蔵小屋です。

 マルバダケブキ

 30分ほど休憩してから、沼山峠を目指して歩き始めました。木道脇にマルバダケブキ。こっちも花は終わっていますね。

 大江湿原

 大江湿原です。横に広く見えますが、実は奥に向かって長い形をしています。
 ああ、もうすぐ尾瀬ともお別れ。次はいつ来られるだろうか。

 チャワンタケ

 やがて湿原が終わり、森の中を登っていきます。これはチャワンタケですね。ゴムみたいな質感をしています。

 沼山峠

 ここが峠のピーク。なだらかで峠っぽくないですよね。

 あとは下っていくのみ。最後の最後で転ばないようにしなければ。

 ついに沼山峠のバス乗り場が見えてきました。

 バス乗り場

 16時ちょうど、本日の散策は終了しました。まずは何事もなく戻ってこれて良かったです。バスの発車時刻までに整理体操を済ませました。
 
 8月、この時期は尾瀬に花が少なくなる時期です。それでも定番の花たちには会うことができました。中でも元気だったのは、サワギキョウ、オクトリカブト、ウメバチソウ、ヤナギラン、イワショウブなどでした。森の中ではヨツバヒヨドリやオヤマリンドウも元気でしたね。 楽しい野山歩きでした。
 さあ、これからバスに乗って御池まで行き、そこから東京を目指してひたすらドリーム号を走らせることになります。
 
 御池を出発したのは午後5時。東北道は昨日とは違ってまったく渋滞はありませんでした。