尾瀬沼 〜静かな水辺を巡る(前編)〜
(前編) |
【福島県 檜枝岐村 平成28年8月12日(金)】
大江湿原と尾瀬沼周辺の散策。これから尾瀬沼に向かいます。(沼山峠からここまでの様子は、こちら)
尾瀬エリア Kashmir 3D |
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〔今回のルートを大きな地図で〕 |
沼山峠から大江湿原に入り、だいぶん尾瀬沼に近づいてきました。ここまでスタートから1時間半が経過しています。
燧ヶ岳 |
左手の視界が開け、燧ケ岳が見えてきました。4年前に登ったときもこんな青空の下での登山でした。見ているだけでなんかワクワクしてくる山です。ところで、手前の森と湿原との境になだらかな丘がありますが、ここに平野三代の墓所があるそうです。平野三代とは、明治以降再三起こった開発計画から尾瀬を守ってきた平野長蔵氏とその子長英氏、孫長晴氏のこと。日本の自然保護活動の先駆となった方たちだそうです。
サワギキョウ |
光を存分に浴びて、湿原の花は伸びやかです。これはサワギキョウ。名前のとおりキキョウの仲間ですが、姿は全く似ていませんね。キキョウの花冠が漏斗状をしているのに対し、サワギキョウは扇子を広げたような形をしています。優雅ですが毒を持つことでも有名。
オゼヌマアザミ |
オゼヌマアザミは総苞片が釘のように太く鋭いという特徴を持っています。分布域はほとんど尾瀬周辺のみだとか。
ゴマナ |
これはゴマナですね。漢字では「胡麻菜」。名前に「菜」の付く植物は大概かつて食用とされたものとのこと。
ノアザミ |
ノアザミは尾瀬で最もポピュラーなアザミ。湿原に多いアザミです。
尾瀬沼 |
尾瀬沼が見えてきました。シンボルツリーの三本落葉松も。それにしても気持ちのいい風景です。
コバギボウシ |
これはコバギボウシ。下から順に咲いていくので、下のは既に萎んでいて、上のはまだ蕾です。
サラシナショウマ |
風に揺れやすいので、写真を撮るときにいつも苦労するサラシナショウマ。花穂の長さは30cmほど。試験管ブラシの親玉のような感じの花です。
沼尻からの木道が右手からトの字型に合流してくる地点。ここは直進し、正面の木立の中に山小屋やビジターセンターなどが集まっていて、そこに向かいます。そこから尾瀬沼を一周して右手からここに戻ってくることになります。
尾瀬沼東岸地区 |
11時10分、尾瀬沼東岸に到着しました。一般的な所要時間の2倍かかっています。これもひとえに次々と現れる花のせい。嬉しいですが。
とりあえず日陰で小休止してアンパンでエネルギー補給です。この建物はビジターセンター。尾瀬にはここの他に山ノ鼻(尾瀬ヶ原の西端)にビジターセンターがあり、いずれも尾瀬保護財団の運営です。
長蔵小屋 |
長蔵小屋の前にヤナギランの群落が。ちなみに「長蔵」とは、初代当主の平野長蔵氏の名前です。
ヤナギラン |
ヤナギランはヤナギの仲間でもなければランの仲間でもなく、アカバナ科。そういえば平野三代の墓所がある丘は「ヤナギランの丘」と名付けられているそうです。
ヤマオダマキ |
近くにはヤマオダマキの花が。もう実になっているものもありますね。
休憩を終え、再び歩き始めます。ここからは尾瀬沼の湖畔に沿った道になります。
尾瀬沼 |
広々とした風景。尾瀬沼越しに平らな頂きの山が見えていますが、あれは皿伏山。
湿原にトンボ、よく似合います。
見上げると青空。まだこれは夏の空ですね。
モミジカラマツ |
ここではモミジカラマツの花がまだ残っていました。実になっているものもたくさんありますね。
ときには木立の中を歩きます。涼しいです。
清々しい空気。 標高1660mの尾瀬沼越しの燧ケ岳。尾瀬沼はこの燧ケ岳からの火山噴出物による堰き止め湖と考えられています。
ドクゼリ |
これはドクゼリか。ドクウツギ、トリカブトと共に植物界の猛毒御三家のうちの一つです。
三平下 |
11時45分、三平下までやって来ました。三平峠の入口で、尾瀬沼の南端に位置してます。ここにも山小屋があります。
逆さ燧 |
湖畔まで下りられるところがありました。水際から見る風景もまた一興。湖面に逆さ燧が映っています。
バイケイソウ |
ここから沼尻までが今回初めて歩く区間になります。
これはバイケイソウですね。もう盛りは過ぎていますが。大型ですっくと直立するので凛々しい印象のある花です。
このルートは、基本、木立の中を歩きますが、ときおりこうやって梢越しに湖面が見えたりするので、歩いていても退屈しません。
まるで作って置いたようなキノコ。アニメか?
対岸に大江湿原の入り口が見えました。
この区間は、こんなふうにアップダウンの繰り返し。
傷んでいる木道もあちこちにありました。人が多く訪れる他のルートほど頻繁に補修はされていないようです。
ときおり水辺を歩くことも。でも水際は稀です。
ササの花が咲いていました。珍しいことだと思います。
ゴゼンタチバナ |
三平下からの区間はほとんど花の姿を見かけませんでしたが、ここにきてゴゼンタチバナに出会いました。もう花期は終わっていて、これから実を太らせて行きます(白いのは花弁ではなく萼。)。
分岐 |
12時20分、分岐が現れました。左折すると皿伏山、白尾山のピークを経て富士見峠に至る道です。いつか歩いてみたい道です。
ときどき燧ケ岳が姿を見せてくれるので飽きが来ませんね。オープンスペースに鎮座する燧ヶ岳も雄大で良いですが、こんな秘境感のある燧ヶ岳もまた良いです。
鮮やかなグリーンの苔。触るとしっとりとしていました。
危ない箇所といえば唯一この場所くらいか。水際まで10mくらい高さがありました。道幅は十分なので心配はありませんが。
夏の空。清々しいですな。こういう視点からの燧ヶ岳、新鮮です。
小さな流れを渡ります。こんなところにはクマがいそうで少し警戒モード。実際、今年尾瀬では特に頻繁に目撃されているようです。
サワオトギリ |
この黄色い花はサワオトギリ。オトギリソウの仲間では小型です。
シラタマノキ |
おっと、シラタマノキが。見逃してしまうほど小さいですが、これでも立派な樹木です。
左右から樹木が迫ってきています。でもここを抜けると開けたところに出る予感。そろそろ沼尻も近いのかもしれません。
さあ、沼山峠、大江湿原、尾瀬沼と歩いてきた今回の散策。いよいよこれから終盤に入ります。(後編に続く)