尾瀬ヶ原・アヤメ平 〜尾瀬で雲上の湿原に遊ぶ(中編)〜
(中編) |
【群馬県 片品村 平成27年8月24日(月)】
尾瀬エリア Kashmir 3D |
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〔今回のルートを大きな地図で〕 |
東電小屋を出発し、見晴を経て竜宮の手前までやってきました。(前編はこちら)
見晴から竜宮までは一直線。やがて遠くに大きな拠水林が見えてきました。あれを越えると竜宮です。
木道の縁にニホントカゲが。見ると向こう数mの間にも何匹かじっとしていました。トカゲはまず日光浴をして体温を上げてから活動に入るとのことなので、きっと久しぶりの日差しに木道の上に出てきたのでしょう。
ミヤマタニソバ |
これはタデ科のミヤマタニソバ。花弁のように見えるのは萼片という定番の構造です。
沼尻川を渡る |
大きな拠水林を作った川を渡ります。この川は沼尻川といい、尾瀬ヶ原の東側、一段高いところ(標高差250m)にある尾瀬沼の水を唯一流し出す川で、尾瀬の川では大きな部類に入ります。この川とヨッピ川とが合流してその先が只見川になるのです。
ムシカリ |
ここの拠水林は幅も広く、中は森のような感じです。これはムシカリ。
オオツリバナ |
これはオオツリバナの実ですね。低山でよく見かけるツリバナの実は丸いですが、このオオツリバナの実は稜が張っているというか、ちょっと角ばっています。
ジャコウソウ |
これはジャコウソウ。 華やかな雰囲気ですが、シソの仲間です。
クロバナヒキオコシ |
クロバナヒキオコシの花をアップで。これもシソ科なんですよね。こっちの方がシソっぽいです。
竜宮小屋 |
分厚い拠水林の先に建物が見えてきました。竜宮小屋です。
アケボノソウ |
小屋に到達するほんの数十mの間にも様々な植物が。これはアケボノソウですね。
ウワミズザクラ |
こっちはウワミズザクラの実です。まだ若いですね。
竜宮小屋 |
竜宮小屋。湿原のど真ん中にこれだけの建物が建っていられるのは沼尻川が作った自然堤防(川が山を削って下流に流した土砂が平地に出て流れの両岸に堆積し堤防のようになったもの)が大きいから。それだけ川も大きいということです。
ミヤマニガウリ |
ミヤマニガウリの花。雄花だけをつける雄株と両性花をつける両性株があり、こういうのは植物界では珍しいのだそうです。これはというと両性株のようです。
サワギキョウ |
竜宮小屋で少し休憩をしてから、再び西に向かって歩いていきます。サワギキョウ、綺麗に咲いていますね。昨日から何回も撮っています。
竜宮十字路 |
竜宮小屋を出発してすぐに竜宮十字路に至りました。時刻は9時25分です。正面に見える至仏山もあらかた姿を現しました。ここをまっすぐ行けば山の鼻に、右に折れればヨッピ橋に至ります。yamanekoたちはここを左に折れ、長沢新道に入ってアヤメ平を目指します。
長沢新道 |
いざ長沢新道へ。ここから先もクマの出没情報の多いところになります。怖い怖い。長沢新道は正面のポッコリとした山に取り付き、いきなり急登となって一気に高度を稼いでいきます。で、登り切ってもダラダラと稜線上の長い登りが続くのです。
道は森の中に入りましたが、どっかにクマがいそうで、ことさら鈴を鳴らしたりしています。
オオバミゾホオズキ |
すぐそばに湿原が迫っているせいか、森の中も湿った環境です。これはオオバミゾホオズキ。水気のあるところに群生する植物です。
ミズナラ |
大きなミズナラです。木の上にクマがいないか…、ってしつこいか。でも、言葉ではうまく言えませんがそういう雰囲気を肌で感じるのです。
道は完全に森の中に入りました。でもまだ急登にはなっていません。
苔むした倒木。やはり湿気が多んですね。
よく見ると苔の中に小さなキノコが生えていました。小宇宙ですね。
ブナの森 |
ブナの森を行きます。少しずつ傾斜がきつくなり始めました。
ドクベニタケ |
なんかシズル感満点のキノコ。これは雨に濡れているのではなく、透明の粘液で覆われているのです。ドクベニタケでしょう。図鑑には「毒」マークが付いていましたが、「味:極めて辛い」とも。喰ったのか!
長沢 |
小さな橋を渡ります。橋といっても板が渡してあるだけですが。この川が長沢です。
オオカニコウモリ |
これはオオカニコウモリですね。ちょうど花が咲いていました。これでもキクの仲間なんですよね。
10時、いよいよ急登にさしかかりました。これからしばらくきつい登りが続きます。
昨日の雨で足元はかなり滑りやすいです。歩幅を刻んでゆっくりと登っていきます。
切れ目なく続く坂道ですが、足元の不安定さからすると下りの方がきついかもしれませんね。
ウリハダカエデ |
これはウリハダカエデ。早くも紅葉が始まっています。どこの世界にも気の早い奴がいるんですよね。
この写真を撮って、そこからしばらく登ったところでのことです。胸くらいまである笹薮の中にトチノキなどの高木が数本立っている少し開けた場所がありました。藪の奥からパキパキと小枝が折れるような音がするではないですか。そして小鳥が明らかに騒がしく鳴いています。これはひょっとしてと思いすかさずトチノキの上の方に視線を送りました。クマがいないか探したのです。思わず鈴をけたたましく鳴らしました。そしてじっと辺りの気配を伺いましたが、特に何も動くような様子はありません。30秒くらいしてようやくホッとして妻と顔を見合わし、再び歩き始めました。
するとほどなく山道を下ってくる影が。かなりドキッとしましたが、ちゃんとした人間の男の人でした。でもその人の顔が明らかに緊張しているのです。こちらが挨拶をすると、「クマに会いませんでしたか?」と尋ねられました。聞いてみると、yamaneko達の数分先を先行していた人からクマを見たと聞かされたとのこと。それが大体さっきの場所辺りのようなのです。その時クマは木の上に登っていたそうです。ええーっ、やっぱりか。もしかしたらその後木を降りて藪に中で我々が通り過ぎるのをじっと待っていたのかもしれません。以前クマの研究者から似たような話を聞いたことがあります。クマの方で登山者をやり過ごすなどしてトラブルを避ける行動をすることも珍しくないと。
背後を気にしつつ再び登りはじめました。きつい登りはまだまだ続きます。
今朝までの雨を吸った階段が日差しに熱せられて、板の表面から湯気が上がっていました。
途中、木立の切れ目からちょっとだけ尾瀬ヶ原が見えました。遠くに見える建物は昨夜泊まった東電小屋ですね。
基本、前を歩くことが多い妻。なぜかリュックを背負っていません。yamanekoが二つ背負って登っているからです。
長沢頭 |
11時5分、長沢頭(ながさわのかしら)に到着。ようやく急登が終わりました。しばし休憩です。でも、傾斜は緩やかになるとはいえ、ここからの登りの方が圧倒的に距離が長いのです。
ここからの木道がまあ滑りやすいこと。歩幅を意識的に小さくして歩きました。
ナナカマド |
ナナカマド。少し赤くなり始めています。わずかながら秋の気配が。
延々と登りが続きます。山から染み出してきた水でしょうか、足元には小さな流れができていました。
頭上が開けてきました。山頂に近づいているようです。やっぱり青空はいいですね。
キタマゴタケ? |
なんか洋菓子みたいなキノコです。キタマゴタケかタマゴタケモドキか。後者なら猛毒だそうです。
ツルリンドウ |
ツルリンドウが咲いていました。涼やかな印象の花です。
富士見田代 |
主稜線に出る直前、左手に小さな湿原が現れました。富士見田代です。 湿原の大部分を一つの池塘が占めています。
ああ、ずっと森の中を歩いてきたので開放感満点です。 長い登りもここで終わり。しばらく休憩です。
ミズギボウシ |
これはミズギボウシですね。
キンコウカ |
晩夏の空をバックにキンコウカを。もう花は終わった後です。
T字路 |
休憩後、再スタートです。このT字路で長沢新道は終了。アヤメ平はここを右に行きますが、左に200mくらい行くと富士見小屋があるはずなので、まずはそちらに向かいます。そこで昼食です。(後編に続く)