尾瀬ヶ原・アヤメ平 〜尾瀬で雲上の湿原に遊ぶ(前編)〜


 

    (前編)

【群馬県 片品村 平成27年8月24日(月)】
 
  尾瀬のぶらぶら歩き、2日目です。(昨日の様子はこちら))

 尾瀬での静かな夜が明けました。まだ8月とはいえさすがに明け方は冷えました。外を見るとまだ細かい雨が降っています。

 朝食は6時からです。朝からおかわりをするくらい食欲あり。今日は歩く距離も長いのでしっかりエネルギーチャージをしました。
 食後は一休み。窓から200mほど先にある拠水林を見ると結構クリアに見えてきているので、この先天気は回復傾向なのかもしれません。

 そして、準備を整えているうちにどうやら雨は上がったようでした。上空に雲の切れ間ができてきて青空も見え始めています。いいぞいいぞ。
 玄関に出てみると歩荷さんの荷物が。こんな早い時間から運んできたのでしょうか。それともこれから持って下りるものか?

 尾瀬エリア
 Kashmir 3D
〔今回のルートを大きな地図で〕

 今日はまず見晴まで行き、そこから八木沢道を登ってアヤメ平に向かうつもりでしたが、東電小屋の支配人さんに状況を聞いたところ、そのルートは昨日までの雨で見晴の先の木道が水浸しになっているんじゃないかとのこと。それではと見晴から竜宮に廻り、長沢新道を登ってアヤメ平に向かうことにしました。やっぱり生の情報を仕入れることは重要です。

 別館

 玄関の対面にある別館。1階は休憩室として解放されているようでした。

 出発

 7時20分、出発です。今日はレインウエアは不要と判断して、リュックの奥にしまい込んでいます。

 小屋を出てすぐは森の中を歩きます。相変わらず木道はスリップ注意。

 ブナ

 ブナの実を拾いました。クマの大好物です。

 すぐに森を抜け小さな湿原に出ました。正面に見える木立は拠水林。かなり密に茂っているところをみると大きな川が流れているようです。

 オゼヌマアザミ

 総苞片が特徴的なオゼヌマアザミ。

 オクトリカブト

 これはオクトリカブト。トリカブトの中でも特に毒性の強い種とのことです。

 東電尾瀬橋

 橋が現れました。只見川に架かる東電尾瀬橋です。増水時に流されないよう結構がっしりとした造りになっています。

 只見川

 尾瀬周辺に降った雨は数多くの川となって湿原内を蛇行し、最終的に東電小屋の近くで一つに集まって只見川として流れ下っていきます。いわばここの流れは尾瀬全体の水を一つに集めたものということになります。

 下田代

 橋を渡り、拠水林を抜けると広大な下田代が広がっていました。写真中央奥にこれから向かう見晴にある山小屋の屋根が小さな白い点として見えています。

 イワショウブ

 ここから見晴までは花の宝庫でした。まずこれはイワショウブ。朝方までの雨をまだ身に付けています。

 オトギリソウ

 オトギリソウですね。サワオトギリかも。

 ノアザミ

 ノアザミ。尾瀬で最もポピュラーなアザミなのだそうです。

 ミヤマワレモコウ

 ミヤマワレモコウ。普通のワレモコウより雄しべが長いのが特徴だそうです。

 ヒメシロネ

 これはヒメシロネ。葉腋にある小さな白いものが花です。白根というくらいですから根が白いのかと思いきや、白いのは地下茎だそうです。

 チョウジギク

 おお、これはチョウジギク。変わった形をしていますね。白い部分は花柄で、白毛が密生してこういう状態になっています。

 アケボノソウ

 これはアケボノソウ。この花は木道の間に咲いているのをよく見かけます。

 トモエシオガマ

 トモエシオガマ。7、8個の花が寄り集まってきれいな巴形をしています。ところで、この捻れにはどういう意味があるんでしょうね。

 三条の滝へと続く道

 7時55分、T字の分岐が現れました。左に行けば赤田代を経て三条の滝方面、右はこれから向かう見晴方面です。
 分岐の脇のベンチで三世代家族が休憩していたので、「雨が上がって良かったですねー」とかしばし雑談。小学校低学年くらいの女の子やそのお母さんがいろいろ花のことを尋ねてくるのですが、その説明に対してヘェ〜とかホォとか、おじいちゃんのリアクションの方が大きく、面白かったです。おじいちゃんは家族で尾瀬に来ていることが嬉しくてたまらない様子でした。微笑ましかったです。

 さあ、ここから見晴に向かって歩いていきます。見上げると雲の切れ間が次第に大きくなってきているよう。心も軽くなります。

 オゼミズギク

 オゼミズギクですね。葉裏に腺点が多いのが特徴とのこと。

 ウメバチソウ

 ウメバチソウが咲いていました。妻の好きな花です。草原の花というイメージですが、湿原でも見かけることは多いですね。時期としてはこれからでしょうか。

 チョウジギク

 この辺りにもチョウジギクが多く見られました。なんかメデューサみたいですね。

 尾瀬ヶ原

 右手前方には下田代の広がり。奥には中田代、上田代と続いていて、最奥に至仏山がどどーんと聳えています(今は雲の中ですが。)。

 サワギキョウ

 サワギキョウはいつ見ても優雅。雨で良し、晴れて良しです。この花を初めて見たのは広島県の八幡高原だったか。もう15年くらい前、自然観察を始めて間もない頃のことです。

 アブラガヤ

 夏の尾瀬といえばこれ、アブラガヤですね。一面に生えている様子は圧巻です。

 この後登るアヤメ平。「平」と言いつつ山の上にあり、今は完全に雲の中です。立ち止まり下腹に力を込めて念を送っておきました。「雲よ消えろ−!」

 拠水林

 拠水林も朝日に映えています。これぞ尾瀬ヶ原といった風景。

 オオバセンキュウ

 これはオオバセンキュウですね。セリ科の植物はなかなか見分けが難しいです。

 見晴

 8時25分、見晴に到着しました。ここには6軒の山小屋がありますが、この時間、宿泊客はみんな出立してしまっていたのか妙に静かでした。昔観た西部劇で、荒野を旅してきたガンマンが人の気配のない町に流れついたときみたい。よく見るとどの山小屋もスタッフさんによる掃除タイムのようでした。

 第二長蔵小屋

 ちょっと集落(?)の中を散策。これは以前泊まったことがある第二長蔵小屋です。

 竜宮へ

 少し休憩してから竜宮に向けて出発。おお、正面に至仏山が姿を現し始めました。

 燧ヶ岳

 しばらく歩いて振り返ると、見晴の背後に燧ケ岳も姿を見せ始めています。

 やがて小さな拠水林が現れました。ここは突っ切って行きます。

 六兵衛堀

 拠水林を形作ったのはこの小さな流れ。六兵衛堀という短い川です。

 燧ヶ岳

 川を渡ってしばらく歩いた辺りで再び振り返ると、今度は燧ケ岳が山頂まで姿を現していました。今日の天気の回復はどうやら確実のようです。

 こちらはアヤメ平のある山並み。掛かっていた雲も上がってきています。
 さて、中継点の竜宮はもうすぐ。その後には急登も待っていてこれからが本番です。(青空を期待しつつ中編に続く。)