扇山 〜威風堂々、花の山(前編)〜


 

 (前編)

【山梨県 大月市・上野原市 平成27年9月20日(日)】
 
 いよいよシルバーウィークに突入。予報によると関東地方は連休中ずっと好天に恵まれるようです。今回向かうのは山梨県大月市と上野原市に跨る扇山(1138m)。中央本線や中央道を通行中にも車窓からよく目につく山で、その標高以上にどっしりとした印象を受けます。(こちら
 
                       
 
 7時20分発の電車に乗り、途中3回乗り換えて、中央本線へ。高尾駅を出たときにはけっこう混んでいましたが、小仏峠を抜けて都内を脱出すると一駅停車するごとに車内が空いていきます。沿線には登山に適した山がずらっと並んでいるので、各々の目的の山に向かって徐々に下車していくからです。


Kashmir 3D

 8時38分に鳥沢駅に到着。ここでは20人くらいが下車したようでした。 今日のルートは、鳥沢駅前からバスで登山口の梨の木平へ。そこから扇山の南斜面をほぼ直登し、稜線上の「大久保のコル」と呼ばれる鞍部に出て、山頂に向かいます。下山は東側の上野原市方面へ。旧甲州街道の犬目宿に下山して、そこからバスで四方津駅に出る予定です。四方津駅は鳥沢駅の2つ東京寄りの駅になります。

 扇山

 鳥沢駅のホームから扇山の姿が望めました。民家越しですが。やはりどっしりとしていますね。 若干分かりにくいですが、真ん中のピークが山頂になります。

 鳥沢駅

 写真を撮っていたらホームには誰もいなくなっていました。そそくさと跨線橋を渡って改札へ。そしてここでもパスモが使える便利さよ。
 駅から国道20号線に出て道を渡り、左手に10mくらい行くとバス停がありました。

 梨ノ木平

 9時30発のバスには10人くらいが乗り込みました。梨ノ木平に行くバスは土・日・祝日の朝のこの一便しかありません。まさに登山者用ですね。
 バスはしばらく国道を走った後、中野入口交差点を左折して、谷筋の中野集落に沿ってぐんぐん登って行きます。やがてゴルフ場が現れ、その縁を回るように更に登って行くとほどなく梨ノ木平に。バスを降りたのは9時15分でした。

 登山口

 道路から一段上がると、ベンチやトイレなどがあり、登山の起点となっていました。ここで靴の紐を締め直し、入念にストレッチをしてから出発です。時刻は9時30分になっていました。

 カラスノゴマ

 いきなり花たちがお出迎えです。これはカラスノゴマ。ひっそりと葉に隠れるようにして咲く花です。

 ナンテンハギ

 ナンテンハギですね。写真では分かりにくいですが小葉は2個。別名をフタバハギとも言います。2個でも一応偶数羽状複葉です。

 ツリフネソウ

 同じような色合いのツリフネソウ。 歩き出しから花が多く、なかなか前に進めません。

 マツカゼソウ

 この小さな白い花はマツカゼソウ。花とは関係ありませんが、この花の名前を聞くたび、昔、故郷の山陰本線を「まつかぜ」という特急が走っていたのを思い出します。クリーム色の車体にエンジ色のラインでした。あの頃は往き来する列車の本数も多く、車両の一編成も長かったですが、今は寂しいかぎりです。

 ツリフネソウ(白花)

 おお珍しい。ツリフネソウの白花です。こんなものにも出会えるとは。これは今日は花いっぱいの予感です。

 登山道はどんどん傾斜を増していきます。でも木陰の道なのでそれほど暑いとは感じません。

 イヌショウマ

 これはイヌショウマですね。バックとのコントラストが鮮やかです。

 オトコエシ

 オトコエシの花序をアップで。こういう小さな花は写真ででもないとなかなか花冠の構造にまで目がいきません。老眼でもあるし。

 小さな休憩スポット。お菓子を食べてエネルギー補給です。

 カケスの羽

 妻が目ざとく見つけました。カケスの羽です。これは雨覆という部分の羽で、全体に地味な体の中で唯一鮮やかな模様を見せている部分。カケスはカラスの仲間で鳴き声もしゃがれ声ですが、この鮮やかな羽の魅力で人気の高い鳥です。

 ホウキタケの仲間

 ホウキタケの仲間のようですが、正確な名前は判りません。まるで火焔太鼓の炎ですね 。

 シモバシラ

 今日はこのシモバシラが登山道のあちこちで出迎えてくれました。どの花も生き生きとしていて、まさにドンピシャのタイミングでした。野山を歩くとその時期その場所で最も盛んに咲いている花というものがあります。今日はこの花が主役だったなという、サッカーで言えばマンオブザマッチ、野球で言えばお立ち台選手みたいな。今日の山歩きではこのシモバシラがそれでしょうね。

 ヤマジノホトトギス 

 ヤマジノホトトギスです。いつもヤマホトトギスと、どっちだったかな?と考えてしまいます。花被片を水平に開き、柱頭に斑紋がなく、葉腋に花を付けるものがヤマジノホトトギスで、花被片が下向きに反り返り、柱頭に斑紋が多く、散房状に花を付けるものがヤマホトトギス、というふうに覚えています。迷うものも結構あったりしますが。

 ツリガネニンジン

 ツリガネニンジン。この花の全体像を鮮明に写すのはなかなか難しいんですよね。個々の花ならこんなふうに。それにしても雌しべ、飛び出しすぎですね。

 右下に谷の沢音を聞きながら登ってきましたが、登山道にも水が流れるようになってきました。この上に湧水があり、そこからの水が登山道を下って沢に向かっているのだと思います。

 水場

 しばらく行くと水場がありました。結構な水量です。ポリバケツは一見汚れているように見えますが、流れ出る水はきれいでした。飲用にできます。

 山ノ神社 奥宮祠

 水場の先は沢音も聞こえなくなり、同時に傾斜も一段と増してきました。道はジグザグになって高度を上げていきます。そして小さな祠が現れました。「山ノ神社 奥宮祠」とあります。里宮はさっきバスで上がってきた谷筋の中野集落にあるようです。今日の山歩きの安全をお祈りしました。

 スギ林の中を縫うように道が伸びています。黙々と登る。息も上がります。

 フシグロセンノウ

 フシグロセンノウ。綺麗ですね。模式的な「お花」といった姿をしています。

 ヒイロチャワンタケ

 直径1.5pほどの小さなキノコ。でも存在感は小さくなく、目立っていました。図鑑で調べたところによるとヒイロチャワンタケのようです。

 ビューポイント

 今回の登山道で唯一展望がきくのがここのポイントでした。木立の間から富士山の方向が望めるのですが、あいにくすっぽりと雲の中です。奥の山は忍野の杓子山、手前は九鬼山です。

 分岐

 途中、ツツジの群生地への分岐がありましたが、花のシーズンではないので、ここはパス。

 メタカラコウ

 この特徴的な葉はメタカラコウ。高さは60cmほどで、標準的なものよりちょっと小型のようでした。

 大久保のコル

 直登の登山道を延々と登ること2時間。ようやく稜線が見えてきました。ここが「大久保のコル」と呼ばれるところです。ここからは右手に登っていきます。

 モミジバハグマ

 これはモミジバハグマですね。ハグマとは「白熊」と書き、ヤクという動物の白い尻尾のことだそうです。戦国時代にはこれを武将の采配などに加工し、その毛の様子がこの花に似ていることから名が付いたということです。
 さて、山頂まではあとちょっと。続きは後編で。