太田川河川敷 〜定点観察会〜


 

【広島市 西区 平成18年11月25日(土)】
 
 久しぶりにやってきました、広島へ。墓参りで島根に帰省したついで(?)に寄ってみました。
 場所は太田川河口域。今日はここで広島自然観察会が定点観察会を行っているはずです。(yamanekoもいまだ会員なので、行事は送られてくる会報で把握しています。)
 ○過去の太田川定点観察('03下流域'04中流域'05上流域
 
 広島の市街地を東西に貫く「平和大通り」。その西詰めにある己斐橋のたもと(というか橋の下)が集合場所です。午前9時半、集まっていたのは8人のメンバーでした。yamanekoがいた頃からより一層寂しくなった気がしますが、とりあえず時間になったのでまずは川下側に向かって出発です。 

 まずは川下側へ

 今日はどんよりとした曇り空。今すぐに降り出しそうといった感じではありませんが、天気予報では晴れマークだったので少し残念です。
 皆、懐かしい顔。東京に引っ越してからのそれぞれの野山歩きについて、とりとめもない話をしながらゆっくりと歩きます。

 アメリカネナシカズラ

 左手ののり面(その上は車道)にアメリカネナシカズラが、まるでうち捨てられた釣り糸のようにはびこっていました。つる性の寄生植物で、葉はなく、寄生の態勢が整うとちゃっかり根までなくしてしまう、なんとも他力本願なやつです。アメリカが名に付くことからも分かるとおり、外来種です。

 こんなところに

 堤防ののり面の石積みの間に根を張ったナンキンハゼ。逞しいというか気の毒というか…。ヤマハゼやハゼノキなど「ハゼ」の付く植物はいずれも鮮やかに紅葉しますが、これはいにしえの言葉で「はぜる」というのは「赤くなる」という意で用いられていたのだとか。観察会ではこんな楽しい話も聞けるのが楽しみのうちの一つです。
 ナンキンハゼの若葉を触ったことがありますか。なんともしっとりとしたしなやかな肌触りです。

 センダングサ

 こちらは衣服にくっつくセンダングサ。仲間にアメリカセンダングサ、コセンダングサと類似の種があります。外来種のアメリカセンダングサに対してこちらは純和製のものとばかり思っていましたが、図鑑によると古い時代に帰化したものと考えられているようです。
 右の写真の黄色い小さな花の一つ一つが、左の写真の放射状に伸びる果実になります。果実の先端の3裂した冠毛に下向きに鋭い刺が並んでいて、これで人や動物にくっつくのです。

 塩生植物

 水際に近づいてみるとそこには塩生植物がたくさん生育してました。このあたりは汽水域なので毎日の潮の満ち干によって塩分を含んだ水に浸される環境にあります。

 ハママツナ

 海岸近くに生育する植物には名に「ハマ(浜)」が付くものが少なくありません。葉が松葉に似ていることから名が付いたマツナ(松菜)。それの浜バージョンでハママツナでしょうか。でも、マツナ自体も海岸に生育している植物ではあります。ちなみに名前に「菜」が付く植物は、だいたい食用にされてきた歴史があるようです。
 秋を迎え、今ちょうど紅葉しているところ。これがハママツナの葉なのです。

 フクド

 これは東日本では見ることのないフクド。これでもキク科の植物です。2年草で、花が咲くと枯れてしまうのだそうです。右の写真は今年花を付けて枯れてしまったものでしょう。左の写真は根生葉。来年ここから主軸を高く伸ばすのだと思います。フクドは別名「ハマヨモギ」。やっぱり「ハマ」が付いています。

 ハマサジ

 根生葉の形が匙(さじ)のようだから「ハマサジ」。確かに写真の葉はスプーン、というより中華のレンゲのようですね。この根生葉の中心から長さ30〜50pほどの花茎を放射状にたくさん伸ばします。花はごくごく小さく、レモンイエロー。秋になると長い花茎にびっしりと付きます。

 500mくらいゆっくりと下って、今度は川上側に引き返します。のんびりした観察会です。
 毎月1度行う定例観察会ではその都度開催場所を変え、時には名勝や花で有名な山などで行います。そんなときにはたくさんの会員が集まったりするのですが、同じ場所で季節の変化を観察する定点観察会では(特にここのように何の変哲もない場所では)集まる会員もまばらです。個人的にはこのくらいの人数で観察会をするのが一番好きですが、自然保護サポーターの輪を広げていくのが目的の広島自然観察会としてはこのあたりが悩みの一つなのでしょう。
 
 懐かしいメンバーとの久々の楽しいひとときでしたが、もうそろそろ東京に向かわなければなりません。ここから約850qのロングドライブです。
 大勢の人が集まるイベントでなくても、身近な自然を大切に思い、身近な自然の小さな変化に感動を覚えることができる、そんな仲間を少しずつでも増やしていける観察会であってほしいと思います。広島を離れ山陽道を走りながらそんなことを考えていました。

 おまけ 「新ドリーム号と二人旅」