野冠〜宇賀 〜定点観察・初夏〜


 

   観察場所はこんなとこ

【広島市安佐北区 平成16年5月30日(日)】
 
 2年目を迎えた太田川の定点観察。場所を中流域に移して、今年は広島市安佐北区の野冠(のかづき)地区から宇賀地区までの2qほどを観察することになりました。
 午前9時、今は廃線となった旧可部線の小河内駅前に集合したのは20数人。そこから橋を渡って対岸の道路沿いを観察しながら歩きます。道幅は車がようやくすれ違えるほど。でも、わりと交通量はあります。

 天気予報では午後から雨が降るとか。見上げると今にも降り出しそうな空です。
 この時期、あちこちでテイカカズラの花の甘い匂いに包まれます。そんなときは立ち止まって深呼吸を。

 ユキノシタ

 歩き出してすぐにユキノシタに出会いました。一つ一つの花は小さいのですが、一面に咲いていると存在感があります。また、近づいてよく見てみると、まるで洒落たコサージュのような姿の花であることが分かります。
 ユキノシタは「ユキノシタ科」という科の名前に採り上げられるほどの由緒ある(?)花。ユキノシタ科は植物界の中でも属種の数が多い大所帯の科です。

 スイカズラ

 スイカズラはスイカズラ科。この花も科の名前になっています。別名の「キンギンカ(金銀花)」は、この花がはじめ白く、その後黄色に変わっていくことから名が付きました。

 コナスビ

 径1センチにも満たない小さな花ですが、コナスビの花はレモン色のきれいは花弁を広げています。サクラソウ科です。名は茄子に似た果実から付けられました。ちなみにイヌホオズキの古名もコナスビというそうです。

 観察風景

 あちこちで立ち止まるので、行程は遅々として進みません。でも、もともとそのつもりで予定を立てているのでいっこうにかまいませんが。

 ナンテンハギ

 葉がナンテンに似ているからナンテンハギ。小葉が左右に2つ並んで付いています。だから別名「フタバハギ」。これでも立派な偶数羽状複葉です。花はマメ科の特徴でもある唇形。

 イボタノキ

 名前はスマートではありませんが、花は涼やかな白い漏斗型。モクセイ科といわれてなんとなくそれらしいです。樹皮に付くイボタロウムシが分泌する白いロウをイボタロウとよんで、止血などの薬用にしたそうです。

 ハンショウヅル

 残り1周になるとジャン(半鐘)の音が勇ましく鳴り響くのは競輪場。高いところで連打されるのは火の見やぐら。
 そう、その半鐘に似た花を付けるのでハンショウヅル。キンポウゲ科です。反り返っているのは萼片で、花弁ではありません。キンポウゲ科にはそんな変わり者が多いのです。

 ウリノキ

 くるっと巻いた花弁が特徴的なウリノキ。葉がウリのそれに似るのでその名が付いたのだとか。ウリノキ科は1属20種ほどの小さな科だそうです。この花にやってきた虫は長い雄しべにしがみついて蜜を吸います。

 白い蛾

 蝶や蛾は世界中に20万種もいて、そのうちの9割が蛾なんだそうです。

 マムシグサです  上から覗いてみると  次に、開いてみると

 宇賀の集落に到着したのはちょうど12時。所要3時間、時速700mの移動速度でした。
 
 ◎今日見かけた植物(気づいたものだけです)

《花》 ユキノシタ(ユキノシタ科)、スイカズラ(スイカズラ科)、ウツギ(ユキノシタ科)、コナスビ(サクラソウ科)、ウシハコベ(ナデシコ科)、トウバナ(シソ科)、オニタビラコ(キク科)、ヤブジラミ(セリ科)、ナンテンハギ(マメ科)、ハナニガナ(キク科)、コガクウツギ(ユキノシタ科)、ヨメナ(キク科)、ケキツネノボタン(キンポウゲ科)、ノアザミ(キク科)、オニノノゲシ(キク科)、ウマノアシガタ(キンポウゲ科)、ヤブムラサキ(クマツヅラ科)、ニワゼキショウ(アヤメ科)、ハルジオン(キク科)、カキノキ(カイノキ科)、イボタノキ(モクセイ科)、ウリノキ(ウリノキ科)、ハンショウヅル(キンポウゲ科)
、マムシグサ(サトイモ科)、イヌガラシ(アブラナ科)
《実》 ヘビイチゴ(バラ科)、シロダモ(クスノキ科)、ヤブジラミ(セリ科)、ヤマフジ(マメ科)、ミツバウツギ(ミツバウツギ科)、キブシ(キブシ科)、ヤマガシュウ(ユリ科)、ヒメコウゾ(クワ科)、ナガバノモミジイチゴ(バラ科)