大町自然観察園 〜下総台地の四季・8月〜


 

【千葉県 市川市 平成22年8月21日(土)】
 
  8月の定点観察。ここ市川市北部にある長田谷津も猛暑にさらされていますが、それでも街中のいやな暑さとは異なり、子供の頃に過ごした夏の暑さのような「正しい暑さ」といったふうにも感じられます。
 さて、スポーツ飲料で水分を補給しながら自然観察園を巡ってみましょう。

 注意

 フェンスの向こうにスズメバチの巣が。木の根元から地中に向けて作られているようです。でも入口付近にはスズメバチの姿は見られませんでした。全員熱中症にやられてしまったか。

 今日はほとんど風がありません。まるで写真のような風景です。(写真だけど)

 ムラサキシキブ

 林縁のマント群落を見ていきましょう。
 これはムラサキシキブの若い実。まだキミドリシキブです。

 オニドコロ

 オニドコロ。漢字で書くと「鬼野老」。ヤマノイモを含め類似の植物を昔「野老(ところ)」と呼んだそうです。地下の根茎を腰の曲がった老人に見立てて、「野にある老人」=「野老」ということらしいです。「鬼」はよく分かりませんが、他にもカエデドコロやタチドコロなどある中で、全体に荒々しい印象だからでしょうか。

 バラ園

 この暑さの中、バラ園のバラたちは生き生きとしていました。バラって春と秋に咲くというイメージでしたが、夏の最中にも咲くんですね。

 ガマズミ

 ガマズミは咲き始め。 ん? ガマズミって初夏に咲くんじゃなかったっけ。この暑さに攪乱されたか(何でも暑さのせいにする。)。

 定点写真

 んー、先月とほとんど同じに見えますな。奥の方が若干褐色を帯びているのが、変化といえば変化か。この暑さでアシなどが枯れ始めているんでしょう。

 メマツヨイグサ

 竹久夢二が「宵待草」と書き間違えてしまった「待宵草」。写真のものは葉の中央脈が赤味を帯びているのでメマツヨイグサでしょう。宵に咲いて明け方にしぼんでしまう夜の花です。

 夏枯れ

 今年の夏はやっぱり暑すぎです。何万人と救急搬送されているわけですから、湿地のアシが夏枯れしてしまっても何の不思議はないですね(強引ですか?)。

 ジュズダマ

 ビールのホップのように垂れ下がっているのがジュズダマの雄花序。雌花は一見果実のように見える苞鞘(すごく硬い)の中にあって、苞鞘の先端から髭のように小穂を出しているのみです。上の写真ではよーく凝視しなければ分からないかも。古い時代に日本に入ってきた植物と考えられていますが、この名前が付いたのは仏教伝来後ということになりますよね。

 オオマルバノホロシ

 葉といい花の色といい、いかにもナス科っぽいですね。ホロシは漢字では「保呂之」と書き、これはヒヨドリジョウゴの古い呼び名なのだそうです。

 ミソハギ

 先月はまだ咲きはじめといった感じだったミソハギ。さすがに「盆花」と呼ばれるだけあって、この時期がまさに盛りです。

 ヌスビトハギ

 名前に似ず清楚な花のヌスビトハギ。果実は「ひっつきむし」です。その果実の形が「ぬき足、さし足、忍び足」のときの足の形に似ているから「盗人」の名が付いたといわれていますが、異説もあるようです。むしろ、果実が衣服にいくつも付いていて薮に潜んでいたことがばれてしまい、これが盗人であることの証となることからこの名が付いた、というような由来の方がそれらしいのでは。

 ガガイモ

 ガガイモの花。決してピンぼけしているわけではありません。5つの花弁に細い毛が密生しているのです。ガガイモといっても別にイモができるわけではなくて、果実がイモの形に似ているからだそうです。

 ユウガギク

 「優雅菊」じゃなくて「柚香菊」。でも柚の香りはしないです。まあ、yamanekoはもともと鼻が鈍感ですから、そのせいかもしれませんが。(スミレなどを匂っても「 …?」って感じなんです。) 

 

 谷地の両側は丘になっていて、その斜面はご覧のとおり密な森になっています。湿地の明るさとは対照的に、その中を窺うと漆黒の闇のようです。この写真だけみると、広大な森林地帯にぽっかりと空いた平地のような印象ですが、実は森の幅は狭く、その向こうは平坦な梨畑が広がっていたりするのです。

 ノブドウ

 ノブドウの実が微妙に色づいていました。美味そうですが食べられません。寄生バエが入り込んでいることも多いそうです。

 ムクノキ

 こちらは黒く熟すと美味しいムクノキの実。しかしあの細かい花の付き方からこんな実ができるとは。ちょっと不思議です、(花の様子

 スズメウリ

 果実がスズメの卵に似ていることからスズメウリの名が付いたとか。来月来たときにはその果実が見られるかもしれません。

 カラスウリ

 スズメときたらカラスも。こちらは既に実を付けていました。まだ青いですが。やはりカラスウリの方が大型で、葉もゆうに5倍くらいの大きさがあります。

 アサザ

 谷津の最奥部の遊水池までやってきました。アサザの葉がびっしりと水面を覆っていて、花もたくさん咲いています。

 オニヤンマ

 水辺の小枝で休憩するオニヤンマ。さっきまで忙しく飛び回っていまたのですが。

 上のオニヤンマが行ったり来たりしていた水路です。頭上を梢に覆われて涼しい環境でした。

 夏か秋か

 ナツアカネか、それともアキアカネか。素人にはちょっと判断が付きません。でも、羽を下向きにして休んでいるところを見ると、アキアカネなのかも。

 ツリフネソウ

 ちょっと気の早いツリフネソウに出会いました。カメレオンのしっぽのような距が特徴的です。この花を含め、数個しか見かけませんでした。来月には辺り一面咲いているかもしれません。

 「ん? 何か?」

 暑いからか、それとも緊張からか、カメラを近づけても微動だにしません。でも視線だけは一瞬たりともそらすことはありませんでした。さすがはハンター。

 シロダモ

 シロダモの葉は、夏の強烈な日射しをあびても負けじと照り返しています。照葉樹とはよく言ったものです。

 まだ夏空

 駐車場まで戻ってきました。8月下旬とはいえ、立秋はとうに過ぎ、処暑も過ぎて、少しは秋の気配が感じられてもよさそうなものですが、下総台地を渡る風はまだ「熱風」といってもいいくらいです。
 今年の夏は観測開始以来113年で最も暑い夏だったとか。長田谷津の自然も少し暑さ疲れのようです。来月には秋を感じることができているでしょうか。まだ連日猛暑日だったりして。
 
 

  下総台地と大町自然観察園