乗鞍岳 〜8年ぶりのリベンジ登山(前編)〜


 

 (前編)

【長野県 松本市 平成28年8月20日(土)】
 
 お盆後半。テレビでは連日Uターンラッシュの様子が報じられていますが、それを横目に山に行くことにしました。目的地は北アルプス南端の乗鞍岳。アルプスというとハードそうですが、山頂近くまでバスで上がれるので、実際に登る標高差は300m程度です。8年前に行ったときは悪天候で山頂に向かうのは諦め、バスターミナル付近の花畑を見ただけで帰りました(前回の様子)。今回はそのリベンジです。
 
                       
 
 午前9時、給油を済ませたドリーム号で出発。相模原ICから圏央道に乗り、八王子JCTで中央道へ。何度か休憩をして岡谷JCTで長野道に入り、松本ICで高速を下りました。そこからは安曇野を田園風景を見ながら国道158号線を西進。新島々の駅を過ぎると両側から山が迫ってきます。

 やまみ旅館

 奈川渡ダムを過ぎ前川渡の分岐を左折して乗鞍高原へ。そして午後2時に今日の宿、やまみ旅館に到着しました。ちょうど5時間の行程でした。チェックインは3時からなので、とりあえず明日の行動起点となる観光センターへ下見に行くことにしました。

 善五郎の滝

 旅館から観光センターまでは5分ほど。鈴蘭地区という乗鞍高原の中心地にあります。ここが乗鞍岳へのバスターミナルとなっていて、明日はここに車を置いてバスで上がります。今日はバスの時刻や弁当の販売場所などをチェック。その後、近くにある善五郎の滝に行ってみました。 この滝は乗鞍高原を下刻する小大野川にできたもの。落差21.5m、幅8m。水が幅いっぱいに幕のように落ちてくるので、なかなか壮観です。
 そして、旅館に戻ってからはお楽しみの風呂。硫黄の匂いと白濁したお湯が最高でした。

 バスターミナル

 明けて20日、朝から素晴らしい晴天です。朝食はキャンセルして6時半に旅館を出発。バスターミナルに着くと、駐車場から乗鞍連峰を望むことができました。申し分のない天気。標高3000mの稜線がくっきりと見えていました。

 中央の尖った山が最高峰の剣ヶ峰。 左肩から顔を出しているのが大日岳。左の丸っこい山は高天原。剣ヶ峰の右は摩利支天岳と富士見岳です。これらを含め、乗鞍岳といわれるエリアには23もの峰があるのだそうです。

 車窓から

 バスは6時から概ね1時間おきに発車していて、yamanekoたちが乗る7時発のバスは2便目。それでも補助席を使うほどの満員状態でした。標高2700mの畳平までの乗車時間は50分。標高差1250mを登っていきます。
 これはバスの車窓からの風景。もうかなり頂上に近いところで、森林限界を超えていて稜線も間近に見えます。まだ雪が残っているところがありますね。

 槍穂高連峰

 北東方向には槍穂高連峰が。ここから直線で25kmほどです。

 畳平バスターミナル

 8時ちょうど、畳平のバスターミナルに到着しました。さすがは3000mの世界。空が広いです。バスから降りた50人ほどが散り散りになると、野球場ほどもある広いターミナルはまた静けさを取り戻しました。

 乗鞍本宮

 山荘はこの時間、もう営業していました。もう少し遅い時間になると、登山目的てではない観光客がたくさん訪れるのだと思います。真ん中にある神社は乗鞍本宮の中宮だそうですが、1階は売店になっていました。

 Kashmir 3D

 今日のコースは、畳平から、火口跡の縁を巡ったり、峰の山腹を巻いたりしながら標高を上げていき、主峰剣ヶ峰を目指して南下します。
 まず、大黒岳と富士見岳の鞍部に出て、折り返すように富士見岳の山腹を登っていきます。富士見岳と摩利支天岳の鞍部に出てからは稜線の東側の道になり、今度は摩利支天岳と朝日岳の鞍部へ。ここには肩ノ小屋があります。そこからは剣ヶ峰に向けてひたすら登っていきます。

 スタート

 駐車場の端から登山道(遊歩道)が始まります。時刻は8時20分。
 正面奥の山は摩利支天岳(2872m)。白いドームは自然科学研究機構の乗鞍観測所です。6年前までは乗鞍コロナ観測所と呼ばれていた施設で、こちらの方が馴染みがありますね。摩利支天岳の右手前、山体の一部がガレているのは不動岳(2875m)、左手前の緑濃い山は富士見岳(2817m)です。

 畳平駐車場

振り返るとこんな感じ。マイカー規制がされている今でもここが満杯になることがあるんでしょうか。

 鶴ヶ池

 歩き始めてすぐ、左手に池が現れます。これは鶴ヶ池。道はこの窪地の縁を回っています。乗鞍岳山頂部には12の火口湖や堰止湖があるそうです。鶴ヶ池は火口原湖と考えられていて、火口湖のようにかつての火口跡に水が溜まったものではなく、火山活動によってできた低地に水が溜まったものだそうです。

 富士見岳

 左手の低地が鶴ヶ池の窪み。道はその縁に沿っています。正面は富士見岳(2817m)。山腹を横一文字に登山道が横切っていますが、これからあそこを歩いていきます。

 不動岳

 右手には不動岳。その麓の低地は回遊式の自然観察路になっている通称「お花畑」です。前回来た時にはここでたくさんの花々を観察しました。

 圏谷

 お花畑は不動岳と恵比須岳(2831m)に挟まれていて、西側の高山方面に向けて視界が開けています。これは氷河地形のカールでしょうか。遠くに見えているのは白山連峰です。



 振り返ると、スタートしてからまだこれしか歩いてきていません。左が恵比須岳、右が魔王岳(2760m)です。

 コマクサ

 コマクサが咲いてました。可憐な容姿に似合わず風衝地でも逞しく生きることができる花です。

 恵比須岳と魔王岳

 大黒岳(2772m)と富士見岳の鞍部までやって来ました。ここで鋭角に折り返します。駐車場方向を振り返るとこんな感じ。頂きが平らに見える恵比須岳。右手の魔王岳との間は噴火口跡で、深い窪地の中心に亀ヶ池という火口湖があります。ガバッと割れた火口が迫力ありますね。手前にある池は鶴ヶ池です。

 白山連峰

 西の方角に聳える白山をアップで。白山は、岐阜県、石川県、福井県にまたがる広い山域を持っています。富士山、立山と共に日本三霊山の一つだそうです。

 北方向

 こちらは魔王岳(左)と大黒岳(右)との間から遠望できる山々。方角としては北方向になります。

 登山道

 登山道は鋭角に折れて、富士見岳の山腹を登っていきます。この道はこの先にある研究施設へ物資を運ぶために車が通れる幅で整備されています。正面は摩利支天岳。右は不動岳です。



 ずいぶん標高が上がりました。振り返るとまた視点が高くなったのが分かります。左が大黒岳、右が魔王岳。間の池が鶴ヶ池です。

 北北東方向

 その奥にはこの角度からだと槍穂高連峰が見えています。さっきよりやや東よりの方角です。手前にはひょっこり焼岳も見えていますね。

 イワギキョウ

 岩陰にイワギキョウが。深みのある青い色。端正な姿。癒されますなあ。

 直近の噴火の跡

 しつこいようですが、恵比須岳と大黒岳が抱える火口跡。約2千年前に激しい噴火をしたそうで、これが乗鞍岳では最も新しい噴火で、爆発に伴って大量に火山礫や火山灰を放出するボルカノ式噴火というものだったそうです。こんなに大きくえぐれるなんて、恐怖以外の何物でもないですね。

 ミヤマダイコンソウ

 この花は?これは花期が終わって花弁を落とした後のミヤマダイコンソウです。残っているのは萼ですね。この花も風衝地を苦にしません。

 イワツメクサ

 こちらはイワツメクサ。ナデシコ科のハコベの仲間なので、花冠の姿は似ています。植物の場合、名前の頭にイワが付くとだいたい高山植物ですね。

 乗鞍観測所

 乗鞍観測所のドームがずいぶん近くに見えるようになりました。以前は観測所の職員がここで越冬し、通年観測を行っていたそうです。なかなか過酷な仕事だったでしょうね。

 コマクサ

 ガレの斜面に咲くコマクサ。こういう場所に生きているから「けなげ」感が倍増するんでしょうね。

 ウメバチソウ

 ウメバチソウは湿原に生えるイメージですが、高山では乾燥地にも適応するのだそうです。
 この先も標高3000mの天空散歩は続きます。深い青色の空。雲にも手が届きそうな感じです。が、その雲に届くどころか包まれてしまうことになろうとは。(後編に続く)