乗鞍岳 〜8年ぶりのリベンジ登山(後編)〜


 

 (後編)

【長野県 松本市 平成28年8月20日(土)】
 
 乗鞍岳へのリベンジ登山、後編です。(前編はこちら


 Kashmir 3D

 午前8時20分、畳平を出発。最高峰の剣ヶ峰を目指してじわじわと高度を上げていきます。現在、富士見岳の山腹です。

 コマクサ

 岩の隙間のわずかな土に根を張るコマクサ。

 不消ヶ池

 この池は不消ヶ池(きえずがいけ)。背後は不動岳です。池の名の由来はここの池の水が干上がることがないということから。そういえば8年前に来たときも偶然今日と同じ8月20日だったのですが、池の縁には大量の雪が残っていました。それが少しずつ融けていけば、池は干上がることはないでしょうね。今年はこの先大丈夫でしょうか?
 ところで、同じ8月20日でも8年前に咲いていた花が今回はほとんど花期を終えていました。今年はどこに行っても開花時期が1箇月くらい早かったですが、ここ3000mの世界でも同じだったということでしょうか。

 東方向

 稜線に出ると東方向の展望が開けました。眼下には乗鞍高原。正面の山並みの向こうには松本盆地があるはずです。



 振り返ると不消ヶ池が遠くになっていました。奥には恵比須岳が見えています。

 トウヤクリンドウ

 めずらしい白いリンドウ。トウヤクリンドウです。トウヤクとは漢字では「当薬」で、これはセンブリのこと。センブリと同様に健胃薬として利用されたことから、この名が付いたのだそうです。この花を初めて見たのは日光白根山の山頂でした。お気に入りの花ほど初めて見たときの記憶は結構残っているものです。

 剣ヶ峰

 道はいったん稜線から外れ、すぐにまた稜線に。この辺りは富士見岳と摩利支天岳の鞍部になります。正面に見えているのが剣ヶ峰。これからあの頂まで歩いて行くのです。それにしてもなんか雲が多くなってきたような。



 鞍部から先は摩利支天岳の東側山腹を歩いて行きます。

 ミヤマアキノキリンソウ

 ミヤマアキノキリンソウ。別名コガネギク。低地のアキノキリンソウとは若干印象が異なる姿をしているので、標準和名はコガネギクの方が良かったのでは。

 鈴蘭地区

 遙か下の方に乗鞍高原の鈴蘭地区が見えました。写真中央にあるのが観光センターです。その周辺はホテルや旅館など。今朝、あそこからこっちを見ていたんですね。

 剣ヶ峰

 乗鞍連峰の主峰、剣ヶ峰に続く稜線上のピークは、手前が朝日岳(2975m)、奥が蚕玉岳(2979m)です。いずれも稜線の向こう側にある大きな火口跡の縁を構成するピークです。

 剣ヶ峰山頂

 望遠で剣ヶ峰山頂を狙ったショット。最後は結構な傾斜のようですね。登山者がアリのように連なっています。

 肩ノ小屋

 正面に建物群が見えてきました。あそこは摩利支天岳と朝日岳の鞍部になります。白い建物は肩ノ小屋。奥の赤いのは東京大学宇宙線研究所附属の乗鞍観測所だそうです。あそこまでは車で行ける道が続いています。

 オンタデ

 これはオンタデ。もう実になっていますね。オンタデの「オン」は「御」で、木曽の御嶽山の「御」。御嶽山で最初に見つかったからこの名がつけられたのだだそうです。

 ウサギギク

 ウサギギクはそろそろ花期が終わりに近いのか、若干元気がなさげ。

 チングルマ

 チングルマは完全に実になっています。これがバラの仲間の果実なのかと思うと、ちょっと不思議。



 9時10分、肩の小屋までやってきました(写真左の影は肩の小屋のもの)。突き当たりは東京大学の観測所です。ここで小休止してから、左手に折れて山頂を目指します。



 これから向かう朝日岳。奥は剣ヶ峰です。いよいよ雲が多くなってきました。



 10分後、あらためてスタートです。ようやくここからが山道になります。

 松本盆地

 登り始めてしばらく、遠く山並みの向こうに松本盆地が見えました。結構広いですね。



 朝日岳の斜面を登っていきます。もうじき雲に中に入ってしまいそう。遠くの平坦なところが乗鞍高原になります。

 摩利支天岳

 振り返ると摩利支天岳。山腹を巻く道がさっき歩いて来た道です。



 足場は岩だらけ。捻挫しないように気をつけねば。空気が薄く、息が上がり気味。それともただの体力不足か。

 イワギキョウ

 そんな苦しいときでも花に励まされると頑張れるもの。これはイワギキョウですね。

 権現池

 もうほとんど雲の底に達しました。右下に見えているのは権現池。剣ヶ峰を含む幾つかの峰が取り囲んでいる火口跡の池です。



 登山道は朝日岳のピークは踏まず、蚕玉岳との鞍部に出る形に。ここは蚕玉岳に向けての最後の登りです。

 蚕玉岳

 蚕玉岳のピークは比高が小さいのでちょっとした丘のような感じでした。もう完全に雲の中。この調子じゃ山頂からの眺望は望めそうにもないですね。



 蚕玉岳を過ぎるといよいよ剣ヶ峰が間近に迫ってきました。なんか高山に登っている雰囲気満点です。



 壁のような斜面。あとちょっとです。

 乗鞍本宮

 10時30分、剣ヶ峰の頂に到着しました。山頂はほとんど見えている範囲だけの広さ。人で一杯です。でも、あの祠の中に神職の方が一人座っていて、お守りなどを販売されていました。安全登山祈願のお守りを一ついただきました。

 一等三角点

 足元には一等三角点。山頂は風が強く、雲の粒が雨のようになって体を濡らしてきます。眺望もないので、神社の陰で休憩をして、早めに下山を開始しました。

 山頂小屋

 ここは山頂直下にある山小屋。熱いコーヒーに惹かれましたが、小屋にはいろいろ注意書きが書いてあって(中略)入るのはやめておきました。まあ、いろんな客がいるんでしょうね。

 肩ノ小屋

 11時55分、肩ノ小屋まで下りてきました。宿泊棟はコンクリート頑丈な建物ですが、売店や食堂のあるこの建物は結構年季の入った木造でした。
 雲が厚くなったのか、ここまで雲の中に入ってしまっています。とりあえず、ここで昼食を。

 昼食

 小屋は雨宿りの登山客でごった返していました。食堂もほぼほぼ満席の状態。なんとか座れて、熱いうどんを注文。持参したおにぎり弁当(今朝バスターミナルで買ったもの)を一緒に広げると、なんと立派な昼食になったじゃないですか。味も申し分なかったです。



 食事を終えるとさっさと出発(次の人達に席を譲らなければ。)。これ、濃霧ではなく雲の中です。途中、雷鳥を見かけましたが、カメラを構えるまで待ってはくれませんでした。残念。

 畳平

 畳平に着いたらちょうどバスが出る直前。ただ、乗客が長蛇の列となって建物の中まで延々と連なっています。ゆうに100人以上はいたでしょう。乗れるのかと心配しましたが、結局バスが同時に3台出ることになったようで、yamaneko達はその3台目に乗ることができました。

 観光センター

 14時15分、乗鞍高原のバスターミナルに到着。雲の多い天気ながら晴れ間も覗いています。車内ではずっと寝ていたのでどのあたりで雲を抜け出たのかは分かりませんでした。

 雲中の乗鞍連峰

 乗鞍岳はと見てみると、やはり峰々は雲の中。さすがにあの中は真っ白になるでしょうね。
 
 さて、今回のリベンジ登山は剣ヶ峰の頂に到達したので、一応成功。山頂からの眺望も楽しめれば更に良かったですが。
 あとは東京に帰るのみ。このあと、乗鞍高原のアビーロードという喫茶店でお茶してから帰途につきました。ところでこの喫茶店、なんか既視感があったのですが、よく考えたら8年前にも立ち寄った店でした。