野川公園 〜武蔵野の野辺、夏から秋へ〜
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【東京都 調布市 平成27年9月5日(土)】
今年もいつの間にか9月。あーあ、夏が行ってしまいました。何とも言えないこの心残り感。まあ、夏がそんなに楽しかったのかと言われるとそうでもなかった訳ですが。先月下旬からぐずついた天気が続いているのがそんな気持ちを増幅させているのかもしれません。
季節が移ろうのならその変化を感じてみようということで、今回は久しぶりに野川公園に行ってみることにしました。ここでは8年前に1年を通じて通って定点観察をしたことがあります。(こちら)
野川公園は調布飛行場の北側、野川の畔にあります。新宿に住んでいた頃には甲州街道を西に向かって行ったのですが、今は多摩ニュータウン通りを北上し、府中市から甲州街道を東進して現地に向かうことになります。
さくら橋から |
現地に着いたのは3時過ぎ。午後から雲が増えてきたこともあって早くも夕方のような感じです。公園の南端にある駐車場から広い芝生エリアを横切り、東八道路を渡ると自然観察園です。自然観察センターでこの季節の植物の情報などをチェックしてから、さくら橋で野川を渡ります。
サネカズラ |
川を渡ると目の前にある自然観察園のフェンスの中へ。野川と並行する国分寺崖線との間が幅50mほどの細長い平地となっていて、崖線からの湧水で比較的湿潤な環境となっています。
これはサネカズラの花。花弁が肉厚で、茶碗蒸しに入っているユリ根のような感じです。
イシミカワ |
イシミカワの実は鮮やかな青色や紫色をしています。ツル性でタデの仲間。茎には短いトゲがあり、これで引っかかりを作って他者に取り付き、伸びていくという仕組みです。 そういえばイシミカワの花ってどんなだったっけ。
ガガイモ |
このフサフサの花はガガイモのもの。和の色合いです。花弁の色は赤色ですが、白い毛が密生しているので、柔らかな色合いになっているようです。ちなみにイモはできません。
フジカンゾウ |
長い花茎の先に小さな花を付けているフジカンゾウ。ヌスビトハギに似ていますが、こっちが大型です。
ヤブラン |
夏の林床を彩るヤブラン。まだまだ元気です。
オミナエシ |
こっちは秋の花、オミナエシ。これからが盛りですね。
イヌキクイモ |
鏡池の畔に咲いているのはイヌキクイモ。花や葉でキクイモとの区別をつけるのは難しいですが、地下の塊茎を掘り出してみると一目だそうです。イヌキクイモは「イヌ」が付くくらいですから塊茎が貧弱なのだとか。
園内には少し夕方の雰囲気が漂い始めました。写真右手の斜面が国分寺崖線。崖下の面が立川面、崖の上は武蔵野面と呼ばれています。(詳しくはこちらも)
ヤマホトトギス |
ヤマホトトギス。紫色の斑紋がほとんどないバージョンです。白花と言っていいのかも。
キツリフネ |
キツリフネ。ツリフネソウと異なり、距がほとんど巻きません。
いったいここはどこの山の中なんだ、というような場所もあります。でも住宅街の中なんですよね。すぐ南隣りに調布飛行場があり、滑走路へとアプローチしていく飛行機がごく低空で過ぎていきます。
カリガネソウ |
カリガネソウの花冠はなかなか変わった構造をしています。 丁髷のようなものは雄しべと雌しべ。訪れた虫の背後を狙う形でしょうか。
エノキ |
これはエノキの実ですね。エノキは昔からランドマークとして村落の境界だとか一里塚だとかに植えられ、それゆえ大木に育つことが多い木です。広島に住んでいたとき、近所の橋のたもとに立っていたのを思い出します。
遊歩道の一角がピンクの花で埋め尽くされていました。シュウカイドウです。
シュウカイドウ |
花をアップで。江戸時代に中国から渡来したものだそうです。20年くらい前、栃木県桐生市の薄暗い山の中でこの花の群落に出会い、美しさに息をのんだことを思い出します。
シュウカイドウに限らず、初めてその花を見ただとか印象的な出会いだったとか、花それぞれに思い出す場所やシチュエーションがあります。皆さんそうでしょうが。yamanekoの場合、例えば、さっき見たカリガネソウは猿政山の登山道、キツリフネは鳥烏帽子(いずれも広島県)とか。
タコノアシ |
これはタコノアシ。秋が深くなると全体に茶色になり、一層それらしくなります。 この花で思い出すのは埼玉県北本市の自然観察公園です。
ハッカ |
和製ハーブのハッカです。ミントの仲間ですね。匂いはメントールのそれ。
コムラサキ |
コムラサキ。梅仁丹を思い出すのは年齢のせいか。普通の仁丹は薬臭くてダメでしたが、梅仁丹は甘酸っぱく、中学生の頃、時々買っておやつ代わりに食べていました。そういえば最近仁丹って見ませんね。最近はフリスクか。そういえば仁丹にはさっきのハッカを蒸留した成分が入っています。
ヌマトラノオ |
ヌマトラノオ。まだ花序が短いですね。これからもっと伸びます。
ヒガンバナ |
おお、早くもヒガンバナが。もう9月ですからね。
ハダカホオズキ |
この花はハダカホオズキ。普通のホオズキのように袋に包まれず、実が露出しているからハダカホオズキです。
トチノキの実 |
散策路にトチノキの実がたくさん落ちていました。見た目はクリに似ていて美味しそうですが、とてもアクが強いです。
ヒオウギ |
ヒオウギが咲いていました。山野に咲くアヤメの仲間です。盛夏、四国の天狗高原で見たヒオウギが忘れられません。
カヤ |
1時間ほど自然観察園を散策したのち、芝生広場の方に戻ってきました。
背の高い木の枝にピンポン球くらいの大きさの実が鈴なりに。この丸いのはカヤの実です。葉を触ると先端の硬い棘が刺さって「痛っ」と声が出てしまいます。
アオギリ |
駐車場までぶらぶら歩いていきます。途中アオギリが実を付けているのを見かけました。葉のように見えるのは果実を包んでいた袋。実が熟す前に裂け、果実はその縁にくっついています。
さて、こんな感じで久しぶりに野川公園を歩いてみました。以前と変わらずたくさんの花々を見ることができました。そしてちょっと懐かしかったです。野川公園以外にも1年を通じて定点観察していた場所があるので、またそちらの方も訪れて見たいと思います。
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