高原の家・七塚 〜自然探検隊で遊ぼう(3)〜


 

【広島県庄原市 平成17年2月12日(土)】
 
 再びやってきました、「七塚原自然探検隊」。これまでに、夏、秋、と開催され、今回は冬のフィールドで遊ぼうという企画です。yamanekoとしては都合で夏の回には出ることができなかったので、今回で2回目ということになります。どんな子供たちと出会えるか。楽しみです。

 七塚原の朝

 それにしても寒い! 午前9時、「高原の家七塚」に着いたときの気温はマイナス2度でした。高原の家のあるここ庄原市は中国山地のど真ん中に位置し、くわえて盆地状になっているところなので厳しく冷え込むのも頷けます。
 まずはスタッフ同士で打ち合わせ。今回は、NACS−Jの自然観察指導員がyamanekoを含めて7人。あと高原の家に隣接する広島県立大学の学生を中心とした若手スタッフが12人で、総勢19人という陣容。参加する子供たちは51人と多数ですが、人手は十分といったところです。
 yamanekoが担当する第4班は、他に指導員の村口さん、若手の小野さん、中村君、原田さんがスタッフです。(若手スタッフはいつも子供たちにもみくちゃにされて大変です。)

 開会

 10時、開会です。
 この企画の広報は近隣市町村内の小学校を通じて広くビラを配ってPRしているので、ほとんどの子が初対面同士。でもリピーターの子もいるので、うち解けあうのにも時間はかからないと思います。4班にもyamanekoが前回担当した子が3人ほどいました。

 野鳥の観察

 オリエンテーションが終わると、さっそく最初のプログラム、「野鳥の観察」です。初めに地元庄原小学校教諭の中田さんからバードウオッチングのポイントやマナーについてのお話を。さすがは小学校で子供と接しているだけあって、分かりやすく工夫されたお話でした。
 続いて班ごとにフィールドに出てみます。体育館の裏手に広がる林は木々がみんな葉を落としているので、観察しやすい場所です。
 「ケッ、ケッ」 アカゲラです。頭頂部が赤いキツツキで、都市近郊ではあまりお目にかかれない鳥です。コゲラもいるようです。こちらは「ギーギー」という鳴き声。今回も3年生から5年生までがメインですが、中にはお兄ちゃんと一緒に参加した1年生の子などもいて、そんな子にとっては双眼鏡の扱いはなかなか難しいようです。
 その後、本館の裏に回り、キャンプ場に抜け、最後は近所の農業用ため池まで。池にはカモの仲間がいるかと期待して行ったのですが、時間が遅かったのかまったくいませんでした。もう食事を終えて森に入っていったのでしょう。周りに障害物がなく鳥の動きも緩やかなので水鳥は観察しやすいのですが、残念。それでもねばっているとマガモが数羽現れてみんなを喜ばせてくれました。

 八国見山(左)と県境の山々

 空はだんだん雲に覆われてきました。遠く北の方を見やると、波打つ稜線から独立した、明らかに他とは異なる山が見えます。「八国見山」(やくにみやま)。山頂から、備後、安芸、出雲、隠岐、石見、備中、伊予、伯耆の8つの国が見えることから名がついたといいますが、地図上からいっても隠岐や伊予が見えるというのは無理があるでしょう。ちなみに広島県には「七国見山」という山もあります。こちらは瀬戸内海に浮かぶ蒲刈島にある山です。(七国見山からは7つの国が見えるのか? → こちらを参照
 
 最後に高原の家に戻って鳥合わせ。他には、ジョウビタキ、シジュウカラ、ヤマガラ、エナガ、ヒヨドリ、ホオジロ、カケス、セグロセキレイ、ハシブトガラス、トビ、ツグミ、シロハラを観察することができ、全部で15種類になりました。

 里山の探検

 昼食をはさんで1時半からは「里山の探検」。高原の家の周辺で何か面白いものを探そうというものです。本当はここで「雪と遊ぼう」というプログラムもあったのですが、見てのとおり雪の「ゆ」の字もありません。
 さて、何か面白いものは、と…。あります、あります。ウスタビガの繭、モグラのトンネル、枯れ木にビッシリと生えたキノコ。子供たちは優秀なトレジャーハンターです。
 長さ1メートルほどに切った丸太が積んでありました。直径20センチから25pほど。シイタケの榾木(ほだぎ)にしてはちょっと太めです。この丸太を木ぎれでたたいて音を出している子がいました。よくとおるいい音です。丸太によって出る音に違いがあることに気付いたその子は、たたく位置やたたく棒をいろいろ替えて試してみていました。「何で音が違うんだ?」、「太さ?」、「長さ?」、「堅さ?」。これこそ自分で見つけた自然の不思議です。

 「まず咲く」マンサク  ヤマハゼ(冬芽)

 ちょっとした谷に降りていくとかろうじて雪が残っていました。先々週の大雪の名残です。さっそく雪玉にしてぶっつけ合いが始まりました。子供たちの目がより一層輝きはじめました。みんないい顔です。

 ドリルで穴空け

 3時からは「しいたけの種付けに挑戦」です。忙しいスケジュールのようにも見えますが、子供たちの集中力の持続時間を考えるとこのくらいがちょうどよいのです。
 長さ1メートル、直径15センチほどの榾木がたくさん用意されていて、まずは電動ドリルを使って穴空けからです。大人でも使ったことのある人は少ない工具ですが、子供たちはけっこう上手く使っていました。もちろん事前に安全上の注意をしっかりとしてからです。榾木に空ける穴の大きさは直径1センチ、深さ2センチ程度。これを20センチ間隔で1列に5箇所。榾木の表面ぐるりに3列から4列ほど。榾木1本あたり15箇所から20箇所の穴を空けることになります。

 種の打ち込み

 穴空けが終わると今度は種の打ち込みです。種と言ってもシイタケは菌類なので種子植物が作るようないわゆる「種」ではありません。木を削って作られた駒で、チョークの先端を1センチ程度に切ってちょっとスリムにしたような形。シイタケ菌がビッシリとまぶされています。これをさっき空けた穴にカナヅチで打ち込むのです。
 
 この駒(種)を見て、数少ない大脳新皮質のヒダの奥から何十年ぶりかの記憶が蘇ってきました。
 子供の頃遊んだブリキ製のオモチャで(ブリキという言葉が昭和の匂いを感じさせます。)、ウインチェスター型ライフルをものすごくちゃちくしたようなものです。銃口にコルク(これまた昭和の匂いが…)で栓をして、これを圧縮した空気で撃ち出すのです。このコクルにシイタケの駒が似ているという、ただそれだけの話です。ハイ。
 ちなみにこのコルクには銃身からつながれた紐が付いていて、撃っても遠くに飛んでいきません。パン!という音は勇ましいのですが、その後手元でブラブラと揺れているコルクがより一層ちゃちさを際立たせていました。(このオモチャを知っているアナタ! けっこういい歳です。)
 
 今日種付けしたシイタケが生えてきて食べられる大きさになるのには通常1年半くらいかかります。その後は数年にわたって収穫できるそうです。その頃には子供たちも中学生。ぜひ自分が種付けしたシイタケの成長を確かめに来てもらいたいものです。

 夕食

 夕食です。子供たちとスタッフとでそろって食堂でいただきます。家庭での食事のことは分かりませんが、こういうところではみんなきれいに平らげているようです。いつもとは違った雰囲気がそうさせるのかもしれません。男の子は競っておかわりしています。

 クラフト  「何つくろうかな」

 6時からはクラフトです。日中の里山探検のときに拾い集めておいた素材に、あらかじめ用意してあった材料を加えて、各自好きなように工作します。作るものについて何の制約もありません。
 前回もそうでしたが、子供たちの発想にはかないません。「そういうのもアリか…」と唸らせられることたびたびでした。あらかじめ出来上がりを考えて作っている子などはいないでしょう。作っているうちにどんどんイメージが膨らんでいくようです。

 約2時間かけてそれぞれの力作が出来上がりました。どの顔もみな満足そうです。
 
 8時になると子供たちは入浴、10時には就寝となっていますが、おとなしく寝るとはとても思えません。まぁ、こんなときに子供同士で夜更かしするのも貴重な経験なのかもしれません。
 
 さて、スタッフはというと、明日のプログラムの凧作りの予行演習。あーでもない、こーでもないと言いながら12時前までかかってようやく段取りができました。
 外は深々と冷え込んでいます。さすがに今日はエアコンをかけっぱなしでないと寝られそうにありません。
 さあ、明日の天気はどうでしょうか。
 
 (自然探検隊で遊ぼう(4)へつづく)