七国見山 〜冷えた汗は温泉で〜
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【広島県蒲刈町 平成16年1月25日(日)】
安芸灘に浮かぶ上蒲刈島。人口約2,500人、穏やかな海に囲まれた静かな島です。この島のほとんどは山で占められ、平地はごくわずかしかありません。海岸線には断崖も多く、また、海賊からの略奪を逃れるため農地が山間に作られていたこともあって、古来海岸線には道は通っていなかったそうです。島の中央に座する七国見山への登山道も、もとは島内を行き来するための重要な道だったとのことです。
七国見山は標高457m。その頂から七つの国を見渡せたことからこの名がついたそうです。七つの国とは、安芸、備後、備中、讃岐、伊予、豊後、周防。
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実際に全部が見えるかどうか、一回は登ってこの眼で確かめてみたいという気を起こさせる名前の山です。
この島は二つの橋で本土と陸続きになっているので、車を使って気軽に訪れることができます。海浜レジャー施設「県民の浜」の手前にある登山口を11時30分にスタート。今日は冷たい風が強く吹きつけていて、普段は穏やかな水面もざわざわと波立っています。
西泊観音前の広場 |
車道を10分ほど登ったところに西泊観音があります。その前の広場がロータリー状になっていて、ここまで車で上がってくることもできます。でも、これから現れる急な登山道の準備運動を兼ねて歩いてくることをお奨めします。
急な登り |
西泊観音からは急な階段が続きます。
一気に汗が噴き出てきました。ウインドブレーカーを脱いで、フリースのファスナーを開けて体温をこまめに調節します。一息つこうと立ち止まると冷たい風が汗を冷やすので、面倒でもその都度着たり脱いだりを繰り返しました。
薮の中をウグイスが往ったり来たり。ウグイスはもともと地味な色なのに加え、薮の中を好むので、なかなかその姿を見ることはありません。でも、今日はじっくりと観察することができました。
西楽寺 |
階段は6合目にある西楽寺まで続きました。寺といっても小さなお堂のような感じの建物です。
寒いはずです。小雪がちらつきはじめました。
ここからは稜線を歩くことになります。でも左右の樹木が風をさえぎってくれて、助かりました。
稜線の道 |
足元にツルウメモドキのオレンジ色の実が落ちていました。
周囲にはコナラ、アラカシ、シロダモ、カクレミノなど。瀬戸内沿岸でよく見る木々たちです。その木々を揺らしてゴーゴーと吹きつける風。今日は県北の方は大荒れでしょう。
山頂展望台 |
手前のピーク(410m)を越えて少し下ってから再び登るとそこが頂上です。時計を見るとスタートからちょうど1時間。今日は一人なので黙々と登ってきたという感じです。
問題の展望はというと、南に向かって開けているのみで、この状態だと条件の良いときでもせいぜい「二国見山」くらいでしょうか。昔、敵や海賊を警戒するため樹木をあらかた伐採していた時には七つの国が見渡せたのかもしれません。(そういうことにしておきましょう。)
さっそく弁当にしますが、冷たい風が見る間に体を冷やしていきます。数日前から喉の調子がおかしくて、まるでヘリウムガスを吸った後のような声になっているのですが、ここで風邪を引いてしまってはたまりません。
冷えきる前に体を動かして温まらなければ。ふもとまで下りれば「県民の浜」に温泉があります。今日はそこを最終目的地と決めました。
南西の眺め |
視界は限られているとはいえ、やはり気持ちのいい眺めです。すぐ目の前に四国があり、その間の瀬戸の水面がキラキラと輝いていました。
海に落ちそう |
下山路はもと来た道を引き返します。勾配が急なのでどうしても小走りのようになってしまいます。
上の写真のところはかなり急な下りになっていて、そのはるか下に光る海が広がっていました。一歩つまずいたらそのまま海まで転げ落ちそうな感じです。
県民の浜 |
西楽寺を過ぎると東側の展望が開けてきます。
眼下には県民の浜。ここには宿泊施設や研修施設、テニスコートやサッカー場、プラネタリウムまであります。もちろんメインは海水浴場です。数年前、ここで自然観察指導員連絡会の三県交流会(広島、島根、山口)を開催しました。
写真中央の島は尾久比島、その奥が斎島、そしてその向こうの陸地が四国で、愛媛県菊間町あたりになります。
「やすらぎの館」 |
下山したら急いで温泉へ。
ここは「やすらぎの館」といって、こんな島の果てにあってもいつもたくさんの人で賑わっています。
今日は慌ただしい山歩きでしたが、ここの湯船でようやく手足を伸ばしてくつろぐことができました。
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