明神ヶ岳・明星ヶ岳 〜秋の箱根外輪山(後編)〜
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(後編) |
【神奈川県 箱根町 平成22年11月3日(水)】
明神ヶ岳、明星ヶ岳と連なる箱根外輪山の後編です。(前編はこちら)
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仙石バス停から矢倉沢峠に上がり、尾根道を辿ってきました。ここまでで全行程のほぼ半分を歩き、もうじき宮城野に向かって下りる道との分岐点です。
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行き交う人もまばらで、とても静かです。秋ですなぁ。
マツムシソウ |
マツムシソウの花冠は一見ひとつの花のようですが、実は小さな花が寄り集まっています。花冠の外周に並んでいる花だけ花弁がびろーんと大きくなります。発育が早いのか、中心部の花の葯が出てきた頃には外周部の花の葯は落ちてしまっています。
ウメバチソウ |
ウメバチソウの花もよく見るとちょっとした小宇宙。上の写真は5個の雄しべがまだ開いてなくて、中心にある球形の雌しべを包んでいますが、開花から4、5日で外側に向かってピンと伸びます。雄しべの外側にある髭状のものは花粉を作らない仮雄しべ。でも、ウメバチソウの仮雄しべはその根元から蜜を出し、虫を呼んでいるとのことです。野辺の小さな花の中にこんな世界があるなんて。野山はワンダーにあふれていますね。
振り返ると |
坂を登り始めてしばらくして振り返ると、辿ってきた道が見下ろせました。一番奥にあるピークが火打石山です。
ハコネアザミ |
ナンブアザミの変種といわれるハコネアザミ。この花にも多く出会いました。
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明るい木立の下を登っていきます。地味にきつく、息づかいも荒くなってきました。
松田町あたり |
途中、谷に沿って北側の展望が開けているところがありました。東名高速が箱根の山塊を北側から迂回して越えようとする手前、ちょうど大井松田ICあたりです。その向こうの東丹沢の峰には雲がかかってしまいました。
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そこから東に目を転じて明神ヶ岳の稜線を見上げるとこんな感じ。あとちょっとです。
オヤマボクチ |
頭花の直径が5pくらい(ガチャガチャのケースくらい)もあるオヤマボクチ。アザミに似ていますが別属で、葉にも刺がありません。「ホクチ」とは「火口」と書き、葉の裏の柔らかい繊維を寄り集めて作った火起こしの着火剤のこと。他にも、根は漬け物に、葉は蕎麦のつなぎにと、昔から利用価値が高かったようです。
箱根山 |
逆光ぎみですが、カルデラの中央に聳える箱根山です。といっても「箱根山」というピークはなく、最も高いのは神山(1438m)です。他に冠ヶ岳(1412m)、駒ヶ岳(1356m)などがあり、これらを総称して箱根山です。(箱根火山の成り立ちは、こちら)
尾根道 |
振り返るとこれまで歩いてきた尾根が一望できました。奥にある金時山(尖っている山)の手前から延々と歩いてきたことになります。金時山の向こうに富士山のすそ野が見えていますね。あいにく山頂は雲の中です。
明神ヶ岳山頂 |
12時40分、明神ヶ岳の山頂に到着しました。驚くほど大勢の人がいます。いったいどこから湧いてきたのかといった感じですが、yamanekoたちが来たのとは反対側の登山道から上がってきたのでしょう。
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さて、ちょっと遅めの昼食です。日射しはありますが、じっとしていると少し寒くなってきます。体温が下がる前に1枚着込んで休憩タイムです。
フジアザミ |
テニスボールほどの大きさの頭花をシャンデリアのように付けた大型のアザミが咲いていました。フジアザミです。一抱えもあろうかと思われるほど(刺が激しいので抱えませんが)の株で、圧倒的な存在感でした。
小田原 |
1時10分、のんびりと日向ぼっこもしたので、筋肉が固まらないうちに歩き始めることにしました。
南東方向に小田原の街が見えました。その前に広がっているのは相模湾です。小田原は人口20万人弱で、北条早雲が治めた歴史の街。新幹線も停まります。小田原といえば提灯を連想しますが、いまでは蒲鉾の方がメジャーかも。
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ああ、こんな山道を歩くのは最高に気持ちいいです。お腹もいっぱいだし、極楽極楽。
マムシグサ |
実の色づき加減といい、葉の枯れ具合といい、深まる秋を感じさせますね。
リンドウ |
晩秋の日をたっぷりと浴びて幸せそうなリンドウです。
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ところどころこんな道もあって、ぐんぐん高度を下げていきます。大腿四頭筋がパンパンになりそうです。
ボタンヅル |
ボタンヅルの果実。長い髭は花が終わったあとに羽毛状に伸びた花柱です。見事な造形ですね。
サルトリイバラ |
午後は上空の雲も消えて、明るい日射しの中の山歩きになりました。サルトリイバラの実もテカテカと光っています。
分岐 |
1時50分、急な下りが終わり、宮城野へと下りていく分岐までやって来ました。ここは直進です。
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清々しい尾根道歩き。鼻歌の一つも出ようというものです。
明星ヶ岳を望む |
明星ヶ岳が見えてきました。奥の台形の山です。ここからだと、まず一回下って目の前の山に登り返し、また下ってそれから本体に取り付くことになるようです。
スッポンタケ |
悪臭があることで有名なスッポンタケ。卵のような幼菌を突き破って伸びてきています。まだ成長過程だからか、そんなに匂いはしませんでした。
ツリガネニンジン |
ツリガネニンジンの花。色白で清楚な感じです。バックの紅葉ともマッチしています。
明星ヶ岳 |
いよいよ明星ヶ岳が目の前に迫ってきました。
この風景、アカトンボでも飛んでいそうですが、この日はトンボの姿をほとんど見かけませんでした。なぜだろう? アカトンボの成虫としての寿命は4箇月ほどだそうですが、もう寿命が尽きてしまったか。
明神ヶ岳遠望 |
明星ヶ岳の山体に取り付きゆっくりと登っていきます。振り返ると遠くに明神ヶ岳の姿が。こうしてみるとずいぶん歩いてきたなあ。手前の丘の山道は2つ上の写真を撮ったところです。
リンドウの隊列 |
今日はもうリンドウの乱れ咲き。登山道はずーっとこんな感じでした。
山頂近し |
明星ヶ岳の山頂部は平らな稜線になっていて、地形だけでは判断できません。なのでキョロキョロしながら歩きます。どこが山頂なんだー?
山頂 |
と、いきなり左手に奥まったスペースが現れ、そこに看板が立ててあるじゃないですか。どうやらここが明星ヶ岳の山頂のようです。時計を見ると2時35分でした。
左手の鳥居の奥には小さな祠があり、「御嶽大神」と刻まれた大きな石碑が建っていました。鳥居は朽ち果てそうな感じでしたが、お供え物の果物は新鮮で、おそらく今日供えられた物だと思います。ちゃんと信仰されているんですね。
急な下り |
山頂の祠にここまでの無事を感謝し、また、これからの無事もお願いして、下山することにしました。
明星ヶ岳から宮城野に下る道は転げ落ちそうなほどの急角度。ストックを頼りに一歩一歩確かめながら下りていきます。
明星ヶ岳 |
午後3時30分、麓に下りてきました。ただひたすらに黙々と下りましたが、それでも50分ほどかかってしまいました。振り返ると明星ヶ岳が穏やかな姿を見せています。楽しい山歩きをありがとう。
ここからは、道路を歩き最寄りの宮城野橋バス停に向かいます。今だと3時52分の小田原行きに間に合いそうです。
バスは10分ほど遅れてやって来ました。紅葉のこの時期、そしてこの時刻。大渋滞は必至です。案の定、乗ってからしばらくして、元箱根方面からの道が合流する宮ノ下で渋滞の最後尾につかまってしまいました。車内アナウンスで箱根登山鉄道に乗り換えた方が早いとの勧めがあったので、ほとんどの乗客が下りてしまいましたが、yamaneko達は面倒くさかったのでそのまま乗車。結局小田原までは1時間ほどかかりましたが、ちょうどいい休憩となりました。
小田原からはロマンスカーに乗って一路新宿へ。普通の急行との所要時間差は20分程度ですが、ゆったりと座れて車内販売もあり旅情も楽しめます。ビールを飲みながら今日の山歩きを振り返って、幸せな気持ちで帰宅することができました。
乙女峠からの明神ヶ岳と明星ヶ岳 (平成21年1月3日)
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