宮島・あての木浦、桃の木浦 〜海岸植物調査〜


 

【広島県宮島町 平成17年6月4日(土)】
 
 NACS−J(日本自然保護協会)が昨年から3年計画で行っている全国海岸植物調査。ここ宮島では今回で4回目になります。昨年はプレテストも兼ねて4箇所。今年はこれまで2回に分けて10箇所。そして今日は残る候補地のうち、あての木浦、桃の木浦、入浜、腰細浦の4箇所を調査することになりました。 

 宮島にはこれまで調査した場所の他にもまだいくつか「浦」があるのですが、今年3月末に船でぐるっと島を一周し下見をしたところ、浜が岩で覆い尽くされ植生の存在が望めなかったりして調査地として不適当なものばかり。結果として今回が宮島での最後の調査となります。

 いざ調査地へ

 午前9時、いつものとおり宮島桟橋の2階にある自然保護官詰所に集合。ここで二班に分かれました。1班は車に分乗し陸路で島の反対側へ。入浜と腰細浦を目指します。2班は桟橋からPV(パークボランティア)の井上さん所有の船で島の西側に回り、あての木浦と桃の木浦を調査します。yamanekoは2班の船組です。

 緑が濃くなってきた

 船は本土との間の大野瀬戸を軽快に進んでいきます。ここは瀬戸の幅が狭いうえにカキ筏がところせましと浮いていて、船の操縦にもずいぶん気を遣うことでしょう。井上さんには毎回船を出してもらって感謝感謝です。
 船上から見る宮島。かなり緑が濃くなってきました。1ヶ月前、2ヶ月前、そして今回と一月おきに同じ風景を見てきていますが、島そのものが生き物であるかのように、徐々に活力をみなぎらせていくのが分かるようです。

 あての木浦  ハマゴウ

 20分ほどであての木浦に到着。思っていたより幅の広い浜です。
 調査は主に浜の地形図を作る人と、植物の様子を観察する人とに分かれて行いました。中には測量のプロもいるようで、精密な図面ができたようです。さて植物はというと、島内の浜のご多分に漏れずハマゴウのみでした。この木(地を這うような植物ですが、草本ではなく立派な木本です。)もちょうど葉を繁らせている最中。白い砂に照り返されてより一層緑が濃く映ります。陸域にはヤマモモやクスノキ、タブノキ、ハゼノキなど。あと、他の浜とは異なりアカマツが多く目につきました。

 後背湿地

 この浜の奥には少し大きめの後背湿地がありました。ヒトモトススキに覆い尽くされていましたが、そこには昆虫をはじめとした多くの動物が生活をしていることでしょう。湿地の縁にはハンゲショウの小さな群落も。もう少しで葉の一部を白く化粧して花も咲かせます。葉を白くして目立たせることによって虫を呼んでいるのでしょうか。ちなみに「半化粧」ではなく「半夏生」です。
 後背湿地のはるか向こうには岩船岳がどっしりと構えてこちらを見下ろしていました。

 桃の木浦

 続いて水際伝いに桃の木浦に移動。こちらもあての木浦と似たような浜ですが、後背湿地はありません。名前のとおり桃の木でもあるのかなと思い一応見てみましたが、当然そんなものはありませんでした。
 それにしても素晴らしく碧い海。そして白い砂。これでゴミさえなければ…。ここの浜のゴミにはカキ筏の部材に加えてパルプチップが目立っていました。対岸の工業地帯の製紙工場あたりから流れてきたものかもしれません。

 夏が来た

 そうこうするうちにちょうど昼になり、調査もほぼ終了しました。途中、アオダイショウの交尾の場に出くわすというハプニングがありましたが、無粋とは思いつつも最後まで観察させてもらいました。
 木陰で昼食をとって、いつものようにひと眠りしたあと、井上さんが迎えに来てくれました。あとは保護官詰所に戻り、1班と合流するのみです。
 
 今回で宮島の島内の調査は終了しました。あと広島県内では倉橋島や大崎上島などの調査地が残っています。こちらの方も秋になるまでに調査を終えたいと思います。きっとハマゴウ以外にも様々な植物があるでしょう。楽しみです。