三頭山 〜初冬の山に陽を受けて〜
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【東京都 檜原村 平成25年11月30日(土)】
日に日に秋が深まってきました。11月も晦日となり、野山ではもう初冬と言ってもいい時候です。
今回は、職場の仲間達と山歩き。yamanekoを含め総勢8人で、うち5人は初めて一緒に登るメンバーです。2箇月前に金時山に登った後すぐくらいから次回の山歩きを計画する声は上がっていたのですが、皆それぞれ都合が合わず、この時期になってしまいました。場所は奥多摩の三頭山。もう紅葉は終わっているでしょうが、天気が良ければ富士山の凛々しい姿を望むことができるでしょう(この山には3年前のちょうどこの時期に登ったことがあります。→こちら)。
午前8時、JR立川駅南口に集合。三頭山へは「都民の森」から登るのがお手軽で、そのためには立川よりも更に西にある武蔵五日市駅(五日市線の終点)まで行って、そこからバスで向かうという方法があるのですが、いかんせん便数が少なく、ちょうどよい時間に運行していません。なので、今回はバスではなくレンタカーで向かうことに。そのためにはレンタカー屋さんが多いターミナル駅の立川に集合することにしたのです。立川は多摩地域の中心都市の一つですから。
事前にネットで予約していたハイエース(10人乗り)は、8時から20時までで2万1千円なり。yamanekoが先乗りして手続きをしている間に遅刻者もなく全員が集合。8時25分には出発できました。
立川からは青梅線に沿うようにして西に向かい、拝島付近で多摩川を渡ってからは今度は五日市線に沿うようにして走っていきます。武蔵五日市駅を過ぎると、道路は山あいの谷を縫うようになり、そこからおよそ20qで目的地の都民の森に到着します。
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都民の森は三頭山東斜面の標高1000mから山頂(1531m)までに広がる森で、都民が自然に親しむために設けられたもの。アクセスは良くないものの休日には広い駐車場はすぐにいっぱいになります。
今日のルートは、駐車場から森林体験施設の「森林館」まで上り、折り返す形で遊歩道を三頭滝まで。そこから山道になり、谷筋をムシカリ峠目指して登っていきます。稜線に出たら山頂まではあとわずか。復路は奥多摩町との境となっている稜線を東に下っていき、鞘口峠で森林館に向かって山腹を下りて行くというものです。
出発前 |
午前10時、出発前の記念撮影。左から、いつものB君、千葉在住でウインドサーフィンと釣りを愛する海の男。初参加のS君、集合写真では周りと遠近感が狂う感じの体型ですが、見かけによらぬスポーツマン。S君と同じ課のNさん。仕事に燃えている陽気な山ガールで、この夏には富士山にも登頂。真ん中がyamanekoの山友、埼玉在住のTさん。B君とTさんとは9月に金時山にも行きました。2年前まで部下だったI君とその奥さん。そして右端が知性と運動神経と女子力を併せ持つKさん。海外の山にも登ったことがあるとか。
森林館 |
駐車場で準備運動をして、案内板でコース確認をしてから出発。まずは森林館までの舗装路を登ります。朝日が差してきてはいますが空気は冷たいです。日陰は特に。5分ほどで森林館の建物が見えてきました。
シモバシラ |
道路脇にシモバシラが氷のオブジェを作り出しています。これには一同「おぉ〜」。根元近くの茎の中にある水分が夜間の低温で凍って膨張し、茎を裂いて外の出てきたもの。地中から水を吸い上げながら一晩で成長した姿がこれです。
森林館からは遊歩道へ。チップ敷きの柔かい路面で、足の裏の感触が気持ちいいです。
しばらく行くとビューポイントに至りました。目の前に広がっているのは、南秋川が削った谷。さっきここを目指して遡ってきた谷です。正面の遠い山並みの向こうには関東平野が広がっているはずです。
ヤマアジサイ |
ヤマアジサイのドライフラワー。枯れてもなお登山者の目を楽しませてくれます。両性花は結実しているようですが、装飾花は花の形のまま。もう訪れる虫もいないのに。これはこれでものの哀れを感じさせます。
冬晴れの朝。足元を見つめ、青空を仰ぎ、こんな道を歩くことの幸せをしみじみと感じます。
この紅葉はムラサキシキブ。赤一色の紅葉も見事ですが、こういうのも味わいがありますよね。
三頭滝 |
10時30分、三頭滝に到着しました。ちょうど滝を正面から見られるように吊橋が架かっていて、一同さっそく橋の上へ。ちなみにこの橋の名は滝見橋。谷底からはかなりの高さがあり、高所恐怖症のB君はやや腰が引けているようです。
センニンソウ |
ひとしきり滝を見たら再び歩き始めます。
これはセンニンソウの果実。長く伸びているのは花柱の名残で、それが羽毛のような毛に覆われていて造形的にも美しいです。
ゴロゴロと折り重なる岩は石英閃緑岩とのこと。約800万年前の地殻変動で地下から溶岩が突き上げてきたものなのだそうです。その岩を伝って飛び石状に沢を渡ります。澄んだ水の音も冷たそうです。
谷間に差し込む日射しはまだ僅か。小休止の際もすぐに足下から冷気が上がってきて、身震いします。
谷の頭の方を見上げると雲一つない青空。これは山頂からの眺めが楽しみですね。そういえば昔、快晴の空を「日本晴れ」と表現することがありましたが、最近耳にしませんね。なんでだろう。
霜柱 |
登山道にはカチカチに固まった霜柱があちこちに見られました。さっき出会った植物のシモバシラと同様に地中の水分を吸い上げながら氷結したもの。こっちが本家ですが。気温が低いので一向に溶ける気配はありません。
しばらく行くと登山道の分岐に休憩用のデッキがありました。森の隠れ家といった感じ。夏だと木々が茂ってまた違う雰囲気でしょうね。
ここでも小休止。お菓子で小腹を満たします。ああ、やっぱり日差しはありがたい。
デッキの横にはサワグルミの巨木が。しばらく見上げていたら、小さなことにこだわらず生きて行けよ、と声をかけられた気がしました。
再び歩き始めます。歩を止めるたびに先頭が入れ替わります。でもyamanekoは常に最後尾。
沢の源頭に近づくに連れて傾斜がきつくなってきました。だんだん言葉少なになっていきます。
オヤマボクチ |
オヤマボクチもドライフラワー状態になっていました。背が高く、この姿になっても存在感があります。
ようやく稜線が見えました。あそこがムシカリ峠です。
ムシカリ峠 |
11時35分、ムシカリ峠に到着しました。やれやれ、リュックを下ろして休憩です。
こんなに陽が差しているのに、ちょっとじっとしているだけで汗が冷えてきて寒いくらいです。
休憩を終えて、さあ最後の上りにかかります。山頂までの標高差は100mほど。しかしこれがけっこう急な道でした。
世界遺産 |
そして12時ちょうど、三頭山の山頂に到着しました。正確には西峰です(名前のとおりピークが三つある。)。スタートから2時間で登ってきました。どうです、この富士の眺め。絶景ですな。双眼鏡で見ると雪の斜面が光を反射して金属光沢に輝いていました。手前の山並みのグラデーションも見事です。
昼食 |
山頂にはざっと50人ほど。思い思いに腰を下ろしています。おなかが空いているので、我々も昼食を。yamanekoは今朝寝過ごしそうになったのでカップラーメンとおにぎりのみです。ポットに入れていった湯が少しぬるかったのか、固めの出来上がりでした。残念。
食後、S君とNさんはリュックの中からシンガポール製の栄養ドリンクを取り出しました。職場の上司から(半強制的に)もらったものだとか。このドリンク、瓶の外形がまず驚きで、日本の栄養ドリンクでお馴染みの縦型のものではなく、どちらかというと軟膏や化粧クリームが入っていそうな背の低い丸瓶。鮮やかな緑色で、まあ、はっきり言うと毒々しい。それにサラサラの液体が入っていて、これを飲むというのです。成分表示には「extract
of chicken 98%」。すなわちチキンエキスとのこと。貰ったのでしょうがないと言いつつ飲んでいましたが、その感想は「…うん…ん?」と微妙。決して美味いものではないとの評でした。その後、下山時には二人とも妙なテンションになっていたので、なんらかの効能はあった模様です。(残りの2%は何だったんだろうか。)
下山開始 |
12時45分、下山開始。鞘口(さいぐち)峠に向かいます。いやあ、山頂では良い眺めを楽しませてもらいました。
東峰 |
小さな中央峰を越えて更にその先に三角点のある東峰。ここが三頭山のピークです。
東峰には展望デッキがあります。ここからは関東平野が一望。新宿の高層ビル群も見えました。
北東方向 |
目の前には奥多摩の山々が。写真左のどっしりとした山は御前山(1405m)、中央の溶岩ドームのような突起のある山は大岳山(1267m)、右のツインピークスは馬頭刈山(884m)です。御前山までは直線距離で約7q。大岳山までは約10q、馬頭刈山までは約13qほどの距離。新宿までは約60qです。
展望デッキを後にして稜線の道を下っていきます。足元には落ち葉。隠れている木の根を踏むと滑りやすいので要注意です。
見晴らし小屋 |
途中の見晴らし小屋で小休止。ここからもさっきの展望台とほぼ同じような眺望が楽しめました。
この後なんと道を間違ってしまい、来た道をしばらく戻ってしまいました。あれ?と気がついて引き返すことに。
ぐんぐん高度を下げていきます。それにしても気持ちいい山歩き。こういう明るい森を歩くのって大好きです。
鞘口峠 |
1時55分、鞘口峠まで下りてきました。ここは日陰になっていて寒いです。
まだ2時前なのに夕方のような弱々しい日射しです。ちょっと休憩してから森林館まで下りましょう。
無事下山 |
森林館で休憩してから更に下って駐車場へ。ここまでみんなケガもなく無事に下りてくることができました。良かったです。それにしてもハイエース、でかいです。10人がゆったり乗れて、最後部には十分な荷物スペースもありました。燃費はリッター5qほどでしたが。
2時35分、都民の森を出発。運転はTさん。若い人たちはみんな免許は持っているものの車を持っていないので、ほとんど運転していないのだとか(ただ、B君だけは車内をボードと釣り竿に占拠された車を持っているそうです。)。都心に住む若者の車熱の低さに触れるたび、ジェネレーションの違いを感じます。yamanekoが若い頃は車を持っていなければ始まらない感じでしたが。
立川まではみんな爆睡していて車内は異様な静寂に包まれていました。yamanekoも助手席で睡魔と格闘。そして、4時20分にレンタカー屋さんに到着。立川の街はもう夕暮れでした。車を返してから歩いて立川駅へ。南口で解散となりました。
今日は若い人(Tさんを除いて20代後半から30代前半)と山歩きをして楽しかったです。I君夫婦とS君は今回が初めての山歩き。でも興味があったようで声をかけたら喜んで参加してくれました。登山経験のあるKさんにしてもNさんにしても山には行きたいけれど日頃なかなか機会がないとのこと。やっぱり若い人の間にも潜在的な山歩き願望があるのだと分かりました。また今度、気候が良いときにでも誘ってみようと思います。
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