三頭山 〜晩秋の尾根道を行く(前編)〜


 

 (前編)

【東京都 檜原村 平成22年11月28日(日)】
 
 今年の秋は足早に過ぎていき、ニュースでは早くも初冬の便りが届くようになりました。街の様子といえば、街路樹が色づいて、ときおりの強い風に吹雪のように葉を舞い散らせています。毎朝、歩道を掃除している人に遇いますが、次から次へと落ちてくるので大変そうです。
 そんな週末、奥多摩は檜原村にある三頭山に行ってみることにしました。今回は会社の仲間3人とです。(このメンツで去年の夏に利尻山に登りました。)
 
                       
 
 三頭山は檜原村の最西端、山梨県との都県境に位置しています。山の南東斜面が「都民の森」として整備されていて、駐車場などもあることから、まずはそこを目指します。

 待ち合わせ

 午前7時、新宿駅西口ロータリー。今日は川崎在住のAさんが車を出してくれました。他には埼玉のTさん、葛飾のMさんで、最も集まりやすく、かつ、中央高速にもアクセスがよいということで、ここに集合です。この近くに住んでいるyamanekoとしてはありがたい限りです。ここはピックアップの名所らしく、他にもたくさんのグループの車が人待ちをしていました。

 駐車場より

 午前9時、都民の森の駐車場に到着。途中、ほとんど渋滞することもなく、すいすいと走ってきました。
 装備を整えてストレッチを終えると9時10分。駐車場からは谷沿いの舗装された道を上っていきます。


Kashmir 3D

 今日のコースは、まず駐車場から森林館まで行きます。森林館はネイチャーセンターや木工体験施設などがあり、子ども連れを中心としてここを訪れる多くの人が向かうところです。森林館からは時計回りにルートを辿り、谷に沿ってひたすら尾根筋を目指します。ムシカリ峠で稜線に出ると、そこから北上し三頭山山頂へ。山頂で休憩後、今度は東に延びる稜線を辿って、森林館の北にある鞘口峠へ下りていきます。そしてそこから再び登り返し、森林館の東側にあるピークへ。最後にまた森林館に戻ってくるというものです。

 大トチ

 この辺りは古くは御留山だったと聞いたことがありますが、そのためか巨木があちこちに見られます。この大きなトチノキも伐採を免れてきたのでしょう。初夏には辺り一面が真っ白になるほど花を散らせます。

 森林館

 森林館が見えてきました。ここでは子ども達がまだ小学生低学年の頃、木工でキーホルダーを作ったことがあります。今日もきっと大勢の親子連れがやってくるでしょうね。

 

 森林館の手前でUターンするように遊歩道に入ります。ここから三頭滝まではほぼ平坦な遊歩道が整備されていて、登山をしない人は滝までで折り返すのです。

 

 途中、南東方向の展望が開けているところがありました。今日はこの谷の向こうからやって来たのです。左の山肌に伸びている道路は、風張峠を越えて奥多摩湖に向う道です。

 稜線

 遊歩道を歩いていくと正面に稜線を仰ぎ見ることができました。場所的には山頂から東に1qくらいのところにある展望台あたりの稜線だと思います。

 三頭滝

 9時40分、三頭滝までやってきました。谷筋にあるのでまだ朝日が届いていません。落差は30mあまりだそうです。

 

 遊歩道の脇から谷を跨ぐ形で吊り橋が架かっていました。橋は対岸で行き止まりとなっています。写真の右手に滝があって、滝を正面から見るための「滝見デッキ」として架けられたもののようです。さすがは東京都、金があります。

 ヤマグルマ

 岩場からせり出すようにヤマグルマが生えていました。ヤマグルマ科を一属一種で構成する種で、その構造に道管を持たない変わり者の植物だそうです。被子植物は普通、道管(木部にある水分の通り道。細胞壁はなく、パイプ状)と仮道管(道管と同じ役割だが、細胞の間に薄い隔壁が残っている)の両方を持っていますが、ヤマグルマは仮道管のみなのだそうです(昔、観察会で聞いた話です。)。それにどんな戦略性があるのかは分かりませんが、隔壁がある方が強度的に勝っているのは確かですね。

 谷を上る

 まだ陽の届かない谷筋を上っていきます。ちょっと肌寒いです。この流れは秋川の源流で、今はこんなに細いですが、約25q先で多摩川に合流しやがて東京湾に注ぐのです。

 

 午前10時、休憩ポイントのウッドデッキまでやって来ました。このあたりまで上ってくると明るい日射しが山肌を照らしています。

 サワグルミ

 ウッドデッキの横にある大きな木はサワグルミでした。ずいぶん背が高いです。
 この時期、落葉樹はすべて葉を落としています。見通しが利いて良いのですが、モミジなどの赤い落ち葉までが色を失って、辺りはブラウン単色の世界になっています。日本には24種のカエデがあり、ここ三頭山ではそのうちの17種を見ることができるのだそうです。この谷も1箇月前くらいだったら艶やかだったかもしれません。

 

 三頭山を含むこの辺りの地形は、約800万年前に地下から突き上げてきた溶岩で作られたものだそうです。白黒の斑のゴツゴツとした岩石があちこちから顔をのぞかせていて、何だろうと思っていたのですが、帰って調べてみると石英閃緑岩とのことでした。閃緑岩はマグマが地中深くで冷えて固まったもので、組成としては地表近くで固まってできる安山岩と共通しています(と理科で習いました。)。安山岩は火山地帯で最も多く見かける岩石の一つです。

 苔生す

 表面を緑の苔で覆われていますが、これも石英閃緑岩です。

 稜線が

 やがて行く手に青空が。頭上が開けてくると稜線が近いことの証です。

 ヤマアジサイ

 ドライフラワー2種。こちらはヤマアジサイ。見事にそのまんまです。

 オヤマボクチ

 こっちはオヤマボクチ。こちらも繊細なパーツがまだしっかりと残っていますね。

 

 10時40分、稜線に出ました。ムシカリ峠です。ふぅ、やれやれ。けっこう長い上りでした。

 

 上の写真の正面の谷から上ってきました。ここで小休止、水分補給です。この峠、今はこんなに明るいですが、夏には木々の葉が茂って、鬱蒼としているでしょうね。ここからは左上に向かって上っていくことになります。

 

 ムシカリ峠からは稜線沿いに山頂を目指します。峠からの標高差は80mくらい。あとちょっとです。

 三頭山西峰

 11時ちょうど。三頭山の西峰に到着しました。三頭山は読んで字のごとく三つのピークがあり。こから東に延びる稜線上に中峰と東峰があります。最高点は三角点のある東峰です。一方、西方は眺めが良く、山頂も広いので、多くの登山者はここで休憩をとるようです。yamanekoたちもここでちょっと早めの昼食としましょう。

 

 どうですか、この眺め。絵はがきではありません。西峰からの富士山です。こうなるともう余分な言葉は要りませんね。
 《後編に続く