金剛山 〜大展望と修験と戦の山(前編)〜


 

  (前編)

【大阪府 千早赤阪村・奈良県 御所市 平成30年5月20日(日)】
 
 5月もはや半ば。山の緑はすっかり色濃くなりました。今回の野山歩きは金剛山(1125m)。大阪府の最高地点のある山です。「大阪府の最高峰」と言わないのは山頂は奈良県御所市になるから。ただ、山の西側は山頂直下まで大阪府なので、そこが「大阪府の最高地点」ということなのです。
 ちなみに金剛山の名前の由来は、渡来人が朝鮮半島からこの地に移り住んだときに、故郷の金剛山(クムガンサン)の面影をこの山に重ね、名を呼んだからというのが有力な説だとか。
 
                       
 
 金剛山は大阪府の南東部に位置していて、府内唯一の「村」である千早赤阪村からアプローチするのが一般的。人気の山なのでアクセスも比較的良好です。 電車で向かうとすると、近鉄の富田林駅か南海の河内長野駅で下車。そこからそれぞれ登山口までのバス路線が延びています。yamanekoは近鉄の電車で向かいました。富田林駅からは8時35分発の金剛バスで。1時間に2本という山間部の路線としては異例の過密ダイヤです。しかもこの路線、復路は登山客に配慮してか20時台までありました。

 金剛登山口バス停

 山間の道をバスに揺られること35分、金剛登山口バス停で下車しました。ここでは乗客の4分の3ほどが降りたようです。バスはここから2つ先にある終点、千早ロープウェイ前バス停まで運行しています。そうです、ロープウェイでも山頂に行けるのです。
 バス停付近には、若い人から年配の人まで、いくつものグループが出発を前にしてワイワイ言っていました。時刻は9時15分、yamanekoも装備を整え、ストレッチをしてからスタートです。


 Kashmir 3D

 今日のルートは、金剛登山口バス停から千早本道というメインの参道を登って金剛山山頂へ。なお、金剛山という名のピークはなく、山頂部にある葛木岳、湧出岳、大日岳の三峰からなる群峰となっています。下山は、南東に延びる尾根を歩き、伏見峠まで下ったら右手に折れ、伏見林道を下りていきます。ゴールはロープウェイ前バス停です。ざっくり言うと、登りは尾根道、下りは谷道ということになります。

 登山口

 歩き始めはとりあえず来た道を戻る形で坂道を下っていきます。300mほど歩いて橋のたもとを右折。角には面白そうな豆腐屋がありました。ここを川沿いに登っていきます。



 急な坂をしばらく行くと高城茶屋に突き当たって、道は左右に。ここも右折です。(左折すると黒栂谷道経由で登頂できます。)



 時刻はもう9時半を回っていますが、スギ林には朝のクリアな空気に満たされています。あー気持ちいい。

 フタリシズカ

 フタリシズカが咲いています。「咲く」と聞いて思い浮かべるような形状ではありませんが、白いつぶつぶが花。花弁も萼もなく、白いのは雄しべの花糸に当たります(驚)。3個の雄しべは内側に丸まって、これらが中央にある子房を包むようになっています。花糸の先端にはちゃんと葯もあるのですが、巻き込まれていて見えません。



 急な坂道が続きます。脇の小さな流れからググッ、ググッとタゴガエルの声。結構な声量です。そんなに大きな体でもないのに疲れないのかな。子孫を残すためのアピールだとするとそうも言ってられないか。

 ここを右手へ

 やがて右手に急斜面を登る山道が現れました。稜線への近道で、地図を見ると稜線上にある千早城跡と千早神社との間に出るようです。yamanekoは迷わずそちらへ。



 結構な斜度ですが雰囲気の良い小径なので苦になりません。

 ショウジョウバカマ

 おっ、これはショウジョウバカマ。でももう花は終わっていますね。残念。

 コハウチカエデ

 見上げるとコハウチワカエデの葉がサワサワと揺れています。ああ、気持ちがリセットされていくような気になります。これぞリラクゼーション。



  あっという間に稜線に出ました。まずは右手の千早城跡の方に行ってみましょう。

 千早城跡

 金剛山と言えば、楠木正成。地元河内の出身で、南朝方の忠臣として鎌倉幕府倒幕に貢献した武家です。幕府の軍勢と戦火を交えたここ千早城やその前衛の赤坂城は、楠木正成の名を諸国に轟かせることになった舞台です。
 城跡は広場になっていて、この先は急傾斜の長い階段で、さっきのバス停近くに降りていけるようです。というより、金剛山へのメインルートは、ここまでyamanekoが歩いてきた道ではなく、階段でここに登ってきて千早本道に入るというものなのです。



  広場には使われなくなって久しい(と思われる)木造の建物がいくつかありましたが、そのうちの一つにこんな看板が。もともと売店だったのかもしれません。それにしても時代を感じさせるストレートなコピー。いや、一周回っていい感じかも。

 千早神社

  折り返して、今度は千早神社に向かいます。もともとはこの付近の尾根一帯が千早城で、神社はその本丸に造られたものなのだとか。さっきの広場は前面の曲輪(くるわ)の一つということでしょう。
 この千早神社、どうやら今日は祭礼のようで、飾り付けもされ、氏子とおぼしき人達が集まっていました。yamanekoはいつものとおり世界平和を祈願しておきました。



  神社の右手から延びる山道に入ります。いったん少し下ったところで先ほどまで歩いていた谷道を左から合わせ、そこから本格的な上りの山道になります。

 モチツツジ

 これはモチツヅジですね。全体に軟毛が生えてるのが特徴。もう花期は終わりかけのようです。

 マルバウツギ

  次に現れたのはマルバウツギです。yamanekoの好きな花。



 千早本道は最もポピュラーなルート。山上にある寺社の表参道という位置づけでしょう。迷いようもありません。

 ダンコウバイ

 この特徴的な形の葉はダンコウバイのもの。頭上を覆って陽射しを遮っています。そうやって自らは陽を浴びて、秋に見事な黄葉をとなるでしょう。



  歩き始めて40分が経過。しばし休憩+水分補給です。

 ???

 うーむ、これは?アオイ系の葉のようでもあるし…(斑の入り方が反転してるんだよなあ)。なんだろう。



 道はひたすら上りです。一歩一歩、ゆっくりと。

 五合目

 10時15分、5合目まで登ってきました。汗はかきますが湿度が低いせいか、あまり不快感はありません。



  これは5合目にあった石像。こういうの、石材店の店先によくありますね。でもなんでウルトラマンとバルタン星人なんだろう。

 ミヤマカタバミ

  これはミヤマカタバミの葉ですね。花期は3月から4月。葉にはよく出会いますが花にはあまり出会ったことはありません。花の時期にあまり高山に登らないということかもしれませんが。最近では一昨年5月に尾瀬の鳩待峠近くで見た記憶があります(こちら)。



  標高が上がってくるにつれ、スギ、ヒノキの植林地から落葉広葉樹の森に変わってきました。いい雰囲気です。

 ブナ

  登山道が新道と旧道に分かれるところがあり、ここは右手の新道へ。コースガイドによると新道の方では新緑のブナが楽しめるのだとか。しばらく行くとこんな立派なブナが次々と出てきました。

 南西方向

 緑のシャワーを浴びながらゆっくりと登っていきます。
 しばらく行くと眺望が。ひさびさ、というか千早本道を登り始めて初めての眺望ではないでしょうか。方角としては南西方向。和泉山地の山並みでしょう。

 ウリハダカエデ

 おや、オヒョウの葉か?と一瞬思いましたが、これはウリハダカエデですね。この葉も秋の紅葉が見事です。

 ウワバミソウ

 ウワバミソウ。ウワバミとは漢字では「蟒蛇」と書き、大きなヘビのこと。大蛇が出そうな湿り気のある薄暗いところに生えるからだそうです。そんな植物は他にもいっぱいあるでしょうに。山菜としても重宝されているそうですが、yamanekoは食べたことがありません。



 そうこうしているうちに明るい世界が…。



 時刻は10時55分、どうやら山頂部に出たようです。ちなみに写真右手のボードは、登山回数別に人の名前が書かれているもの。この金剛山に100回以上登ると会員になれるのだそうで、500回以上とか1000回以上とかのランキングがされていました。なんでも1万回を超えた人もいるそうです。そうなるともう人生=金剛山登山みたいなものでしょうね。登山にはいろんな動機があっていいと思います、うん。



 金剛山の山頂部は比較的平坦な地形になっていました。この先を左手に行くと国見城趾、右手に行くと転法輪寺のようです。この辺りは登山者や参拝者が休憩するスペースでしょうか。



 こんな感じで休憩所があったりするので、子供連れでも安心です。確か軽食もとれたような(薄い記憶)。
 ここは左手に折れて国見城趾に行ってみましょう。



 この木立の向こうが国見城跡のようです。

 国見城跡

 おっ、たくさんの人がいますね。なんか眺めが良さそうです。吹き上がる風が気持ちいい。昼食にはまだ早いし、ここ国見城跡で小休止としましょう。(続きは後編で