生田緑地 〜多摩丘陵の夏・8月〜


 

【川崎市 多摩区 平成20年8月31日(日)】
 
 今日で8月も終わり。あっという間に夏が過ぎていきました。でも「残暑」がどっかりと居座っていて、まだまだ暑い日が続いています。
 残暑の谷地。ヒグラシの声。子供の頃の遠い記憶がよみがえってくるようですが、あの頃と同じような風景を見ることができるでしょうか。

 尾根筋から谷地へ

 ドリーム号を駐車場に停めて、尾根筋から谷地の方へ下りていきます。緑のアーケードをくぐって。

 ヤブムラサキ

 ヤブムラサキの葉裏には若い実が。短い毛に覆われていますが、やがてこれがツルツルになり、それとともにあの宝石のような紫色に変化していきます。いつも思うんですよね。ヤブムラサキの実を美しいままずっと保存することができたならって。

 池の中は

 この夏、この辺りの降水量は例年に比してかなり多めとなっています。集中豪雨的な雨が多かったせいでしょうか。でもここの池の水位は思ったより低かったです。やっぱりドッと降って一気に流れ去っていったのでしょう。谷地の周囲の斜面に浸透する量は少なかったのかもしれません。

 ノダケ?

 ノダケかな。たぶん。蕾の部分がぷっくりと膨らんでいます。

 カラスウリ

 カラスウリの果実もまだまだ緑色。これから初冬にかけてゆっくりと赤くなっていきます。それにしてもランナーの巻きつく様子をみると、植物にも意志があると思えてなりません。人間の脳が一瞬で判断することを植物は数日から数ヶ月、ときには数年かけて考えて行動しているのかもしれませんね。

 サンショウ

 小粒でピリリと辛いサンショウの実です。このサンショウ、じつはミカン科。甘味と酸味のミカンと辛味のサンショウが同じ仲間だとは。意外な感じがします。

 ハンノキの林

 渓畔のハンノキ林。いい雰囲気です。

 ヤブラン

 ヤブランが薄紫の花を付けていました。みていると涼しそうですが、この花が咲く頃は暑いんですよね。

 秋の準備も着々と

 イロハモミジを葉裏から透かして見てみました。今はまだ葉の本来の働きを一生懸命にしている時期。光と水を使って二酸化炭素を固定し、糖類を合成する。そして、その過程で生まれた酸素を放出しています(こっちの方は光は要りません。)。そう、光合成です。その化学工場は葉の裏側にあるのです。生産した糖類は葉柄の師管を通って体全体に運ばれていきますが、やがて秋も深まると葉柄のつけ根に離層という壁ができ、糖類はそこでせき止められ葉の中にどんどん溜まっていきます。その後葉の中でどんなことが起こるのかは、こちら

 サトイモ)

 サトイモの葉がずいぶん立派になってきました。高さ80センチ程度にまで育っています。(ちょっと高いところから撮っているので、小さく見えますが。)

 オンブバッタ(♂)

 シソの葉のうえに小さなバッタ。おそらくオンブバッタの雄でしょう。こんな目立つところにいると鳥に食われてしまうぞ。

 ジュズダマ

 ジュズダマは鳩麦茶でお馴染みのハトムギの野生種。見た目もよく似ています。

 若い実り

 稲穂が垂れ始めています。ここで田植えが行われたのは6月半ば。今月初め頃には出穂の時期を迎え、そろそろ籾に実が入り始めている頃でしょう。

 用心棒

 その水田を見守っているのがこちらの御仁。これからが活躍の本番です。

 定点写真

 いつもの定点写真の場所。去りゆく夏の空が印象的だったので、露出を絞って撮ってみました。相対的に手前の野山が暗く写ってしまいますが、人間の目には空も野山も明るく鮮やかに見えるので、やっぱり人間の目ってすごいと思います。実際には網膜には写真と同じように映っていても、脳で補正して双方鮮やかな景色として認識するのだと思いますが。

 まだ木陰が恋しい

 谷地ので口が近づいてきました。急にセミの声が大きくなったような気がします。

 コブシ

 ゴツゴツしたコブシの果実が裂け、中の朱い種子がのぞいています。これからあちこちが裂け始め、中の種子がこぼれ落ちそうになるのですが、面白いことに種子と果実は糸のようなもので繋がっていて、種子がはずれてもその糸でぶらぶらしているのです。

 アブラゼミ

 命を震わせて鳴くアブラゼミ。まるで夏を引き止めるかのように。

 コバギボウシ

 戸隠不動の参道にやってきました。植栽ですがコバギボウシの花が涼しそうに揺れていました。

 ミズキ(果実)

 ミズキの果実も熟し始めています。いかにも鳥に食べてもらいたそうに、葉よりも上に突き出すようにして実を付けていますね。

 カイガラタケ

 クヌギの切り株に生えているカイガラタケ。日本中で普通に見られるお馴染みのキノコです。この切り株も何十年かかけて土に帰っていくのでしょう。キノコはその手助けをするのです。

 枡形山展望台へ

 この階段を登れば枡形山。山といっても小高い丘で、山頂は普通の公園のようになっています。

 展望台

 枡形山の上にある展望台です。久しぶりに上がってみようと思います。

 北側の展望

 展望台の上は360度の眺め(当たり前か)。上の写真はほぼ北方向で、左右に横切る多摩川の向こうは荻窪とか吉祥寺とか、そっち方面です。

 新宿高層ビル街

 北東の方向に新宿の高層ビル街が見えました。直線距離で約15q。肉眼でもよく見えます。なにしろこのビル街は50q離れた高尾山や、70q離れた筑波山からも肉眼で見えますから、その視認性は抜群です。それとともにその間に山などの遮蔽物がないというのも驚きです。

 高積雲

 日本を含む地球の中緯度帯には基本的に四季が存在します。これは地球の自転軸が公転面に対して一定の傾きを維持していることにより起こる現象で、太陽からの熱を最も多く受ける夏至と最も少ない冬至との間のその熱の変動で大気と水とが循環し、それが植物や動物の命を育み、四季のさまざまな表情となって地球を彩るのです。
 今、季節は夏から秋へ、ゆっくりと移ろいつつあります。見上げると高積雲が秋の空を予感させていますが、慌ただしい日常ではこんな空の微妙な移り変わりを気に留める余裕もなく、せかせかと過ごしがち。時には足を止めて地球が織りなす彩りを感じてみたいと思います。せっかく四季のあるところに生まれたのですから。
 

  多摩丘陵と生田緑地