箱根湿生花園 ~初夏の花満載~


 

【神奈川県 箱根町 平成21年5月31日(日)】
 
 うぅ…、温泉だ。温泉に浸かってリフレッシュだ。ほんでもって美味いもんでも喰ってパワーを付けなければ、乗り切れそうにない。
 ということで、箱根へ。本当は前日から泊まりがけで来たかったのですが、結局土曜日は朝帰宅して丸一日寝て、気がついたら夜だったので、また寝てしまったのです。
 
                       
 
 朝9時過ぎに東京を出発。梅雨入り前ではあるものの、東京の今日の予報は雨。でも、まだ降ってはいません。箱根は山なので既に降っているかもしれませんが。
 山手通りから首都高3号線に入り、そのまま東名高速へ。今日は特に渋滞もなく、スイスイと流れています。しかも高速を西に向かうほど空が明るくなってきているではありませんか。いいぞ、いいぞ。

 箱根湿生花園

 11時過ぎ、御殿場経由で箱根仙石原に到着。せっかく箱根に来たので、温泉に入る前にお馴染みの湿生花園に行ってみることにしました。この季節に訪れるのは初めてです。湿度が高く日射しもギラギラとしていて、いかにも紫外線が強そうです。
 湿生花園の入口には「ヒマラヤの青いケシが見頃」とありました。さて、どんな花なのか。楽しみです。他にもいろんな花に出会えるでしょう。

 コウリンタンポポ

 いきなりヨーロッパ原産の外来種ですが、あまり見かけないものなので、カシャっと。濃い朱色が鮮やかですね。北海道を中心に寒い地域に帰化しているそうです。

 ヒマラヤの青いケシ

 さっそくありました、青いケシ。原産地はヒマラヤの他中国の雲南省だそうです。写真の花はどちらかというと薄青といった色合いですが、標高が低いところでは色が薄いとも聞きました。

 ヒツジグサ

 未の刻にはまだちょっと間がありますが、ヒツジグサは綺麗に咲いていました。

 クサタチバナ

 ガガイモ科のクサタチバナです。涼しそうな花ですね。

 湿生花園

 東京では降っているでしょうか。ここ箱根はこんな感じです。
 ここは、2万8千年前の噴火により早川がせき止められてできた「仙石原湖」があった場所。それがその後乾燥化していき、今から5千年前には大きな湿原だったのだそうです。そして今から3千年前の噴火で湿原の中程がせき止められ現在の芦ノ湖ができた後、下流側は水位がだんだん下がっていって、湿原は現在のようなごく小さな範囲まで縮小してしまったということです。
 湿原の水は台ヶ岳からの湧き水と年間3千ミリ以上降る雨に頼っているのだとか。暑い夏と晴天が続く冬場には乾燥化しやすいのだそうです。

 クリンソウ

 水辺を彩るクリンソウ。ちょうど1年前、長野の入笠山にクリンソウを見に行ったときはまだ花茎すら伸びてない状態でしたが、これは標高の差でしょうね。ここの標高が約650m、入笠山は1955mです。

 チョウジソウ

 紫紺の花冠を風に揺らすチョウジソウ。いつ見てもこの花と初めて出会ったときの感動がよみがえります。
 花冠の基部は筒状になっていてその内側には出口に向かって逆向きに細かい毛がびっしりと生えています。これは中に入った虫がなかなか外に出られないようにして、受粉をより確実なものにしようという仕組みなのだそうです。

 アサザ

 ちょっと距離があったのでこれ以上大きくは写せませんでしたが、アサザです。

 カザグルマ

 木陰にはカザグルマの大輪の花。直径15センチくらいはありました。野生では盗掘で数が少なくなっているそうです。

 イブキトラノオ

 こちらはイブキトラノオ。吾妻山(広島県)を思い出すなあ。

 センジュガンピ

 ナデシコ科の中で一人クールなやつ。日光の千手ガ浜で発見されたから「センジュ」で、「ガンピ」は中国原産の岩菲(がんぴ)に花が似ているからだとか。でもガンピの花はこんなので、とても似ているとは思えないのですが、植物の場合、同じ名前でありながら中国と日本とでは別のものを指すというのはよくあることなので、これもその類なのかもしれません。

 ヒメシャガ

 シャガというよりアヤメに近い雰囲気のヒメシャガ。背丈が低く可愛らしい印象です。石灰岩地を好むそうです。

 イワギリソウ

 西日本にしか分布しないイワギリソウが何故かここに。気候風土が違うのによく生育しているものです。イワギリソウといえば島根県出雲市にある立久恵峡。ちょうど今頃咲いているでしょうね。岩壁一面に。 

 シライトソウ

 このシライトソウも広島周辺の里山でよく見かけました。広島大学のある東広島市の鏡山とか、あと安芸太田町のこことか。

 ヤマオダマキ

 替わってこちらは広島周辺ではあまり見かけなかったヤマオダマキ。自分が気がつかなかっただけでしょうか。

 ヒメサユリ

 ササユリが西日本を代表するユリなら、ヒメサユリは東日本のユリ。ササユリよりも小ぶりでおとなしい感じです。

 エゾルリソウ

 かと思えばこんな北国育ちの花も。エゾルリソウは大雪山系を中心とした北海道中部に分布する花。暑い中ご苦労様です。

 シコタンソウ

 こちらのシコタンソウは、千島、サハリン、北海道から中部山岳地帯にかけて分布している花だそうです。白い花弁にちりばめられた黄色と赤の斑点がカラフルですね。

 マルバシモツケ

 このマルバシモツケもシコタンソウと似たような地域に生育している高山植物です。どうりであまり見かけない顔だと思った。

 クロユリ

 寒い地方の花が続きます。クロユリは本州では中部地方や東北地方の山地に行かなければ出会えない花。元々の基準標本はカナダ、カムチャッカだそうです。この花弁の色、虫たちにはどういうふうに見えるのでしょうか。人間様の目にはかなりインパクトが強いです。

 ヤナギトラノオ

 ヤナギトラノオの花はなんだかもしゃもしゃしていますが、よく見てみると花冠が6つに裂けた小さな花が集まってできています。もしゃもしゃの原因はその花冠から長く伸びた雄しべ。ルーペで見ると楽しいです。このヤナギトラノオも寒い地方の湿原に咲く花です。

 トキソウ

 湿原といえばこれ、トキソウです。野生のランの中でも特に容姿端麗な方ですね。

 ハンカイソウ

 深く切れ込んだ粗い鋸歯をもつ大型の葉。人の背丈ほどにもなるその豪壮な姿が、古代中国の武将「樊噲(はんかい)」を彷彿とさせるということで名が付いたとか。後に漢の祖となる劉邦を「鴻門の会」の大ピンチから救った故事が高校の漢文の教科書などでは有名です。
 中国といえば、悠久の台地。数年前にNHKで約半年にわたって放送していた「関口知宏の中国鉄道大紀行」のDVDを先日観たのですが、その大地のスケールにあらためて心を揺さぶられました。茫洋とした大平原あり、奇岩連なる深山の渓谷あり、標高5千メートルの高地から亜熱帯の森林まで、そのいずれもが気が遠くなるほど広大なのです。そしてその中に、千年一日のごとく変わらずにそこに暮らしている人々がいて。この大地の覇権を争って興亡を繰り返した歴史の数々もつい先日のことのような、画面に映し出される大河の畔に劉邦の軍勢が駐留していてもそれほどの違和感がないような、中国4千年の歴史も一瞬の間のことのように感じさせる、そんな時間軸をもっているような大地なのです。DVDを見終わった後、ため息が出ました。

 夏は来ぬ

 梅雨入り前の青空です。園をぐるっと回り終えると、時計の針は1時半を過ぎていました。どうりでお腹が空いているはずです。そろそろお昼の場所を探しに行くでー!。

 ロア

 小涌谷にある、ステーキが美味いと噂の「ロア」。各種グルメ番組でもたびたび紹介されているようです。噂に違わず、美味かったー。
 で、この後、「てのゆ」という日帰り温泉でゆったり。このての施設にありがちなザワザワとした雰囲気がなく、静かな露天風呂を楽しむことができました。極楽、極楽。これでまた1週間、がんばれるかも。