堂所山 〜奥高尾縦走路で花粉浴(後編)〜


 

 (後編)

【東京都 八王子市 令和6年3月22日(金)】
 
 奥高尾縦走路上にある堂所山への野山歩き。後編です。(前編はこちら
 

 Kashmir3D

 京王バスの終点にある小仏バス停を10時45分に出発。そこから谷を遡り、小仏峠に出て奥高尾縦走路に入りました。そして12時40分、堂所山までのちょうど中間地点にある景信山までやってきました。yamanekoはあれこれ探しながらスローペースで歩いているのでこの時間ですが、普通の人ならもっと早く着いているはずです。

 茶屋

 景信山には縦走路を歩く人にとって人気の茶屋があります。この日は平日だったので営業していませんでしたが、yamanekoも何回かきのこ汁とか食べたことがあます。



 茶屋の奥には大展望が広がっています。さっそく行ってみましょう。



 どどーんとこの眺め。写真の画角は真北から南東までで、関東平野のほぼ全体が見えていることになります。(写真にマウスオンで地名表示) この日本最大の平野の上では約4千万人が暮らしているのだそう。なんと日本の全人口の3分の1です。そんなに集まっていて大丈夫か?と、漠然とした不安が…。

 昼食

 とりあえずは昼食です。シンプルにカップラーメンのみ。その麺をすすりながら、自分もこの平野の上で暮らしているうちの一人なんだよな、とあらためて認識したのでした。



 景信山での休憩は食事タイムを含めても20分ほど。さっさと堂所山に向かいました。



 アズマネザサの中の道を下っていきます。日陰は肌寒い感じです。休憩して体温が下がったのかもしれません。



 と思うと、頭上が開けた明るいところもあったりします。



 道は緩やかなアップダウンを繰り返して延びています。この奥高尾縦走路は多くのハイカーが歩くので道もよく整備されています。道幅が広めなのは防火帯の役割もあるのかも。
 奥高尾縦走路は、高尾山(599m)から北西方向に延びる稜線の道で、終点はあきる野市と檜原村の境界に位置する臼杵山(842m)とされています。縦走路内の最高地点は醍醐丸(867m)です。中でも高尾山から陣馬山までは特に人気が高く、とある調査では、2023年に登頂回数が多かった山として高尾山が全国1位、城山が同3位、景信山が同7位、陣馬山が同10位と、ベスト10の山が4つも並んでいます。高尾山から遠くなるにつれ順位が下がってくるのが、高尾山を起点にいくつかある途中のエスケープルートで下山するという登山者の行動パターンをよく表しています。



 ルート上には写真のような分岐が何箇所もあります。これは小さなピークを避ける巻道の分岐です。yamanekoはとりあえず往きは本来のルートを、帰りに巻道を歩くことにしました。

 大岳山遠望

 登山道の左右は木立が続いていて基本的に眺望は木立越しに楽しむしかありません。写真はここから15km離れたところにある大岳山(1266m)。肩を怒らせたような特徴的な姿の山です。



 1時35分、堂所山の手前までやってきました。ここで縦走路を離れ、右手の急斜面を登っていきます。ピークは約150m先にあるはずです。

 最後の試練

 植林されたヒノキの根が縦横に這う山肌を登っていきます。なかなかの斜度で、途中で何回も立ち止まり、息を整えました。

 アケボノシュスラン

 そんな中、足下に緑色も鮮やかな植物を見つけました。これはアケボノシュスランでは。常緑とのことで、この姿で越冬するようです。開花時期は秋。花は淡い鴇色をしていて、それを曙の空の色に例えた名前だそうです。



 急登を登りきると分岐が。ここは右手へ。左手は陣馬山方面から来る道です。



 すぐに小さく開けたピークが現れました。堂所山の山頂です。

 堂所山山頂

 1時40分、堂所山の山頂に到着しました。スタートから2時間55分、景信山からは1時間5分かかったことになります。特に景信山からは単調な道だったので、案外早かったことに少し驚きました。

 縦走路の稜線

 山頂からの眺望もやはり木立越し。西側には陣馬山(写真左端)と、和田峠を挟んで醍醐丸が見えていました。奥高尾縦走路が通る稜線です。和田峠の奥に見えている薄い山影は大菩薩嶺だと思います。



 山頂にベンチがありましたが、他の登山者は誰もいませんでした。縦走路上のメジャーな山々に隠れた地味な山ですからね。



 ベンチの前にどっかで見たことのある石柱が。「御◯局三角□」(◯は米に升、□は里と占の下に列火)と彫られていて、新字体では「御料局三角点」となります。これは2年半前に登った長野県の鷲ヶ峰の山頂で出会ったものと同じもの。当時もこれが何なのか興味が湧いて調べたことがあります(こちら

 下山開始

 午後の風がササ原を揺らし、ポツンと一人感が高まります。冬眠から早々に目覚めたクマ君と出くわすのは怖いので、スマホでQueenの曲を結構な音量で流していましたが、かなり場違いな状況になっていたと思います(圏外でラジコ使えず)。他の人がやってきたら何事かと思ったでしょう。ということで、山頂では熱いコーヒーを一杯飲んで、下山にかかりました。



 復路では巻道を積極的に活用。小さなピークでも地味にしんどいですから。

 シロミノマンリョウ

 巻道の分岐にシロミノマンリョウがありました。本来マンリョウの実は赤色ですが、園芸種として白い実のものが作られています。これは誰かが植えたものか、それとも鳥が種子を運んできたものか。マンリョウは森の中にぽつんと生えていることも結構あって、鳥による種子の散布によるものも多いと考えられています。



 巻道は直ぐに本来の道と合流します。何回かこんな巻道を歩きました。

 フェイク巻道

 ところが中には巻道と勘違いしそうな分岐も。写真の右に向かう道は巻道ではなく、谷に向かって下っていく林業のための道のよう。間違う人が多いのか、注意喚起の看板が立てられていました。「道迷い多発中!!」と。

 マンリョウと
 シロミノマンリョウ

 普通の赤い実のマンリョウとシロミノマンリョウが一本の樹木の根元を囲むように生えていました。さすがにこれは誰かが植えたものっぽいです。でも何の目的で?



 長い階段が現れました。そろそろ疲れが出てきて、こういうのが節々にこたえます。



 少し陽射しが斜めになってきたようです。そういえば一昨日は春分の日。昼の長さと夜の長さが同じになる日でした。まだ3月ですがこれからは昼の方が長いと思うとなんだか変な感じがします。

 分岐

 ここは景信山の山頂をパスする巻道への分岐。ここから山頂までの標高差30mを登ってまた下りるのはしんどいので、迷わず巻道へ。



 山肌をしばらくトラバースすると、景信山と小仏峠を結ぶ道に出ました。往きで通った道です。

 モミジイチゴ

 モミジイチゴの蕾がほころび始めていました。もうじき春本番ですね。

 圏央道

 圏央道の橋梁が見えました。橋の北詰(写真では左側)が中央道とクロスする八王子JCTになっています。恒常的な渋滞ポイントです。圏央道の工事の際、高尾山を貫くトンネルを通すのは地下水脈や生態系に影響を及ぼすと指摘されていましたが、開通後の検証はされたのでしょうか。 



 さあ、小仏峠に向かって下っていきましょう。怪我は下りで起こりやすいので要注意です。

 小仏峠

 2時55分、小仏峠まで戻ってきました。この時間、人影はありませんでした。yamanekoもここは素通りです。



 峠からは日陰となった谷筋を下ります。それにしてもこんなに急な坂だったっけ。



 山腹を下ることしばし、谷筋まで下りてきました。この辺りが小仏川の最上流部に当たります。



 やがて山道が終わり舗装路となりました。ここまでの急な下りで右足の親指の付け根部分に痛みが出始めました。いつもだいたい膝が痛むかこの部分が痛むかのどっちかです。

 小仏バス停

 3時30分、無事に小仏バス停に到着。既にバスが発車を待っていました。こんな山間の路線なのに、市街地を走る大型サイズのバスです(休日にはこれが2台待機しています。)。このバスは3時40分発。これを逃すと1時間待ちなので、ちょうどいいタイミングで下山することができました。
 そして整理体操を終えた頃に発車のアナウンス。yamaneko以外には4、5人がバスに乗り込み、JR高尾駅を目指しました。
 
 今日は花粉覚悟の野山歩き。しっかりと花粉を浴びたので、帰宅後が怖いです。