荒船山 〜山上の巨大艦船(後編)〜


 

 (後編)

【群馬県 下仁田町 長野県 佐久市 平成25年11月2日(土)】
 
 山上の巨大艦船「荒船山」での山歩き。後編です。(前編はこちら


Kashmir 3D

 内山峠を出発して稜線を歩き、艫岩に登ってからは荒船山の平坦な山頂部を経塚山に向かって歩いてきました。さっき山頂部の水源を過ぎたところです。

 葉を落とした木々の中、ところどころに紅葉も残っています。この時期は森の隅々にまで陽が差し込んで、山歩きをしていても明るく楽しいですね。さっきから朝日を正面に浴びて身体がポカポカと暖まり、快適です。

 見事な黄葉。そのまま縮小して盆栽にでもできたら高く売れ…、いや野にあるからこその風情でしょうね。

 葉を拾ってみると、なんともいい色と形をしています。

 分岐

 10時5分、星尾峠に向かう道との分岐点にやって来ました。右に折れると星尾峠。ここは直進します。

 急登

 するとすぐに急な上りになり、10分ほどで山頂に。ここまでしばらく楽ちんだったので最後に試練を与えられた格好です。

 経塚山山頂

 10時15分、ここが経塚山山頂です。三角点のあるピークには祠があって、「荒船山山頂」という標識(私設)もありました。 山頂は木立に囲まれて眺望はあまりよくありませんでした。

 兜岩山

 それでもこの季節は木々が葉を落としているので、西にある兜岩山の姿もなんとか見ることができました。妙義山をはじめとしてこの辺りには奇妙な形をした山が多くありますよね。荒船山もそのうちの一つですが。

 支尾根

 山頂に腰を下ろせるのは詰めても10人程度。yamanekoは支尾根に腰を下ろし早めの昼食をとりました。黄緑色のザックは今日が初お目見えです。

 ドラ弁

 お楽しみの十勝夕張弁当。上里SAで買ったドラ弁です。甘く柔らかく煮た十勝和牛の牛肉が前面を覆い尽くしていて、肉をめくるとその煮汁が染みたご飯が顔を出します。おかずはいずれも夕張地方の食材で作られていて、肉と一緒に煮たネギとシイタケ、ヤマイモの酢の物と花豆の煮物。あと夕張メロンの皮の漬け物もアクセントになっています。

 下山開始

 山頂で20分くらい休んでから、帰路に。一人だとどうしてもペースが速くなってしまいがちです。
 星尾峠との分岐までは急な坂道。滑らないように注意して。

 分岐から先は再び平坦な道に。登山道脇で苔に覆われた切り株が少しずつ分解され土に戻りつつありました。

 今度は背中に陽を受けつつ歩きます。気持ち良くて鼻唄のひとつも出ようというもの。

 ウリハダカエデ

 この真紅の落ち葉はウリハダカエデ。春、若葉を芽吹いて以来、雨や風に耐えて一生懸命に働いてきて、最後に綺麗に装えるご褒美が待っていたというところでしょうか。お疲れ様でした。

 カラマツ

 見上げるとカラマツの黄葉。カラマツは「落葉松」とも書き、マツなのに冬には落葉します。寒さに強く、寒冷地ではスギやヒノキの植林地に防風防寒対策として混植されていたりします。

 ツルウメモドキ

 これはツルウメモドキの実ですね。殻が3つに割れて朱色の果肉(?)が見えています。リースの材料として人気ですね。

 アオハダ

 こちらはアオハダの実。瑞々しげな赤い実が枝いっぱいに付いていました。食べたことはないんですがクマの好物だそうです。

 11時15分、艫岩まで戻ってきました。大きなミズナラがお出迎えです。それにしても、このすぐ先に断崖があるとは思えない風景ですね。

 みなさん結構ギリのところに立ってらっしゃいますね。艫岩は周囲の岩石が風化浸食によって崩れていき、硬い岩質のところが残されてできたもの。きっと何万年もかけて今の姿になったんでしょうね。とはいえ、地殻の大きな輪廻転生の中ではいずれ浸食からは逃れられずに、この崖の縁もやがては少しずつ後退していくんでしょうけど。

 往きのときよりさらに崖っぷちに近づいて撮った写真。崖の縁から1.5m。yamanekoとしてはこれ以上は無理です。遥か下に朝通って来た国道が見えています。正面の物見山の右肩辺りにある草原状のところが神津牧場だと思います。5年前の夏に行ったことがあります(こちら)。物見山の左にある鉤型の山頂は凧ノ峰。写真左手前から延びるノコギリの歯のような稜線には内山峠への山道が続いています。その奥、遙か遠くに見える山並みは松本の東にある美ヶ原でしょうか。

 ウヒャー!足元の藪の向こうは奈落です。鳥はこんな風景を見ているんでしょうね。

 しばらく絶壁で眺望を楽しんだ後、再びササ原の道を行きます。

 そして山頂部の端から崖のような山肌を急降下して行きます。

 これは急な岩肌を下って小さな踊り場のようなところから振り返ったところ。かなりの角度で見上げて撮っています。まだこれから登って行く人達も多いです。

 そしてその踊り場からこれから向かう方を見たところ。岩肌の鎖場の向こうに木橋が続いています。気を引き締めて歩かなければ。岩が濡れていて緊張します。

 秋が深まりつつある山の中。梢越しに見る景色も趣ありです。

 山の紅葉はいいですなぁ。ときおり足を止めてしみじみ見入ります。

 こんな梯子でもちゃんと後ろ向きに降りて行かなければ。足を滑らせて負うちょっとしたケガでも下山が困難になったりしますから。

 

 11時40分、一杯水まで戻ってきました。ここで艫岩直下の急な傾斜は終わり、再び長閑な山道になります。やれやれです。

 いい雰囲気の山道ですね。日が高くなって朝とは違う雰囲気。自然は一時として同じ表情は見せません。

 鋏岩

 11時55分、鋏岩まで戻ってきました。往きのときは日陰になっていて霊験あらたかな様子を感じさせましたが。

 これはコハウチワカエデでしょうか。それともオオイタヤメイゲツか。

 いやー、気持ちいい。いつまでも歩いていたい感じです。

 眩しいくらいの黄葉。自ら発光しているようです。

 足元をみつめ、頭上を仰ぎ、ゆっくりと歩きながら、しみじみこの一年を振り返りたくなるような山道です。

 向かいの山影がしだいに近づいてきました。内山峠ももうすぐです。

 登山口

 12時25分、内山峠の登山口に戻ってきました。駐車場に入りきらなかった車が路上にもたくさん停まっていて、yamanekoがスタートした後にも登山客が結構来ていたことが分かります。

 神津牧場

 さて、時間がまだ早いので、近くにある神津牧場に行ってみることに。内山峠から15分ほどのところにある山上に広がる牧場です。ウシ好きの妻のために何かお土産を買って帰ろうと。

 神津牧場は明治20年に日本で初めて作られた西洋式牧場だそうです。こんな山奥にありながら観光客も少なくありません。綺麗な牧場です。研修生のような若いスタッフも多くて、場内にはどこか活気があります。

 人なつっこいウシ君。額を撫でてやると嬉しそうにしていました。一頭一頭が毛並みも良く、素人が言うのもなんですが、日頃から手をかけて育てられている感じがします。

 艫岩(荒船山)

 高津牧場では売店でマドレーヌとウシのぬいぐるみを買い求めました。妻へのお土産です。
 そして牧場からの帰り道に艫岩を見上げる絶好のポイントがありました。大きな船の船尾。さながら巨大な航空母艦です。断崖の高さは約200m。これからも周囲の浸食が進むとさらにその高さを増すのかもしれませんね。
 
 帰りの関越道はほとんど渋滞もなく、3時半には都心に着きました。秋晴れの山歩きを楽しんだ一日でしたが、なんと都心では雨模様だったとのこと。なんか不思議な感じです。