赤城自然園 〜緑輝く山麓へ(後編)〜


 

 (後編)

【群馬県 渋川市 平成24年5月5日(土)】
 
 赤城自然園での野山歩き、後編です。(前編はこちら

 

 自然生態園の明るい林床を散策します。ここはカタクリの林をと呼ばれているところ。既に花のピークは終わっているようです。

 

 フタバアオイ

 ご存じ「葵の御紋」。そのモデルとなったとされるのが、このフタバアオイです。花はお椀のような形をしていますが、これは筒状になった萼片が靴下を脱いだときのように途中から裏返った状態になっているもの。どんな必然性でこうなったのか教えてほしいです。
 毎年、5月15日に行われる京都の葵祭は、正式には「賀茂祭」ですが、行列の人々の装束を双葉葵で飾ることから「葵祭」と呼ばれているのだそうです。

 昆虫館

 一般開放エリアの最奥部にある昆虫館までやって来ました。時刻はまだ11時過ぎですが、ベンチに陣取ってちょっと早めの昼食にすることにしました。

 十勝夕張弁当

 往きの関越道上里SAで仕入れた十勝夕張弁当です。駅弁愛好家の小林しのぶさん監修の弁当だそうです。NEXCOが高速道路で販売しているのは駅弁に対して「どら弁」(ドライブ弁当)。普段、昼食のコンビニ弁当率が極めて高いyamanekoにとって、衝撃的に美味い弁でした。弁当も「料理」なんだ、ということを改めて認識した次第です。

 ヤマシャクヤク

 食事中のベンチからの眺めが上の写真。弁当の味も更に何割かアップしそうです。

 リュウキンカ

 昼食後は昆虫館の展示を見てから、再び散策です。今度は園の入口に向かって戻って行きます。
 昆虫館の前にある池(トンボ池というそうです。)の畔にリュウキンカが咲いていました。太陽に向かってグンと伸びています。

 

 ウスバサイシン

 名前のとおり葉が薄くしなっとした感じのウスバサイシン。長い茎がフキみたいで美味そうです。

 

 ミズスマシの池。向こうの新緑まで見通せて明るいです。木々の葉が繁りはじめると鬱蒼とした感じになるでそしょう。今だけの風景ですね。

 カタクリ

 数少ないカタクリの残り花。花弁が光を透かしています。

 ヒトリシズカ

 カタクリの周りにはヒトリシズカ。姫を守護する武士集団のようです。

 ハナイカダ

 ちょっと分かりにくいですが、これはハナイカダですね。葉の主脈上に小さな蕾が見えます。葉自体もまだ展開の途中のようです。

 ハシリドコロ

 ハシリドコロの花。有毒であることでつとに有名。特に根が毒性が強いそうです。ただ「毒にも薬にもならぬ」の逆で、毒のあるものは薬にもなるようで、ハシリドコロの根からは胃痛薬の有効成分が抽出されるのだそうです。

 フデリンドウ

 花を閉じた姿が筆の穂先に似ることからこの名をもらったフデリンドウ。丈は5pくらいとずいぶんと可愛い花です。うっかりすると踏みつけてしまいそうなほど控えめで、初夏の頃にはいつの間にか姿を見せなくなります。

 センボンヤリ

 上から見たら白い花、でも下からのぞき込むと薄紫の花なのがセンボンヤリです。また、春と秋とではその姿を大きく変えるのもこの花の特徴。秋にはグーンと花茎を伸ばして、先端に花弁を開かない閉鎖花を付けるのです(その様子が「千本槍」の名の元。)。色といい姿といい、二面性(いわゆる「ギャップ」ってやつか?)を持った花なんですね。

 

 空も地面も木々自身もすべてが輝いているかのような風景。こんなキラキラした季節は一年のうちでもこの時期だけでしょう。 

 ムラサキケマン

 ムラサキケマン。この花も虫の媒介で受粉しているのでしょうか。だとしたらいったいどんな虫が。考えると不思議です。

 

 イロハモミジ。紅葉の季節だけでなく新緑のモミジも素晴らしいです。この場合は漢字で書くと「紅葉」ではなく「緑葉」とすべきでしょうね。
 ここまで書いてふと考えました。同じものを指す言葉が季節によって異なるっていうのもいいじゃないかと。自然の細かな変化を愛しむ、いかにも日本人的な、クール・ジャパン的な感じがします。で、既にそんな言葉が何かあるかと…。例えば、春の彼岸に作るあんころ餅を「ぼたもち」、秋に作るものを「おはぎ」、ってこれは言葉自体が違うか。同じ読みに異なる字を当てるというパターンはなかなか見当たりませんね。

 

 園内に幾筋も流れる小さな流れ。聞こえてくる水の音さえも輝いているよう。

 

 ぐるっと回って管理棟の近くまで戻ってきました。シャクナゲの花って豪奢ですが嫌みがないですね。去年、天城山瑞牆山で出会ったシャクナゲも良かったです。

 yamaneko

 午後2時、大きな満足感と共に赤城自然園の散策を終えました。本当にちょっとした楽園に遊んだ気分でした。夏のレンゲショウマの季節にも再訪したいですね。
 
 さて、まだたっぷりと時間があります。これから夕方にかけて都心に向かう関越道は大渋滞ですから、夜までこの辺りで遊んで帰ることにしました。

 

 山麓に広がる広大な野菜畑。その向こうにはギザギザの榛名連山(左)と小野小山、子持山(右)です。この雄大な風景に思わず車から下りて眺めてしまいました(腰に手を当てて。)。
 ひとしきり眺めて、ウーン…と伸びをして、再び車へ。ここから赤城山麓を10数q水平移動し、同じように山麓斜面に位置する群馬フラワーパークに向かうことにしました。

 

 さすがはGW、もう3時を回っていますが、これから入園しようという車の列が延々と延びていました。
 上の写真は園内から撮った赤城山。といっても写真を撮っているこの場所が既に赤城山の山体の一部なので、赤城山の上部だけが山であるかのように写ってしまいます。ちなみに正面のドーム建築は、イベントなどが行われるフラワーホールという建物です。

 

 クマガイソウ  オキナグサ

 その名のとおり花にあふれたフラワーパークでしたが、その中で心にとまった花を2種。
 クマガイソウは漏斗のような葉の上にぼってりとした袋状の花を付ける面白い造形の花です。それぞれの形に意味があるんでしょうね。オキナグサは花が散った後にできる実(種子)からふさふさの毛が伸び、これが翁の髭のようだということのようです。yamanekoの故郷の山、三瓶山の草原にも咲いています。
 
 フラワーパークを後にしたのは午後5時過ぎ。今日は夜間も開園し、花火大会なども行われるとのことで、夕方になっても次から次へとお客さんがやってきていました(5時からは入園無料ということもあって。)。
 まだ、高速道路は渋滞している時間帯です。そこで、ここからまた渋川まで戻って温泉にでも浸かって、夕食をとって、更に一休みしてから帰途につくくらいでちょうど良いだろうと考え、日帰り温泉施設のスカイテルメ渋川に向かいました。UFOみたいな外観を持つ建物。2階にある展望風呂からは榛名山を正面に見ることができました。女湯からは赤城山のパノラマを望めたそうです。
 結局スカイテルメ渋川では午後9時頃までゴロゴロして、もうそろそろいいかということで東京に向かうことにしました。11時くらいには着くでしょう。
 
 ところが関越道に上がってナビの到着予定時刻を見てびっくり。なんと午前2時到着と表示しているではないですか。調べてみると複数箇所で事故渋滞とのこと。この渋滞を抜けるのにトータル5時間かかるというのです。ガックリです。やむなく最寄りのSAに入って仮眠。目が覚めたら12時でしたが、それでもSAは普通に賑わっていました。渋滞はほぼ解消との情報に再び走り出すと、途中ノロノロ箇所はあったもののさすがにびっちり止まるような渋滞はありませんでした。でも家に着いたのは午前2時。策を弄せず素直にフラワーパークから直帰すれば良かったのではないかとの妻の冷静な指摘が徒労感を加速させます。”まあそうだけどな。” 一人缶ビールを開け、赤城自然園の風景を思い起しながら心身を癒したのでした。