赤城自然園 〜緑輝く山麓へ(前編)〜


 

 (前編)

【群馬県 渋川市 平成24年5月5日(土)】
 
 今年の大型連休もあとわずかですが、これまでは今ひとつ天気がぱっとしませんでした。というより、ここ2、3日は豪雨といってもいいくらい。沖縄の梅雨入りも例年より早かったというし、日本近海の海水温が高くなるのが1箇月くらい早まっているのではないでしょうか。変な感じです。
 それでも、ようやく帳尻を合わせるかのように天気が良くなったので、満を持して今日は野山歩きに出かけようと思います。場所は群馬県。赤城山の西麓にある「赤城自然園」というところ。ネットでシラネアオイが咲いているとの情報を得たので、急に思い立ったわけです。(赤城自然園公式HP
 
                       
 
 午前5時起床。前日の予報どおり朝からきれいに晴れ渡っています。6時過ぎに自宅を出発して、新目白通りから練馬で関越自動車道へ。思ったほど車の量は多くなく、渋滞もなしにスイスイと走ることができました。途中、上里PAでの休憩を挟んでも赤城ICを下りたのは8時過ぎ。ほぼ2時間の所要なので、GWにしては上出来な走りでしょう。
 ICを下りてからは田舎の農道のような道を10分ほど走って赤城自然園に到着しました。この辺りは赤城山の裾野のうちでもかなり上の方。園の標高は600m〜700mで、麓に向かっての広大な斜面上に位置しています。

 管理棟

 午前9時、開園の時間になりました。森の中の管理棟に向かいます。この赤城自然園はクレディセゾンが運営していて、受付でセゾンカードを示すと千円の入園料が半額になるという特典があります。
 「園」と名が付いていますが、基本的には自然の森で、「セゾンガーデン」、「四季の森」、「自然生態園」の3エリアのうち、「セゾンガーデン」にのみ庭園的要素がみてとれる程度です。なにしろこれら3エリアの広さは約18万坪(東京ドーム12個分!)。非公開エリアを加えるとその2倍の広さに及びます。でも、実際には各エリアとも自然の景観を壊さないようにスタッフによってきちんと手入れがされているのだと思います。

 
 

 入っていきなりのシャクナゲ。満開です。降り注ぐ光がクリアで、花も葉も眩しく輝いています。

 セゾンガーデンへ

 マツの疎林の中をセゾンガーデンに向かいます。

 ヤマブキソウ

 ケシの仲間のヤマブキソウ。本家(?)バラ科のヤマブキより可憐です。

 

 こんな原っぱをのんびりと歩きます。心がスーっと軽くなるよう。

 キバナノクリンザクラ

 これはキバナノクリンザクラという花。園芸種だと思います。他にもレモンイエローのイカリソウや紅色のバイカイカリソウなど、見たこともないような花が植栽されていました。

 芽吹き

 四季の森エリアにやって来ました。木々が一斉に芽吹きはじめています。

 榛名連山

 ちょっとした展望台からの西の眺め。特徴のある稜線は榛名連山です。ぐぐっと首を持ち上げているのは相馬山。ちょうど1年前に登りました。

 シラネアオイ

 おっとお目当てのシラネアオイです。雪の多い地方や高山に分布する花。なかなかお目にかかることはありません。

 

 林床を埋め尽くすシラネアオイ。もっともこれは野生の状態ではなく管理育成されているもの。丈も野生のものの倍ほどもあるのは栄養状態が良いからでしょうか。山歩きをしていてこんな群落に出会ったら感嘆の声を上げてしまうでしょうね。それとも絶句してしまうか。

 

 紫色の花弁に見える部分は萼片。花(黄色い部分)の中央に柱頭が2個見えます。

 ヒトリシズカ

 ヒトリシズカの雄しべが発光しています。その下の葉を照らしているかのよう。

 

 見上げるとこんな空間。5月の青い空です。

 ルイヨウボタン

 ルイヨウボタンも花弁に見える部分は萼片で、中心にある部分が花です。漢字で書くと「類葉牡丹」。葉が牡丹の葉に似ているからこの名が付いたのだそうです。yamanekoの好きな花のうちの一つです。

 チゴユリ

 このチゴユリは花弁がヨレヨレと波打っていないので、何となくきりっとした印象を受けますね。

 オオバキスミレ

 オオバキスミレ。図鑑には雪国を代表するスミレとあります。

 ハルトラノオ

 派手な花に目が奪われがちですが、葉陰に咲くこんな小さなハルトラノオにもきちんと目を向けていきたい。早春にトラノオに似た花を咲かせるのでこの名が付けられたのだとか。別名のイロハソウは、これも春一番に咲くことを「いろは」の最初の3文字を充てて表したものとのことです。

 ナナフシ橋

 ナナフシ橋を渡ると自然生態園エリアです。

 ヤマシャクヤク

 なんとヤマシャクヤク。近くにいたスタッフに聞いたところ、昨日まではほとんど咲いていなかったとか。今日の晴天で一斉に開きはじめたのだそうです。どうやら今日は一年のうちでも特別な日に訪れたようです。

 

 開けた林床がヤマシャクヤクの白い花で彩られています。林の奥の方までずっと広がっています。

 

 「調和」という言葉が似合う花。工芸品のような美しさを感じます。

 

 ツバメオモト

 木の根元に寄り添うように咲いているのはツバメオモトです。清楚な花ですね。これが夏にはトロピカルなコバルトブルーの実を付けるのですから、その印象の変わり具合には驚かされます。いわゆる「ギャップ」というやつですか。心惹かれる花です。
 
 次から次へと繰り出される春の花たち。後編でもこの勢いは止まりません。