安達太良山 〜燃え立つ紅葉再び(前編)〜


 

 (前編)

【福島県 二本松市 平成24年10月21日(日)】

 紅葉の季節になりましたね。都心ではまだまだですが、夕方のニュースなどで東北や甲信越の紅葉情報が流れるようになりました。紅葉は日本人の心。yamanekoも大好きなので、こういう知らせに触れるとどうしても出かけたくなります。
 
                       
 
 ということで、今回向かうのは福島県の安達太良山。ちょうど5年前の10月21日。曜日も同じ日曜日に、紅葉を求めて登った山です。そのときはすばらしい秋晴れの中、安達太良山のみが雲をかぶっていて、結局悪天候により山頂に到達しないまま帰ってきたという、残念な結果となったのです。(→そのときの様子
 そういった意味では今回はリベンジ。北海道を低気圧が通過するものの関東から東北にかけては晴天の予報なので、今回こそは輝くような紅葉と山頂からの眺望を楽しんできたいと思います。

 安達太良山

 午前4時、まだ暗い都心を発ちました。首都高中央環状線の高松ランプから高速に上がり、川口線から東北道へ。渋滞もなく埼玉、群馬、栃木と走り続けます。佐野を過ぎたあたりで明るくなり始め、そのタイミングで妻と運転を交替。眠気が襲ってきたので助手席で仮眠をとりました。
 最後のSAとなる安達太良SAで再びハンドルを握り、あとは二本松ICで高速を下りて安達太良山に向かいます。上の写真は二本松IC手前からみた安達太良山。…ん? 山頂にに雲がかかってないか? うーむ、若干嫌な予感が。

 駐車場

 7時30分、安達太良山の中腹、あだたら高原スキー場の駐車場に到着しました。もうたくさんの車がきています。そしてものすごい風。安達太良山の前衛、薬師岳の向こうから信じられないようなスピードで雲が流れてきます。当然のごとくロープウエイは運行中止。5年前とまったく同じ状況です。何なんだ、いったい。

 Kashmir 3D

 今日はロープウエイで薬師岳まで上がり、そこから安達太良山の山頂へ。復路はくろがね小屋に下りて勢至平を通って帰ってるルート(上図の黄→赤のルート)を予定していたのですが、ロープウエイが動いていないので初めから予定変更を余儀なくされました。5年前と同じように巻道を通って薬師岳に登るしかないかと考えていたところ、妻がロープウエイ乗り場のおじさんから仕入れてきた情報によると、そのルートは風が強くて大変なので谷あいのくろがね小屋への道の方がいいとのこと。小屋まで行って、そこで天候を見ながら山頂に登れるか考えればよいというアドバイスです。なるほど、と納得してそのルート(赤のルート往復)を行くことにしました。

 登山開始

 そんなこんなで8時40分にスタート。写真だけ見ると穏やかなんですがね。風がゴーゴー言っています。

 リンドウ

 リンドウが見送ってくれています。どこまで行けるか分からないけど、とりあえず行ってきまーす。

 

 ほどなく道は林の中へ。青い空をバックに輝く紅葉。普通なら心がウキウキしてくるんでしょうが、5年前の記憶が「そのうち雲の中に入って色のない世界になるぞ。」と水を差してきます。

 

 紅葉のベストシーズンなので多くの登山者が歩いています。どうです、気持ちいいじゃないですか。吹いてくる風にも木の葉の色が着いているようです。ストレスまみれの日常も今朝見た夢の中のことに思えてきます。

 烏川

 しばらく行くと川を渡りました。烏川といい、安達太良山の山頂直下から流れ出している川です。その渓谷沿いには写真のような紅葉が覆い被さっていました。川沿いにはカエデの類が多いので鮮やかな紅葉を楽しむことができます。

 

 烏川を渡ると、道は本格的に上っていきます。

 ヤマウルシ

 いやー、いいですな。ヤマウルシのジャパンレッド。でも、敏感体質の人はこの木の下を通っただけでかぶれたりするので厄介です。樹皮にウルシオールなどのかぶれを起こす物質が含まれているのだそうです。

 

 快調に登っていきます。道幅が広いのは、このずっと先にあるくろがね小屋へ物資を運ぶためだと思います。この道は馬車道と呼ばれていて、勾配を緩めるためにジグザグに続いています。このジグザグをショートカットする登山道もあって、こっちはなかなかの急傾斜になっています。

 薬師岳

 9時30分、登りはじめて1時間弱。開けた展望の向こうに薬師岳が見えました。予定では駐車場からあそこまでロープウエイで上がるはずだったのに。わずか5分で。
 そして、その薬師岳にのしかかるようにどんよりとした雲が。薬師岳の標高が1322mなので、そのすぐ上くらいから雲の中に入っているようです。

 コハウチワカエデ

 小休止のついでに道ばたに落ちていたカエデの葉を拾って並べてみました。今日は花がほとんどないので、こんなもので楽しんでます。

 ヤマウルシ

 ヤマウルシの落ち葉。長さは50pほどで、これで1枚の葉です。羽状複葉ってやつですね。色が鮮やかすぎて商店街の街灯に掛けられている造花(造葉?)みたいですね。

 

 少し傾斜が緩くなってきました。勢至平に近づいてきたのかもしれません。この辺りにはまだ日射しがあります。

 

 麓には二本松の市街が。その奥には阿武隈山地、そしてそれを超えると太平洋が広がっています。その沿岸、ちょうどこの方角に福島第一原発があるはずです。直線距離で70q。リアルな現実の世界としてそこにあるんですね。

 勢至平

 雲がずいぶん近くなってきました。この辺りは勢至平の先端部。傾斜はかなり緩くなってきています。

 分岐

 ん? なんか人が溜まっていますね。ザックを下ろして休憩している人も。どうやら分岐点のようです。

 

 「くろがね小屋」と示している方が進行方向。「奥岳登山口」というのがやって来た方角です。そして奥に向けて「峰の辻経由 安達太良山」。このルートはくろがね小屋を経由して山頂に向かうよりも近道です。
 小休止をしつつ検討した結果、ここから峰の辻に向かうことにしました。峰の辻はその名のとおり登山道がクロスする地点。くろがね小屋経由で山頂に向かう道もやや大回りして峰の辻に合流します。そこから山頂までは急傾斜ではあるもののわずかな距離です。

 勢至平

 10時15分、分岐を左折。勢至平を突っ切る形で峰の辻を目指します。辺りはガスって来ましたが紅葉は見事。これで晴れていたらどんなに鮮やかなことか。勢至平の紅葉はツツジ類が中心だそうです。

 

 勢至平の「勢至」とはおそらく勢至菩薩のことだと思われます。きっとこの地に勢至菩薩にまつわる由来があるんでしょうね。
 勢至菩薩にはあまり馴染みがないですが、調べてみると、阿弥陀三尊(阿弥陀如来を中心とした三体の仏像)の右脇侍で、阿弥陀如来の「智慧」の化身なのだそうです。ちなみに、左脇侍は観音菩薩で、阿弥陀如来の「慈悲」の化身なのだとか。

 

 さっきまでの馬車道とは違って、やや荒れ気味の道を登っていきます。そしていつの間にか霧雨が。どうやら雲の中に入ったようです。気温も下がってきました。
 さあ、この先、山頂までたどり着けるのか。(続きは後編で。)