2025年5月4日(日) その1
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原っぱで普通に見かけるチガヤ。群がって生えるので「千の茅」という意で付けられた名前だそう。今、ちょうど開花の時期を迎えています。白っぽいのは開花前の状態です。
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開花状態の花序をアップで。細い米粒のようなものは葯。風に揺られて花粉を飛ばします。写真では分かりにくいですが柱頭も出ています。それで花粉をキャッチ。
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ササバギンランです。葉が笹の葉のように長く、花より上に出るのが特徴。丈が30cmくらいになるのでよく目立ちます。

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ユリノキの若葉が展開しています。ちょっと変わった形で、和服の袢纏に似ていることからハンテンボクとも呼ばれます。あと、花の形からチューリップツリーとも。多くの名前を持つということは、人間に親しまれてきた樹木だということですね。
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野草見本園へ。これはキツネアザミ。ひょろっと背が高いです。頭花はこれで開花状態で、葉に刺はありません。アザミに似ていてもアザミとは違うということで、人を化かすキツネの名前を冠しているとのことです。アザミとは同じキク科ですが、属が違います。

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ホタルカズラの花期はそろそろ終わりに近づいています。こんなにビビットな色合いですが、野生種です。山野でこの花に出会うと、涼しい風に吹かれたような感じがします。

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これはコデマリですね。おそらく植栽されたものだと思います。花序がもこもこしていて、ついぽんぽんと触りたくなります。この丸まった花序を小さな手毬に見立てたんでしょうね。
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トチノキが満開です。塔のように立ち上がる花序は、開花するとほどなく傷んでくるので、毎年観察のチャンスを逃さないようにしています。
トチノキは公園樹や街路樹としてよく見かけますが、本来は渓畔林を構成する樹木です。深い渓谷で出会うトチノキの花には、自分が自然の懐に入り込んでいることを知らされます。

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トチノキは雌雄同株ですが、花序のうちのほとんどは雄花で、根元の方に両性花が少し付きます。花冠から伸びだしているのは雄しべで、先端に褐色の葯が付いているのが分かります。両性花にはこれに加えて雌しべが伸びだしていて、一方、雄花の雌しべは退化しているのだそうです。

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ニシキギに花が付いていました。マユミの花に似ています。枝には薄い板のような翼が付いていて、この翼ができないものをコマユミといい、ニシキギの一品種とされているようです。ちなみにニシキギの名前は錦のように鮮やかな紅葉の様子から。

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樹上から涼やかな鳴き声が。キビタキです。夏鳥としてはるばる東南アジアから渡って来る鳥で、胸元の鮮やかなオレンジ色が特徴です。この森でひと夏を過ごすのか。

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2025年5月4日(日) その2

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大振りでごつい印象のあるカラスザンショウの葉ですが、若葉のときにはこんなにしなやかで瑞々しいです。成長すると葉(奇数羽状複葉)の大きさは30cmから80cmにもなり、一つの小葉ですら15cmくらいあります。

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キンラン。すっと伸びた花茎の先端に金の粒を飾り付けたような姿が人気の野生ランです。そのせいか盗掘されることも。咲いているその場所がその花にとっての最適地。持ち帰ってもほぼ定着することはありません。
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エビネも人気の野生ランです。業者さんが伐採した大量の間伐材がここの自生地の上に放置されていましたが、ボランティア団体で撤去して回復させました。潰されて葉が傷んだものが多かったですが、これで何とか自生地を存続させることができたと思います。
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この朱色の実はツルグミのもの。名前のとおりツル性のグミで、春に実を付けます。花は前年の秋に開花します。

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サワフタギも花の時期は短いです。1週間前に見に来たときはまだほとんど咲いていませんでしたが、今日見たところ花期は終わりかけていました。ざっと見てきれいな花序はこの写真のものくらい。
去年同様に今年も花数は多いようでしたが、それでも去年はほとんど結実しなかったので、今年もどうなるかは分かりません。
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薄暗い林床にひっそりと咲いていたギンラン。丈は15cmほどと小さく、ササバギンランとは対照的にか弱い印象です。

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ハンショウヅルの花。中世の鉄兜のような形のものは萼で、厚みがあり硬いです。この形が火の見櫓の半鐘に似ているということで「半鐘蔓」です。花弁はありません。

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ヤマハンノキの若葉。成長するとゴワゴワした感じになりますが、今はまだしなやかです。その点、樹木も人間と同じです。

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ミズキの花序です。今がちょうど花期真っ只中。小さなな白い花が集まっていて、この花が散る時期には粉雪が舞うみたいな感じになります。

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巨大なタランチュラみたいなこれはシュロの雄花序。一つのかたまりでラグビーボールくらいの大きさがあります。ただ、1個の花は7、8mmほどしかありません。

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尾根道に植栽されているベニバナニシキウツギ。本来、花が白色から桃色に変化するから「二色空木」なのですが、最初から桃色なので、この名前で良いのか、とどうでもいい疑問が。

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2025年5月7日(水)

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カキノキの枝にラグビーボールが。大きさは2cmほどですが。これはイラガの繭。触ると固いです。ただ、幼虫は触ってはいけません。軽く触れただけで激痛が走り、大事になります。

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アカシデの枝の切り口にキクラゲのようなものが付いていました。大きさはテニスボールほどです。画像検索してみるとこれはハナビラニカワタケというキクラゲの仲間だそう。漢字では「花弁膠茸」で、ゼラチン質のプリっとした触感から膠の名が付いたとのことです。今日は明け方まで雨が降っていたのでこの姿ですが、乾燥すると縮んで固くなるのだそうです。
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パークセンターの花壇に咲くシラン。特段手入れはされていないようで、自然に近い状態で咲いていました。シランは園芸用として広く栽培されていて、野生のものに出会うのは稀だそうです。

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野草見本園にやって来ました。これはタツナミソウ。花序の様子が立浪(葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」のやつ)に似ているからのネーミングだそう。多摩丘陵にはよく似るオカタツナミソウも多くあり、こちらは葉の形がやや三角形に近いところが相違点の一つになっています。

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うかうかしているうちにホオノキの花期が過ぎようとしていました。葉も大きければ花も大きく、花冠の直径は30cmほどにもなり存在感抜群です。ただ、散るときは無残にバラバラになり、この木の下はとっ散らかった感じになります。

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yamanekoのお気に入り、マルバウツギです。花冠の中央にあるオレンジ色の部分は花盤で、これがこの花の愛らしさを引き立てています。

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南広場の草地で咲いていたのはムラサキサギゴケ。花冠の色には多少の変化があり、赤紫色のものもあるようです。この形で白色のものは別種のサギゴケ。

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2025年5月13日(火)

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スイカズラ。花は2個ペアで付き、開花後数日で白色から薄黄色に変わります。上唇は幅広で先端が4つに裂けていて、下唇は細い線形。大口を開けた形ですね。

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これはイボタノキの花です。花序としてはまだ咲き始めです。イボタとは「イボ取り」という意味。この木に寄生する虫(イボタロウムシ)が分泌する蝋がイボ取り薬として使われたことによるのだそう。他にも家具のつや出しに用いられていたそうです。

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コゴメウツギの花をアップで。小米という名のとおり花は小さく、7mmほどの大きさです。でもこうやっていくつも集まっているとそれなりに華やかですね。

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サンショウに果実ができていました。まだ青いです。

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アオハダの花。雌雄異株で、これは雌花です。雄しべはありますが退化しているのだそうです。逆に柱頭は太いですね。

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これはハコネウツギ。花は初め白く、後に紅色になります。名前に反して箱根には自生していないとされていましたが、近年少数の自生が見つかったそうです。ふーん。そもそも最初の命名はなんなのか。

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エゴノキが咲き始めました。ただ、花期は短く、パッと咲いてサッと散ってしまいます。木の下が真っ白になるほど一気に散るのです。

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早春一番に花を付けていたウグイスカグラ。この時期には瑞々しい果実を付けています。子供の頃、野遊びの途中でよく食べていました。
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フサザクラに若い果実ができていました。フライ返しのような平べったい形をしています。成熟するとしゃもじのように先端が丸くなります。

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ニガナ。ほとんど雑草扱いですが、じっくり見ると十分美しいです。通常、頭花の舌状花は5個ですが、写真のものはいずれも6、7個あります。これが8個から10個だとハナニガナなんですが。両者の中間的なものなのかも。
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尾根道のど真ん中で見かけたノイバラ。この公園に通い始めて10年以上が経ちますが、初めて認識したような気がします。大きな株にたくさんの花を付けていました。

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キハダの開花が始まりました。雌雄異株で、これは雄花序です。一斉に咲くのではなく花序の上部から咲いていくんですね。知らなかった。

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マルバアオダモの果実です。平べったくボートのオールみたいな形をしています。あの繊細な花からどうやったらこんな形の実ができるのか。不思議です。

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2025年5月14日(水)

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生け垣を突き抜けて顔を出していたナワシロイチゴ。見てのとおり満開ですが、開いているのは萼片だけで桃色の花弁は閉じたままです。これがナワシロイチゴの特徴。
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アカシデの若い果穂。ひらひらしているものは果苞と呼ばれるもので、その根元に小さな果実が付いています。
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花火のような頭花、ハルジオンです。よく似るヒメジョオンとの相違点はいくつかありますが、まず咲く時期が1か月ほど違います。
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マンテマ。ナデシコの仲間で、ヨーロッパ原産の帰化植物です。高さは50cmほど。マンテマよ、遠い異国で何を思う。

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ときに巨木にもなるクスノキですが、花はごく小さいです。花冠の大きさは6mmほど。象牙細工のような質感ですが、これも顔を近づけてよく観察することにより得られる気づきです。

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尾根道沿いに植栽されているガマズミ。今がちょうど満開です。雄しべ、飛び出しすぎですね。

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2025年5月15日(木)

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野草見本園のフタリシズカ。白い粒々が花です。花穂が1個のヒトリシズカに対して付けられた名前だそうですが、フタリシズカの花穂は必ずしも2個ではなく1〜5個と様々です。
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こちらも野草見本園のノアザミ。アザミにはよく似たものが多いので見分けが難しいです。ただ、春から初夏にかけて咲くのはこのノアザミだけ。紛れがないですね。

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2025年5月21日(水) その1

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一月前には開花で楽しませてくれたヤマザクラ。この時期には果実が成熟しつつあります。黄緑→黄→橙→赤と色が変化し、最終的に黒になると完熟です。ヤマザクラは寿命が長いそうで、大木もよく見かけます。

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テイカカズラはツル性の植物で、他の樹木などに巻きついて上って行きます。その枝先から垂れ下がるように花を付けるのが特徴的です。花は高杯形で花弁がスクリューのように捩れています。
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サイハイランが咲き始めました。この場所は年明けにササ刈りをして植生保護をした場所。その効果が現れたようで、株数も増えたように思います。

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公園入口脇のウメに実がたわわに付いていました。この木は確か白梅だったと思いますが、梅干し用の実を採る樹種ではないのでちょっと小ぶりです。ウメが実るということは梅雨も近いですね。
ウメは中国原産で、サクラと同様に日本の原風景として各地で見かけますが、サクラとは違いそのほとんどは栽培品で、野生化しているものは九州の一部にあるだけなのだそうです。

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ウメの隣にはカキノキがあります。今まさに開花の時期を迎え、釣鐘型で肉厚の花を下向きに付けていました。これは雄花で、雌花より小ぶり。雌花には大きな萼片(柿のヘタになる部分)があるので分かりやすいです。

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大きなグミの実。アーモンドチョコくらいの大きさがあります。これはダイオウグミ。トウグミのうち大きな果実を付ける株を選抜して作った品種だそうです。別名をビックリグミとも。味は渋みも少なくそこそこ美味しいそうですが、果実として流通していないのは「そこそこ」だからでしょうか。(yamanekoは店頭でみたことありません。)

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野草見本園へ。フタマタイチゲが咲いていました。日本では北海道の沿岸部に分布する亜寒帯の植物だそうです。どういうご縁で多摩丘陵へ。でも、ここで毎年花を咲かせているので、まんざら居心地が悪いわけでもないようです。

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2025年5月21日(水) その2

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ヤマボウシが咲く季節になりました。と言っても白い花弁のようなものは花ではなく総苞片で、本当の花はその中心部に球形に密集して付いています。なので顔を近づけてよーく見てみないと開花しているかまだなのか分かりません。

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これはリョウブの若い花序。夏になると白い花を総状に付けます。ただ、花序の根元側から順に咲いていくのでこの花穂全体が開花する状況にはなりません。とはいえ花の少ない時期に咲くので印象に残りやすい花です。
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九反甫谷戸へ。オカタツナミソウが咲いていました。同じ時期に咲くタツナミソウとはよく似ていますが、葉がより三角形に近いとか、花序がやや幅広に展開するといった違いがあります。

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今年はミツバウツギの花を見逃しました。残念。既に若い実ができています。
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一方、ウツギの開花はこれから。名前にウツギと付く植物は多くありますが、必ずしもこの本家ウツギと近縁ということではありません。さっきのミツバウツギもウツギ科ではなくミツバウツギ科。科が違うということはかなり離れていると言っていいのではないでしょうか。

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南広場のヤマホタルブクロ。いつに間にか初夏の花が咲くようになってきました。よく似るホタルブクロとは萼片の切れ込んだ部分の形状で見分けます。そこがぷくっと膨らんでいるのがヤマホタルブクロ、ベロ状に反り返っているのがホタルブクロです。

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こちらがホタルブクロ。ヤマホタルブクロのすぐ隣に咲いていました。花の色は両者の見分けにはならないようです。これだけ近いと交雑種のようなものは生まれないのでしょうか。

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2025年5月28日(水)
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清楚な美しさのユウゲショウ。「夕化粧」の名も優美です。それもそのはず、観賞用として明治時代に移入したもので、原産は熱帯アメリカだとか。竹久夢二の絵に出てきそうな花です。

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トキワハゼ。ムラサキサギゴケを小型にしたような姿をしています。春から晩秋にかけて次々に咲いていく、花期の長い花です。

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こんな見た目でもシダの仲間。マメヅタです。シダは、自らが消費する養分を作る栄養葉と胞子を付ける胞子葉を持ちますが、この丸いのは栄養葉の方。この株には胞子葉は見られませんでした。胞子葉は箆(へら)のように細長い形をしています。

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内裏池の畔に生えていたケキツネノボタン。花弁のように見える萼片は金属光沢のあるレモンイエローをしてます。横にある機雷のようなものは果実。正確には果実が球状に集まったものです。

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しなった状態で高さ1mくらいになるナルコユリ。花が鳴子のように付くことから名づけられたそうです。鳴子とは田んぼなどで鳥を追い払うための道具で、絵馬のような板と竹筒を組み合わせて音が鳴るようになっているものです。

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工芸品のようなこれはヤブヘビイチゴの果実。正確には小さなブツブツが果実で、球形のものは果床。イチゴでいえばもっぱら食用とする部分に当たります。この果床に光沢があるのがヤブヘビイチゴの特徴。

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ヤブムラサキの花が咲いていました。去年は見逃したので見れて嬉しいです。蕾は軟毛に覆われていて、葉もビロードタッチです。この公園にはムラサキシキブはたくさんありますが、ヤブムラサキは少ないです。

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これはサラサウツギですね。ウツギの八重咲き品種だそうです。一般に八重咲きの場合、雄しべや雌しべが花弁状に変形して花弁がたくさんあるように見えます。サラサウツギは外側の花弁が薄紅色になるのが普通のようですが、ここのものは純白でした。

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こちらが本家のウツギ。花弁は白色ですが、雄しべの葯の色が薄黄色なので全体に昼白色の蛍光灯の下で見る白色に見えます。サラサウツギの方は昼光色での白色ですね。

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ウワミズザクラの若い果穂です。花はブラシのように密に付きますが、そのうち実を結ぶものは多くはないようです。果穂の根元側に葉が付くのがウワミズザクラの特徴。似たような果穂を持つイヌザクラにはその部分に葉はありません。

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藪の中に橙色の花が。これはタチドコロの雄花序です。漢字では「立野老」。「野老」は海老に対する言葉だそうで、根茎にひげ根が多い様子を老人に例えたのだそうです。野にある老人ということ。じゃあ海老は海の老人か。確かに長いひげはありますが。

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垣根に植栽されているキンシバイ。江戸時代中期に中国から移入されたものだそうです。これがオトギリソウの仲間だということに「へぇ」です。

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