2024年 9月 小山内裏公園MAP
 
 
2024年9月4日(水)
 
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 9月になりました。4日前に見たときにはまだ開花していなかったナンバンギセルが開花状態になっていました。やや俯いて咲く様子から古名を「思い草」といい、万葉集にも「道のべの尾花が下の思草 今更になどものか思はむ」という歌があるそうです。道端のススキの元に咲く思ひ草のように今更何を思い悩みましょうかという意味で、愛しい人を陰ながら思い読まれたものとされています。日本人らしい感性ですね。また、当時の人も観察眼は鋭く、ススキに寄生して生きている植物と知られていたんですね。
 
 

A
 カラスノゴマが開花していました。変わった名前ですが、これは種子を胡麻に見立て、しかもカラスが食べるのに適した程度のもの(すなわち人間様の用に供し得ない不出来なもの)という意味。確かに種子は痩せた小さな胡麻のようです。花の中心から長く伸びているのは仮雄しべだそう。本来の雄しべは短く、その周囲を囲んで付いています。
 
 
B
 サラダボウルほどの大きさのキノコが生えていました。なかなかの存在感です。傘の部分が反りかえってお椀のようになっていて、傘の裏側は襞ではなく管孔になっています。おそらくイグチの仲間ではないでしょうか。
 
 
C
 そろそろヤブランが咲き始める季節です。名前のとおり藪でよく見かける花で、写真を撮る際には蚊とかクモの巣に邪魔されがちです。種子は黒く光沢があって花茎に連なって付き、花の時期よりも目立っています。
 
 

D
 アオハダの果実が赤く色づいていました。陽を透かして輝く葉裏とのコントラストが綺麗です。この実は落葉後にも枝に残り、その頃にはまた違った印象を与えてくれます。
 名前の由来は樹皮の内側が緑色なところから。着目点がなかなかニッチです。ちなみに園内にはキハダという樹木もあり、こちらは樹皮の内側が鮮やかな黄色です。
 
 

E
 歩いているとほのかに甘い香りが。見上げるとクズが開花していました。ファンタグレープそっくりの香りです。花序が綺麗な姿をしている時期は案外短く、すぐに痛んでしまいます。花序の先の方はまだ開花前の蕾ですが、ここをよく見るとこの蕾に擬態するウラギンシジミの幼虫がいることがあります。色といい形といいよく似ているんですよね。
 
 

F
 ホソバシュロソウ。別名をナガバシュロソウ。花は暗褐色で目立ちにくいですが、よく見るとブリキ細工の工芸品のような感じがします。背が高く茎が細いので大概倒れるように伸びています。
 
 

 
 
 
2024年9月10日(火)
 
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 暑い暑いと言いつつ自然は少しずつ秋の準備を始めています。これは植栽のコムラサキ。徐々に色づいてきていますね。
 
 

A
 前回アオハダを掲載した際に園内にキハダがあることを書きましたが、これがそのキハダ。果実は黒く秋に熟しますが、キハダは雌雄異株でこの木は雄の木のようなので、ここでは見られません。
 
 

B
 キクイモ。北アメリカ原産で、幕末の頃移入されたものだそうです。地下で太る塊茎を飼料として活用していたのだとか。似たものに塊茎が小さいイヌキクイモがありますが、地上部はそっくりで掘ってみないとなかなか区別は難しいようです。
 
 
C
 ヤブランは直射日光がギラギラしているようなところではあまり見かけません。薄紫色の花は柔らかい光の下で映えるような気がします。この花序が一斉に咲くと華やかなんでしょうが、そんなことにはなりません。
 
 
D
 鮎道にやってきました。ツルボが咲き始めていました。こちらは日向を好む植物です。別名をサンダイグサ(参内草)というそうで、これは公家が参内する際に後ろから従者が差し掛ける柄の長い傘に似ているからだとか。ただ、似ているのはその傘をたたんだところだそうです。
 
 

E
 林の縁などで見かけることの多いフジカンゾウ。あまり振り向かれることのない花だと思います。花の様子をフジに、葉の様子をカンゾウに見立てた名前だそう。
 
 

F
 アレチヌスビトハギは北アメリカ原産の帰化植物。花は付き方や大きさこそ違えフジカンゾウとよく似ています。同じマメ科ヌスビトハギ属。
 
 

G
 公園にボランティアグループが世話をしている畑。キバナコスモスが満開です。秋の空(まだ夏空?)によく映えていますね。
 
 

H
 野草見本園へ。ツリフネソウが咲き始めました。この花はモビールのように上から吊り下げられる形で付いています。ここの株の花は唇弁のシワの寄り方が強いような感じがしますが、生育環境によるものでしょうか。
 
 
I
 カリガネソウ。夏から初秋にかけて咲く花ですが、今年は花数があまり多くありませんでした。このままシーズンを終えてしまいそうです。
 
 

J
 ノコンギク。関東地方では最もポピュラーな野菊です。本来舌状花は淡い青紫色ですが、ここの株は特に薄く、デジカメではその淡い色合いを捉えきれません。
 
 

 
 
 
2024年9月11日(水)
 
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 ベニバナボロギク。頭花は細長い筒状花が集まったもので、うなだれている頭花が開花状態です。
 
 

A
 ゴンズイの果実。もっと秋が深まってから熟すようなイメージを持っていましたが、こんな暑いうちから実が熟しているんですね。ちなみに海水魚に同名のものがいますが、関係は不明だとか。
 
 

 
 
 
2024年9月17日(火)
 
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 野草見本園にタヌキマメが。ここでは初めて見るような気がします。マメ科に特徴的な蝶形花で、色は青紫色のものから赤紫色のものまであります。花の下にある毛に覆われた丸っこいものは萼にすっぽり包まれた豆果。萼の役割は花冠を支え保護することですが、花が終わったあとの果実も守るんですね。大活躍です。
 
 

A
 ノササゲかと思って写真を撮って帰りましたが、どうやらトキリマメのようでした。花はよく似ています。見分けるポイントはいくつかあり、花で見分ける場合は萼を見るのだとか。筒状の萼の先端が斜めにスパッと切れたようになっているのがノササゲ。ギザギザになって萼片を形作っているのがトキリマメだそうです。
 
 

B
 サーカスのピエロを彷彿とさせるヤマホトトギス。花被片が下向きに反り返っているのが特徴。これが反り返らず平開しているとヤマジノホトトギスということになります。
 
 

C
 園路にトチノキの実が落ちていました。落下の衝撃で果肉が割れてしまったようです。きれいに割れているということは割れるようにできているということでしょうね。固い果肉があると発芽が難しいでしょうから。
 
 

D
 アキノウナギツカミの葉。基部が鋭く切れ込んでいます。よくあるようでなかなか見かけないタイプの葉です。茎を触ると下向きに伸びた鋭い棘が 密生しています。刺さるようなことはないですがおろしがねを触ったときのようなザラザラとした感触があります。この茎を手にして鰻を掴むと 難なく掴めるという意味の名前のようです。
 
 
E
 トネアザミの頭花にヒョウモンチョウ(の仲間)が来ていました。なんとなく秋を感じさせる取り合わせです。
 
 

F
 ヤブタバコです。茎の上部から枝を四方に伸ばす姿がヘリコプターを連想させます。その枝の先の葉腋に頭花を下向きに付けます。鈴生りですね。ヤブタバコという名前は葉がタバコの葉に似ているからだそうですが、どう見ても似ているとは思えません。
 
 

G
 ナツアカネ。いわゆる赤トンボと呼ばれるトンボの一つで、アキアカネと極めてよく似ているので、なかなか現場で見分けることは困難です。なので写真に撮って帰宅後に調べることになります。ポイントは胸の部分の模様。斜めに3本ある黒い帯模様のうちの真ん中の帯が途中で切れていて、その先端が三角に尖っていればアキアカネ、水平に終わっていればナツアカネです。ミリの世界です。
 
 

H
 オトコエシの花をアップで。花は小さく可憐ですが、草丈としては1m以上あり、オミナエシに比べて全体としてがっしりとした印象を受けます。花はオミナエシと色違いですが形は同じです。
 
 

 
 
 
2024年9月18日(水)
 
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 パークセンターの軒先にシロバナのヒガンバナが咲いていました。日々の暑さは真夏のままですが、暦の上で彼岸が近づいていることを分かっているのでしょうか。
 
 

A
 ツリバナの実の熟した姿です。今年初めて出会いました。これから秋が深まっていくと特に園の東側エリアで頻繁に見かけると思います。
 
 
B
 ♪赤い〜花な〜ら曼珠沙華〜。こちらはスタンダードな赤いヒガンバナです。葉がある時期には花は咲かず、花の時期には葉がないことからハミズハナミズ(葉見ず花見ず)と呼ぶ地方もあるそうです。
 
 

 
 
 
2024年9月19日(木)
 

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 野草見本園へ。ノダケの花序です。花は暗紫色で、白く見えるのは雄しべの葯。つまり開花している状態ということですね。
 
 

A
 イボクサ。湿地に生えるツユクサの仲間で、名前とは異なり可憐な姿をしています。葉の汁を塗るとイボが取れるという言い伝えがあるそうです。
 
 

B
 ツリフネソウ。9月も中旬となり、今が花の盛りの時期。とはいえ強烈な日差しを浴びて、間違えて真夏に咲いてしまったみたいになっています。
 
 

C
 今年は花付きが良くないと言っていたカリガネソウですが、ここに来てたくさん咲き始めました。カリガネソウの花期は8月末というイメージでしたが。これも猛暑が続いたせいですかね。
 
 

 
 
 
2024年9月21日(土)
 

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 公園主催のサンクチュアリツアーで園内を散策。
 これはアキノノゲシ。花は昼間咲いて夕方にはしぼみます。背景がごちゃごちゃしていて見にくいですが、上の方に総苞に包まれた花後の姿が見られます。昨日咲いていたものかもしれません。
 
 

A
 津島谷戸で。ボントクタデの花はごく小さくわずか3mmほど。花被は淡い桃色に縁取られています。花序にびっしりと花を付けないところがまた奥ゆかしいです。
 
 

B
 パークセンター奥のビオトープに移動。これはノササゲ。4日前に見たトキリマメと萼の形状が違っているのがよく分かります。
 
 
C
 イヌコウジュ。花序は本来直立しますが、これは首を傾げていました。「イヌ」が名前に付く場合の例に漏れず、「利用価値のない香えじゅ」という名前です。香じゅ(ナギナタコウジュのこと)は漢方薬として人間様の役に立てたそうなので、香じゅに似てはいるもののこの花にはそういう利用価値がないということでしょうね。
※香じゅの「じゅ」は、草かんむりに「需」
 
 

D
 池の上。ガマの穂にショウジョウトンボが停まっていました。体はおろか顔も眼さえも真紅です。
 
 

E
 こちらはウスバキトンボ。日中はほとんど止まることなく飛び回っているとのことで、写真のように休んでいる姿は早朝や夕方に見られるものだそうです。寒さに弱く、日本に土着できないため、毎年南から世代交代をしながら北上してくるのだそうです。
 
 
F
 サンクチュアリツアー終了後、個人的に園内を散策。
 これはマヤランです。園内では9年ぶりにお目にかかりました。多年草なので翌年も同じ場所に生えるはずなんですが、これまで園内で見たマヤランが翌年同じ場所に生えているのを見たことはありません。
 
 

G
 九反甫谷戸へ。キバナアキギリの群落が花盛り状態でした。この夏、伐倒材撤去のため造園事業者の車両がこの谷戸に入り、キバナアキギリの生える場所を蹂躙していたので、今年花を付けるか心配していたのですが、しっかり生えて花を付けていました。
 
 

 
 
 
2024年9月25日(水)
 

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 ヤマホトトギス。花序の先端に細長い果実ができています。一方、オバQみたいなフォルムのものは蕾です。
 花被片の反り返りが緩く平開しているように見えるところはヤマジノホトトギスみたいでもありますが、その花被片が真っ白で紫色の斑紋が全くないので、これはヤマホトトギスだと思います。
 
 
A
 ツルボの花序。花は下から咲いていくようです。漢字では「蔓穂」と書きますが、つる性の植物ではありません。一説では穂が連なるように咲く様子を「連穂」と表し、その後「連」が「蔓」に転じたのではないかとのことです。
 
 
B
 壁面を飾るように垂れ下がるカラスウリ。こちらはつる性の植物です。 里の秋を彩る和の色合いですね。
 
 

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 ミズヒキの花をアップで。花の大きさは2、3mmほどです。4個ある花被片のうち3個が赤く1個は白いので、花が軸に連なる様子を表から見たら赤い紐に、裏から見たら白い紐に見えるということで、それを水引に例えたのだそうです。
 
 

D
 尾根道に上がる斜面にオトギリソウが咲いていました。この場所での咲き始めは7月初旬だったので、かれこれ2か月半。花期の長い花です。
 
 
E
 地味な植物のクワクサ。名前のとおりクワの仲間です。葉腋に団子のように付いているのは雄花と雌花が混じった花序。白く見えるものは突き出た雄しべです。花序全体としてはこれからが盛りといったところでしょうか。