大町自然観察園 〜下総台地の四季・12月〜
【千葉県 市川市 平成22年12月11日(土)】
12月の長田谷津にやってきました。都心では今月に入って寒い日が続くようになってきましたが、下総台地はどうでしょうか。
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駐車場から自然観察園へと続く道には明るい陽光が差し込んでいました。暑かった夏場は木々の梢が日陰を作っていましたが、日差しが恋しいこの季節にはちゃんと届くようになっています。自然はうまくできていますね。
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この小さな丘のような地形は谷地の両側に続く土手。植栽されたものでしょうが、紅葉がきれいです。南関東の平野部では紅葉の見頃は12月になってからなんです。
もみじ山へ |
自然観察園の入り口左側にある小高い丘「もみじ山」へと続く小道です。静かな冬の日。小春日和とはまさにこんな日のことをいうのでしょう。
噴水池 |
噴水池も長閑な佇まい。どこからかヒヨドリの甲高い鳴き声が聞こえてきます。
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モミジの葉を拾うとどうしてもやってしまうグラデーション遊び(こんなのとかこんなのとかも)。今回はシンプルに信号風にしてみました。
定点写真 |
今年最後の定点写真です。ここから見えるアシ原や左右の林、そして広い空までも、季節の移ろいとともに微妙な変化をしているのがよく分かりました。ここに暮らす生き物たちもそれに合わせた生活リズムを持っているんでしょうね。この一年の足取りはこちら。
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アシ原を流れる小川は冬にもかかわらず水量豊富でした。周囲の下総台地の崖線から湧き出る水を集めて流れているのです。台地の上は水はけが良いことからむしろ果樹園や畑に適していましたが、昔から谷津の中はこのように稲作に適した環境になっていたのです。
春への備え |
サクラの枝先をみると、もう来春への準備ができていました。でもこれから寒い冬を過ごさないとサクラは目覚めません。開花のためには一定の低温を経験しなければならないのです。それだからこその「サクラ咲く」です。
緑の縁取り |
紅葉したゴンズイの葉です。よく見ると緑色に縁取りがされていますが、これは葉の裏の色が縁からのぞいているんですね。きりっとした表情になっています。ちなみに紅葉する前は、葉の表面は裏の色よりさらに濃い緑色をしているので、縁の色は目立たないのです。
三角池 |
いつもカルガモが憩っている三角池。奥の林の木々が葉を落としているので明るい雰囲気になっています。
ノイバラ |
褐色のアシ原をバックに赤い実を輝かせているのはノイバラの実です。絡まるように伸びる蔓には鋭いとげがいっぱい。だからか、鳥たちに食べられることもなくいつまでも付いています。
ハンノキ |
ハンノキはやっぱり晴れた冬の日が似合います。枝先には細長い雄花が。こちらも準備OKです。
イヌコリヤナギ |
昔、枝で行李(こうり)を作ったことから名が付いたコリヤナギ。そのコリヤナギほど役に立たないという意味で頭に「イヌ」が付けられたイヌコリヤナギですが、護岸用に植栽するなどそれなりに用途はあるようです。写真の葉も黄葉が始まっていますが、実用面のほかにも黄葉が鮮やかなのがこのイヌコリヤナギの特徴でもあるのだそうです。
スイカズラ |
スイカズラが実を付けていました。花がそうであったように実も二つ並んで付いています。葉は生き生きとした緑色を保っていますね。これが別名を「忍冬」と名付けられた所以だそうです。
目の前にカツーンと何かが落ちてきました。拾い上げてみるとフジの実の鞘です。カッチカチで、こんなのがドリルのように回りながら頭の上に落ちてきたら怪我しますよ。不思議なのは、鞘自体は堅いのですが、表面は擦り切れたベルベットのような手触りになっていること。なんでだろう。
最奥部 |
長田谷津の最奥部に近づいてきました。上の写真の木立の奥に池があって、そこがどん詰まりです。
コナラ |
渋く紅葉しているコナラ。結構な大木です。もうじき一気に葉を落とすでしょうね。
キセキレイ |
奥の池の縁でキセキレイが餌を探していました。しっぽを上下に振っています。水辺を好む鳥で、渓流沿いに歩いていると先に立って道案内をしてくれたりします(単にこまめに距離をとっているだけということかも)。
秋の名残 |
静かな水面に錦絵の名残が。このまま切り取って和服の柄に使えそうです。
コサギ |
コサギの特徴は、体のサイズもさることながら、足先が鮮やかな黄色をしていること。上の写真ではぶれてしまっていますが。それにしても冷たくないのか、水の中にいて。
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イボタノキ | ムラサキシキブ |
秋から冬にかけては様々な実が姿を見せます。花の時期より見られる期間が長いので、花を見て回るよりある意味植物観察には適しているかもしれません。
ヒヨドリジョウゴ |
ヒヨドリジョウゴは赤い実なので、鳥たちに見つけられやすいようにという戦略があるかと思いきや、これを鳥が食べているところを見たことがありません。ヒヨドリが好んで食べるからその名が付いたという話にも首をかしげてしまいます。そもそも有毒だし。
初冬の午後 |
時刻は午後1時過ぎ。でも入射角の小さい日差しは早くももの寂しさを醸し出しています。静かな静かな冬の午後です。
市原市動物園 |
谷津での観察を終えて入り口近くまで戻ってきました。今回はこの場所での定点観察の最終回なので、いつもは素通りしていた動物園に入ってみることに。自然観察園はこの右脇の細い散策道(このページの一番最初の写真)をたどった先にあるのです。
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ゾウやキリンといった大型の動物はいませんでしたが、レッサーパンダやカピバラなど癒し動物が人気で、家族連れで賑わっていました。個人的にはコツメカワウソにグッときました。
1年間、長田谷津の様子を観察してきました。市川市は、沿岸部から下総台地の辺縁部まで様々な自然環境をもっています。今では東京のベッドタウンとして人口45万人を擁している市川市ですが、昔は、沿岸部には塩田、沖積低地には水田、北部の台地には畑や果樹園などが広がっていたそうです。戦後、沖積低地を中心に宅地化が進み、それとともに多様な環境に適合して暮らしていた生き物たちの様相も大きく変わってきたのだと思います。そんな中でここ長田谷津の自然環境は驚くほど豊かでした。もちろん人間の手で維持されているのであって、自然そのままではありませんが、谷津の真ん中に立って目を閉じると、昔の自然の広がりの中に身を置いているような錯覚を覚えます。これからも長く残していってほしいものです。