八海山 〜花笑みの稜線を行く(中編)〜
(中編) |
【新潟県 南魚沼市 平成24年6月24日(日)】
花たちが微笑みかけてくる八海山の稜線歩き。中編です。(前編はこちら)
Kashmir 3D |
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北側の大倉口から登ってきたルートとの合流点を過ぎ、池ノ峰との鞍部を過ぎて、再び上りになりました。まだ薬師岳までの3分の1にも達していません。
残雪 |
ルート上にはところどころに残雪が。おかげで気温の上昇が抑えられているのか、もう花の時期は終わっただろうと思っていた花がまだたくさん残っています。
イワカガミ |
景気よくたくさんの花冠を付けているイワカガミ。可憐な花です。ある程度の高い山に登らなければ出会うことのない花ですね。イワカガミはこれから先山頂部までずっと笑顔を見せてくれていました。
イワウチワ |
イワカガミと同じイワウメ科に属するイワウチワです(岩が多いな。)。この花もそこら辺で見かける花ではありません。なんともいえない清楚な感じがします。日陰を好むところもどこか愁いを帯びていて、いい感じです。イワウチワは、この先女人堂の手前辺りまで見られました。
ショウジョウバカマ |
すっくと花茎を伸ばしたショウジョウバカマ。この花は山里で見ることもあればここのように高山で見かけることもあります。早春の花というイメージがあるのは里の花を見ているからでしょうね。ここでは6月下旬が花の時期です。
歩いても歩いてもイワウチワが迎えてくれるので嬉しい限り。日を透かす花弁の色合いもいいですな。
今日出会った中で随一の美人さん。色白で端正な顔立ちをしています。
クルマバハグマ |
これはクルマバハグマでしょう。花茎の先に青紫色の蕾が顔を出し始めたところです。
ショウジョウバカマ |
このショウジョウバカマはずいぶんと背丈が低いです。でも、本来はこの姿を見て袴をはいた猩々(しょうじょう)を連想したと思われます。先ほどの長く伸びたものだと、どう考えても猿(猩々は顔の赤い猿に似た伝説上の生き物)には見えませんからね。
薬師岳 |
10時20分、いつの間にか池ノ峰を過ぎようとしていました。登山道は池ノ峰のピークを避けて頂上直下を巻くように伸びていたのです。ここまで来ると薬師岳がグンと近づいたような気がします。写真右手前に張り出した小山のようなところに三角屋根が見えます(ワイプ内に拡大)が、あれが女人堂。正確にはその跡地に立っている避難小屋です。薬師岳までの通過点なんですが、ここからだと女人堂までは壁を登るような急斜面に感じます。池ノ峰からは弧状に緩くたわんだ稜線を歩き、あの小山の直下から一気に標高差約100mを登ることになるのです。
漕池 |
弧の最も低くなっているところに漕池(こぎいけ)という池があり、その一帯が雪に埋もれていました。池の中央部がわずかに溶けかかっています。池はこんな状態でも畔の梢ではモリアオガエルが産卵を始めているようです。
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シラネアオイ |
出た!シラネアオイ。山中で出会うのは初めてです。思ってもいなかった対面に、脳内にアドレナリンが大量分泌されました。(不覚にも前をいく妻を押しのけて駆け寄ったため、その後しばらく不興を買うことになってしまいました。)
エンレイソウ |
まだエンレイソウに出会えるとは。やっぱり残雪のおかげでしょうね。
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ヒメシャガ |
イワウチワと交替するようにヒメシャガが現れ始めました。シャガは大柄で花冠も妖艶なイメージがあるのですが、このヒメシャガは、花丈はせいぜい20pほど。花冠も清楚で全体に可憐なイメージです。
北東方向 |
急な傾斜に息も荒くなります。展望が開けた場所で小休止です。
北東方向には累々と連なる越後山脈。遠い昔、修験者たちもこの風景を眺めたでしょうね。
ヤグルマソウ |
再び上りにかかります。急な山肌を覆うようにヤグルマソウが葉を広げていました。まだ若葉です。これからもっと大きくなって、色も緑色になり、中心から長い花茎を伸ばします。そういえなヤグルマソウはいつもこんな急な斜面で見かけます。
ガクウラジロヨウラク |
「萼裏白瓔珞」。ウラジロヨウラクの変種で、萼片が細長いところが相違点。北アルプス北部や関東北部、東北、北海道で見られるそうです。雪の多いところを好むみたいですね。ちなみに「瓔珞」とは、珠玉や貴金属を編み込んだ首飾りに似た仏教装飾品のことだそうです。
池ノ峰 |
漕池からずいぶん上がってきました。振り返るとこれまで歩いてきた稜線がよく見えます。ロープウエイの山頂駅は写真左に切れていますが、そこから二つのピークを越えて(右が池ノ峰)、手前の残雪を踏みながらここまでやって来ました。写真中央の白いところが漕池です。
翻ると女人堂はまだあんな高いところに。がんばるぞー。
女人堂(避難小屋) |
10時50分、女人堂跡の避難小屋に到着。まずは呼吸を整えます。建物はまだ新しく、中もきれいでした。建物右側の出っ張りスペースがトイレ。出てきた妻が「トイレの中に自転車があったよ。」って??? 帰りにでも確かめてみたいと思います。
避難小屋の日陰に座って、アンパンでエネルギー補給。アンパンは定番です。
薬師岳 |
ここ女人堂が6合目になります。昔は八海山は女人禁制だったとのことで、女性の登拝者はここで遙拝して下山したのだそうです。
薬師岳もずいぶん近く見えています。雪渓がある谷はまだ傾斜が緩い方で、写真左側の斜面は平らな岩盤が広い範囲に露出しています。雪はおろか樹木さえもとどまることができないようです。
ヤマサギソウ |
大休止の後、薬師岳を目指して再び歩き始めました。さっそく見つけたのは山崎草、ではなく山鷺草。カタカナにするとつい読み間違ってしまいます。サギソウとは同じラン科ですが、外見はとても似ているとは言えませんね。
ミネカエデ |
カエデの花は垂れ下がるものが多いですが、ミネカエデは数少ない上に向かって咲くタイプ。疎らにはじける線香花火のような姿をした花です。
タテヤマリンドウ |
女人堂から先にはタテヤマリンドウが出始めました。涼しそうな色合い。高山の花はみな可憐です。
11時20分、ちょっと大きい雪渓を渡ります。滑らないように注意。
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タテヤマリンドウ |
陽光を浴びて全開に開いていますね。可愛いです(曇っていると筆の穂先のように花を閉じます。)。アップでもどうぞ。
さて、薬師岳山頂まではあと少し。花々に励まされながら、どうにかここまで登ってきました。この先はどんな花が待っているでしょうか。そして、山頂からの眺めはどうでしょうか。楽しみにしつつ、続きは《後編》で。