2023年 7月 小山内裏公園MAP
 
 
2023年7月5日(水)
 
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 オトギリソウ。漢字では「弟切草」と書きます。昔(平安時代)、ある鷹匠がこの葉に傷ついた鷹を治療する薬効があることを知り、それをライバルに深く秘していたところ、その秘密を鷹匠の弟が漏らしてしまったため、怒りにまかせて斬ってしまったという伝説が元だそう。花や葉に小さな黒点が多数あるのは、その時に飛び散った血の跡だということです。
 
 

A
 野草見本園へ。コマツナギの花が咲いていました。見てのとおり茎は細いですが、馬の手綱をつないでおけるほど丈夫だということで「駒繋ぎ」。
 
 
B
 ヤブミョウガ。葉がミョウガのそれに似ていることから、藪(野辺)に生えているミョウガ、ということですが、ミョウガがショウガ科、ヤブミョウガはツユクサ科に分類されていて、他人のそら似ということのようです。
 
 
C
 ちゃんと見ると涼しげな姿をしていますね。
 
 

D
 一旦園外に出て、園の北縁に沿う歩道を歩いて行きます。
 タカトウダイの花序は茎の頂から5方向に放射状に伸びています。写真はほぼ真上から撮したもの。背景と被って見にくいですが。
 
 

E
 内裏池までやって来ました。谷戸からの流れ池に流れ込む水辺にミゾソバが咲いていました。アップで見ると透明感のある桃色で形も端正。可憐です。ただ、いかんせん小さいので気づかない人も多いようです。
 
 
F
 トサミズキの若い果実。ちょっと厳つい姿をしています。花の可憐さとはほど遠い印象ですね。角のようなものは花柱の跡。
 
 

G
 リョウブが花の盛りを迎えていました。新芽や若葉は古くから救荒植物として利用されていたそう。名前を漢字で「令法」と書くのは、栽培が官令により推奨されていたからと言われています。
 
 

H
 ヤマユリ。西日本には自生していないので、yamanekoも東京に引っ越してきて初めて見ました。高さが人の背丈ほどにもなる大型のユリですが、なかなかすっくと姿勢の良い立ち姿ではお目にかかれません。なにしろ花冠がハンドボールくらいもあって重たく、しかもときには何個も付いていたりするので、大概はしなる釣り竿のように斜めになっています。
 
 

I
 ヤブガラシの花は2、3mmほどと極小。さっきのヤマユリの花と機能的に同じ器官なのかと、自然の多様さにあらためて驚かされます。
 花には薄緑色の花弁がありますが、これは小さくて目立たず、橙色の花盤が目を引きます。そこから蜜を出して虫を呼ぶのだそう。その後、葉が落ちる頃になると花盤は薄桃色に変わるという、面白い花です。
 
 
J
 もう気の早いヒヨドリバナが咲き始めました。ヒヨドリが鳴く頃に花が咲くからこの名が付いたとのことですが、ヒヨドリは年中鳴いています。ヒゲのように見えるのは、花冠から長く飛び出している花柱です。こんなにワサワサしていると、かえってチョウにとっては蜜を吸いにくいのではないかというのは無用な心配なんでしょうね。
 
 
K
 法面にワルナスビが広がっていました。茎や葉脈に鋭い刺があり、葉も根も有毒で、繁殖力も強いと、三拍子そろった悪者ぶりです。
 
 

L
 ウワミズザクラに実が熟しはじめていました。これから深い紅色になっていきます。クマの大好物で、木の上に座り込んで無心に食べていたりするそうなので、深山でこの実を見かけると思わず樹上を見上げてしまったり(笑)。
 
 

M
 この球形の花序はシオデのもの。雌雄異株で、写真のものは雄株の花序です。若芽はアスパラガスそっくりの味で美味しいそうですが、若芽の状態でシオデと判別することが難しそうです。
 
 

 
 
 
2023年7月12日(水)
 
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 ミズタマソウ。果実に鉤形の毛が密生していて、そこに露が付いた様子を水玉に例えたものだそう。花弁は4個あるように見えますが、よく見ると2裂した花弁が2個です。一般に花弁が5個とか4個の花が多く、2個は少数派です。
 
 

A
 大田切池の方に向かって下っていきます。これはコブシの果実。 晩夏には赤くなり、秋に開裂して中から朱色の種子が顔を出します。種子は長さ1cmほどの紐状のもので本体と繋がっていて、晩秋には実からぶら下がっている様子も見られます。
 
 

B
 ハコネウツギに実が付いていました。なんか雅楽器の笙みたいです。植物よって果実の付き方も様々ですね。
 
 

C
 大田切池の畔に下りてきました。風もなく、この空間の時間が止まっているかのよう。
 
 
D
 クサギの蕾。今は萼がホオズキの袋のようになっている状態です。もうじき中から花冠が出てきて白い花を咲かせますが、その時点でも萼は今の状態のまま 。その後花弁が落ち、秋に実ができる頃には萼が星型に開きます。実はコバルトブルー、萼はガーネットレッドで、かなり目立っています。
 
 

E
 フサザクラに実が付いているか大田切歩道橋入口まで見に行きました。杓子状の形にはなっていますが、まだ若くて小さいよう。もうちょっと大きくなるはずです。
 
 

F
 野草見本園へ。ダイコンソウの花が咲いていました。この花の何が大根なのかというと、根生葉(根際から生える葉)が大根の葉に似ているからだとか。また妙なところに着目したものです。一番目立つ花ではないんですね。なお、茎に付く葉は全く似ていません。
 
 
G
 梅雨明けの発表はまだですが、もう夏本番の空です。
 
 

 
 
 
2023年7月19日(水)
 

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 簾のように垂れ下がっているのはオニドコロの刮ハ。3個の翼があり、今は細身ですが、成熟すると軍配のように幅広になります。
 
 

A
 ツユクサ。 別名をボウシバナ(帽子花)といい、これは花の付け根にある苞の形から。おそら帽子とはく烏帽子のことを言っているのだと思います。花期は初夏から秋までと長いですが、個々の花は一日花で、朝咲いて夕方には萎んでしまいます。隣に写っているのはオニドコロの刮ハ。
 
 
B
 メマツヨイグサです。漢字では「雌待宵草」と書きます。
 ♪待てど暮らせど来ぬ人よ…。竹久夢二は待宵草のことを「宵待草」と間違えてあの有名な歌を作ったのだそうです。この似たような二つの言葉、意味は全然異なり、「 待宵」は「来るはずの人を待つ宵」という意味で、「宵待」は「宵になるのを待つ」という意味だそうです。ということは、竹久夢二の歌は「待宵草」の方が合っているし、夕方に咲いて朝に萎むマツヨイグサは「宵待草」の方が合っていると言えるのでは。
 
 

C
 エノキの果実が少しずつ色づき始めました。9月に赤褐色に成熟します。甘みがって、食べると水気のない干し柿のような味がします。この味は同じアサ科のムクノキの実と一緒。それもあってか、ムクノキのことをムクエノキとも言うのだそうです。
 
 

D
 ウワミズザクラの実が熟してきました。果実酒にすると香りも良く、色も美しいそうです。作ってみたい気もしますが、大量に入手するのが困難です。山林でも所有していれば別ですが。
 
 

E
 イヌザンショウは雌雄別株。この木は 雌の木で、実をたくさん付けます。今は花の時期。強い日差しの下、これから黄色の小さな花を密生させます。
 
 
F
 日没後、カラスウリの花を見に行きました。この花は日が暮れてから咲き、夜明け前に萎んでしまいます。人間には暗闇に咲くこの妖艶な姿は見えにくいのですが、カラスウリが待っているのはスズメガ。夜行性のこの蛾には可憐なレース模様が見えているのだと思います。カラスウリの花筒は長く、長い口吻を持つスズメガとお互いに欠かせない関係性を持っているのだそうです。
 
 

 
 
 
2023年7月26日(水)
 
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 夏空に似合うコオニユリです。中部山岳で最もポピュラーなユリなのだそうで、平地ではオニユリの方がよく見られるとのことです。花冠だけ見ると両者の区別がつきませんが、オニユリは高さが1mから2mに達するほど大型で、全体の容姿でなんとなく分かります。決定的な違いは葉腋にムカゴを実らせること。
 
 

A
 ヤマホトトギス。雄しべと雌しべが平開し遊園地の回転ブランコみたいな姿になっていますね。花被片は反り返るのが特徴です。よく似るヤマジノホトトギスは花被片は反り返らず水平に開きます。
 
 
B
 大規模に開伐された津島谷戸。その入口付近にイヌゴマの群落が残っていました。逞しいです。
 それにしても島津谷戸は奥の方まで切り開かれたものです。これは猛禽類の採餌場を作ったということでしょうか。園西側のサンクチュアリ内でオオタカの営巣が確認されたということですが。
 
 
C
 九反甫谷戸にやって来ました。ウバユリが盛りを迎えていました。花茎は太く直立し、「剛」のイメージです。本来人の背丈ほどに成長しますが、ここではそれほどに大きいものはありません。蕾は上を向いて付き、開花を迎えると水平になります。
 
 

D
 内裏池の畔で旺盛に繁っている高木のカラスザンショウ。ギラギラと夏の日差しを照り返していますね。今が開花の時期です。花序の色合いからすると雄の木でしょう。南広場には雌の木があります。
 
 

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 ツル植物のヘクソカズラ。いくつかの別名を持ち、その一つにサオトメカズラというものがあります。花冠を早乙女が被る笠に見立てたものだそうですが、標準和名との落差が大きすぎますね。
 
 
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  野草見本園へ。コマツナギの花序は約8cmと小型。一つの花となると1cmに満たないほど小さいです。さっきのウバユリと比べると同じ花でもずいぶん違うものです。でも、それぞれの花の大きさに応じたパートナー(花粉の媒介者)がいるんでしょうね。
 
 
G
 ミソハギが咲き始めましたが、花序が5cmくらいとずいぶん短いです。本来は20cmから30cmほどの長さになります。
 各地でお盆に仏前に供える花とされていて、「禊ぎ萩」が名の由来だそうです。yamanekoの田舎ではそのような風習はありませんでしたが。