矢倉岳 〜花と絶景の穴場ポイント(後編)〜


 

 (後編)

【神奈川県 南足柄市 令和元年5月25日(土)】
 
 花と絶景の穴場的ポイント、矢倉岳を登る野山歩き。後編です。(前編はこちら


 Kashmir 3D

 朝、8時35分に万葉公園をスタートし、尾根道を歩いて清水越に至り、いよいよ矢倉岳の山腹にとりつきました。



 時刻は10時10分、勾配が急になってきました。でも、まだ余裕です。

 カタバミ

 足元に小さな花が。カタバミです。この花はたくさんの地方名を持っていて、その数180にも達するのだとか。それだけ人間の生活に近い存在なんでしょうね。カタバミを漢字で書くと「酢漿草」と書くことが一般的。噛むと酸っぱい汁が出るからだそうです。そういえば、この季節、野山を歩いていても黄色い花に出会うことは少ないような気がします。気のせい?



 切り株の上に密生していた何か。コケ?ですよね。ムーミンの世界観があります。



 むむ、この花は? スタイルとしてはツクバネウツギなんですが、花筒の中に網目模様がありません。なんだろう。しばらく考えましたが、それらしいものが思いつきませんでした。ただ、ツクバネウツギには変異の形態として白花のものもあるらしいので、おそらくそれではないかという結論に至りました。自分的には。

 ヤブウツギ

 こちらはヤブウツギ。紅白でおめでたいです。

 ニシキウツギ

 こちらはニシキウツギか。「ニシキ」は「錦」ではなく「二色」。花の色が白色からやがて紅色に変化するためです。白、紅ときて二色。これら三つの「ウツギ」はいずれもスイカズラ科に属しています。

 富士山

 急な勾配を黙々と歩いていくうちに木立の切れたところに出ました。なかなかのビューポイントです。ここから見ると富士山は真西の方角。東富士演習場からドーン、ドーンと演習の音が聞こえてきます。



 もうちょっと登ると更に眺望が開けました。富士山の右手に連なるのは道志の山々。その中にぽこっと頭が飛び出ているのは御正体山です。



 ひとしきり眺望を楽しんだ後、リスタート。荒い息を抑えながらしばらく登っていくと勾配が緩くなりました。山頂もそう遠くないようです。

 ツクバネウツギ

 これがスタンダードなツクバネウツギ。花筒の中にオレンジ色の網目模様があるのですぐに見分けがつきます。

 ジロボウエンゴサク

 上の方ばっかり見ていないで足元にも注目。これはジロボウエンゴサク。ややこしい名前ですが、漢字で書くと「次郎坊延胡索」。まあ、ややこしいままです。ケシの仲間です。



 頭上も開けてきました。いよいよ山頂も近いです。

 ホタルカズラ

 明るい場所にはホタルカズラ。花冠の大きさは100円玉か大きいものだと500円玉くらいで、その鮮やかな色と相まってけっこう目立つ存在です。

 ヒメハギ

 同じように明るく開けたところを好むヒメハギ。ハギと言ってもマメ科のハギとは無関係。植物の名前でヒメがつくものは大抵「小型の」という意味です。



 おお、いよいよ。 木立の向こうが明るく開けています。

 矢倉岳山頂

 10時45分、矢倉岳(870m)の山頂に到着。広々としていますね。それにしても強烈な日差しが降り注ぎ眩しいやら暑いやら。



 そしてこれが山頂からの眺め。頭がパッカーンと割れて風が吹き抜けるような爽快な風景です。
 写真右端が西、左端が南の方向になります。金時山と明神ヶ岳は箱根の外輪山で、神山はその中央火口丘とのこと。その神山の山頂の下方に白く写っているのは大涌谷の白煙です。確か現在は噴火警戒レベル2とされていて、一般人が近づくことはできないことになっているはずです。



 山頂部には北側にわずかな木陰があって、そこで昼食をとることにしました。コンビニおにぎりです。でも絶景を目の前にしては何でもご馳走ですね。



 昼食後、辺りを散策。少し窪んだところに石の祠と塔がありました。麓の足柄神社の奥宮だそうですが、詳しい由縁などは分かりませんでした。

 小田原市街

 南側に目を転じてみると小田原の市街地が見えました。右手の傾斜地は箱根外輪山の辺縁部になります。人口は19万人あまりで、名物は提灯、というより蒲鉾ですかね。戦国時代の関東一の雄、北条氏の本拠地でもありました。

 下山

 山頂で1時間ほど休憩して、下山を開始しました。山の事故の多くは下山時に起こっているとのことなので、気を引き締めて行きます。

 タチガシワ

 清水越を過ぎ、尾根道をだらだらと上っていると、んんっ?これは? 20年以上野山を歩いてきて初めて出会う花です。クサタチバナとかガガイモ科の植物だろうと当たりを付け、帰宅後調べてみたら、やはりガガイモ科のタチガシワとのこと。花は地味な色合いですが、その分葉が目立っていました。初対面はいつも気持ちが上がりますね。

 ウワバミソウ

 これはウワバミソウですね。蟒蛇(うわばみ)とは大蛇のことで、蟒蛇が棲んでいそうなところに生えているからウワバミソウだそうです。別名をミズとかミズナとか言い、若葉を山菜として食されます。yamanekoはまだ食べたことはないです。

 下山完了

 黙々と山を下って無事登山口に下りてきました。時刻は12時55分。下山には1時間10分ほどかかったことになります。

 ドリーム号V

 駐車場に戻ってきました。納車されてまだ1週間のドリーム号V。今のところ不満の点はありません。
 整理体操をしてからこの新しい相棒に乗り込み、帰途につきました。

 地蔵堂

 つづら折れの山道を下りきったところにある地蔵堂。ちょっとした名所になっているようなので、寄ってみることにしました。
 昔、この地に大きな寺があり、その伽藍の一部の地蔵堂が今に残っているとのことです。今でもこうやって人が集まってくるということは、それなりに大きな所領を持っていた寺だったんでしょうね。



 地蔵堂の近くにあった古民家カフェで休憩です。まったりした空気の中、アイスコーヒーで人心地ついて、今度こそ帰途につきました。帰りの高速道路も順調に流れ、小一時間で自宅に到着。
 今回は輝くような初夏の一日で相当リラックスできました。これから梅雨がやってきますが、それはそれで楽しもうと思います。