雲山峰 〜春浅い紀泉アルプスを行く(後編)〜


 

 (後編)

【和歌山県 和歌山市 平成31年2月17日(日)】
 
 春浅い紀泉アルプスの野山歩き。後編です。(前編はこちら

 Kashmir 3D

 紀泉アルプスの稜線上を歩き、四ノ谷山に立ち寄った後、更に歩いて展望ポイントを過ぎました。時刻は11時半です。

 松林

 尾根道沿いにアカマツが見られるようになりました。地面は花崗岩質で、貧栄養にも耐えられるアカマツなどに有利な場所です。

 雲山峰遠望

 雲山峰(右端)が正面に見えました。でも、あの稜線は歩きません。雲山峰のピークを踏んだら、その向こう側に延びる稜線を辿って行きます。

 カゴノキ

 カゴノキ。常緑で、クスノキの仲間です。漢字では「鹿子木」と書きます。鹿の子模様ってことですね。

 こんなところもありました。道の両脇が切れ落ちています。木が生えているので高度感はありませんが。

 カクレミノ

 カクレミノの幼木。木が若いほど葉の切れ込みは深いです。大木になるとまったく切れ込みはなくなり、丸っこい舟形の葉になります。葉の大きさも小さくなります。

 こんな場所をのんびり歩く喜び。日常のめんどくさいことを完全にリセットです。

 ヌタ場

 これはイノシシがのたうち回った跡、「ヌタ場」でしょう。地面のくぼみで転げ回って体に付いた寄生虫などを落とすといわれています。この辺りからイノシシが餌(ミミズなど)を採るために掘り返した跡がたくさん見られるようになりました。

 登山道を歩いていると高圧送電線はありがたい存在。国土地理院の2万5千分の1の地形図では送電線が表記されていて、これが自分の現在地の特定に役に立つのです。ただ、最近はスマホアプリで便利なものがあって、登山道と自分の移動軌跡と現在地が高精度で表示できるものがあるのです(YAMAPとか)。これのおかげで道迷いがほとんどなくなるのでは。GPSで位置情報を取得しているので、携帯の電波が入る入らないは関係なし。バッテリー切れだけ注意しておけばOKです(yamanekoは予備バッテリー常備)。とはいえ山を歩く上で紙の地図は必携ですけどね。紙の地図から読み取れる情報はたくさんあり、それが自分の身を助けてくれることにもつながるので。

 歩いていると「いい景色ポイント」という札が。なんか木立の向こうが見えそうです。

 うん。泉南地方がよく見えました。歩き始めの頃にあった第一展望台から見えていた方向です。青空になっているので、今あの展望台にいたらもっと明るい景色が見られたでしょうね。

 ソヨゴ

 このソヨゴも雲山峰が近くなってから見られるようになりました。葉の縁が波打っているのが特徴です。別名を「フクラシバ」(膨らし葉)といい、火であぶると葉の表面がぷくっと膨れ、パチンと弾けます。

 鳥取池分岐

 雲山峰まであとわずか。右手に鳥取池への小道が現れました。道は急勾配で下っていました。地図を見るとここから250mの標高差を一気に下っています。
 鳥取池は、もともと戦前に着工された灌漑用の溜め池で、造りが十分でなかったようで、戦後豪雨で決壊するなど大きな被害をもたらしたのだそうです。その後昭和30年代になって立派なダムを造営して復旧したのだそうです。

 山頂か

 山頂が近くなると傾斜も増してきます。しばらく行くとピークらしい場所が前方に。でもこれはフェイクピークでした。

 雲山峰山頂

 そして更に登ること数分。今度は本当に雲山峰のピークに到着しました。時刻は12時10分。スタートから2時間半でしたが、もっと長くかかったようにも感じます。

 山頂の標石。比較的新しめです。

 山頂は小広い空間になっていましたが、その周囲を森が取り囲んでいるのでこれといった眺望はありませんでした。

 山頂に小さな石の祠が。まだ新しいサカキが供えてあります。いつものごとく世界平和をお祈りしておきました(笑)。

 昼食

 天気もいいし、ここで昼食です。最近買ったプリムスのバーナーを初めて使いました。火力は安定していました。

 山頂で小一時間過ごした後、和歌山県側の紀伊駅を目指してスタート。膝の痛みもなく、快調です。

 西側に開けた尾根道。日差しがたっぷりと降り注いでいます。

 展望広場

 ほどなく展望広場に到着しました。この広場は「青少年の森」の展望広場とのことですが、当の青少年の森がどのような施設なのか、どこにあるのかはさっぱり分かりませんでした。もう閉鎖されているのでしょうか。

 次に東屋のある広場が。さっきの広場からすぐのところにありました。賑やかだった山頂よりもこっちで昼食にすれば良かったと、軽く後悔。

 和歌山市街地方面

 この広場からは和歌山市の中心部がよく見えました。花粉が飛び始める前の、長閑な眺めです。やっぱりここで昼食にすべきでした(笑)。

 行者堂分岐

 1時40分、行者堂の分岐に到着しました。ここは左側の上り道へ。
 行者とは「役行者」(えんのぎょうじゃ)のことで、飛鳥時代の呪術者。実在の人物で修験道の開祖と言われていますが、後世に語られたその法力についての凄まじいエピソードによって神格化されています。中学生の頃に見ていたNHKの新八犬伝の中に役行者が出てくる場面があって、そのときの印象がなぜか強く残っています。

 落合分岐

 ほどなくまた分岐が。今度は左手に道が分かれています。ここは直進ですが、左手に下りて行くと落合という集落に至るようでした。集落というか、グーグルマップで見たらぽつんと一軒家みたいな感じでした。

 ヤマザクラの倒木。登山道に架かっている箇所がぶっつりと切断されていました。地元の方が整備されたんでしょうね。ありがたいことです。

 おっ、開けた場所に出ました。

 紀ノ川流域

 紀ノ川の流域の低地、和歌山市東部から岩出市辺りが望めました。広々とした風景です。もうじき今日の野山歩きも終点に。安心感もあって、清々しさが増してきます。

 コナラの枝の広がりが青空に映えていますね。

 道は麓に向けて曲がり下っていきます(ラグナセカのコークスクリューみたい。)。ついつい小走りになってしまいますね。

 阪和自動車道

 2時20分、フェンスが見えました。山道はあそこで終了です。正面の構造物は阪和自動車道で、それをアンダーパスするトンネルがあります。ちょうど紀ノ川SAの下になります。

 北野地区の道を紀伊駅に向かって下っていくと、正面奥に龍門山の特徴的な台形の姿が見えました。この辺りに住んでいる人はあの山を生活の中で見ているわけで、「心の山」という感じなのかもしれませんね。

 クチナシ


 これはクチナシの実。民家に植えてあったものが山側に逃げ出したものではないでしょうか。鳥が種を運んだとかで。

 ウメ

 集落の中をのんびりと歩いて行きます。もうウメの開花も見られ始めています。春ですな。

 ゴールの紀伊駅は、入り口が線路の南側にあるので、踏切を渡って回り込みます。

 紀伊駅

 2時40分、紀伊駅に到着しました。ここが今日のゴールです。入り口は階段を上がったところにあるみたい。最後にこんな地味な試練があろうとは。
 それにしても、スタートをしたときと同じ日とは思えないほどよく晴れていますね。

 ホームから

 ホームに立って北側を望むとこんな景色が。あの山並のずっと奥に雲山峰があるはずです。
 
 さあ、ここからJR阪和線の快速に乗って天王寺に向かいます。乗車時間は1時間ちょっとでしょうか。ぐっすり寝て行きたいと思います。(乗って最初の駅が今日スタートした山中渓駅です。)。