蓼科山 〜大地溝帯に立つ展望台(前編)〜


 

 (前編)

【長野県 立科町 平成27年7月12日(日)】
 
 7月に入ってからの1週間、東京での日照時間はわずか数10分しかないとのニュースを耳にしました。確かに豪雨こそないもののずっと降ったり止んだりを繰り返していました。それが台風が3つ発生したことの影響かどうか、9日金曜日から晴れ始め、土曜日も猛暑となり、夕方の天気予報では翌日曜日は炎暑とのこと。梅雨前線が一時的に遠ざかったのかもしれません。とはいえまだ梅雨明けしたわけではないみたいなので、この晴れ間を逃さずに山に行くことにしました。目的地は長野県の蓼科山。八ヶ岳連峰の北端に位置する山です。
 
                       
 
 午前4時半起床。食事をしたりボーッとしたりしているうちに出発したのは5時過ぎになっていました。給油をしてコンビニで水と食料を調達して、相模原ICから圏央道に乗りました。すぐに中央道に乗り換え、長野県の諏訪ICを目指します。休日朝のこの時間、高速道路の下り線は既にかなりの交通量でした。小仏トンネル(山梨との都県境)での事故により渋滞が発生し始めているとのラジオを聞いたのは、そこを通り過ぎてから30分くらい経ってからのこと。ぎりセーフです。

 諏訪ICで高速を降りたら蓼科高原方面に向かいます。写真は茅野市湖東地区からの蓼科山。美しい姿に惹かれて車を下りて写真を撮っていたら、近所の人が絶好の撮影ポイントを教えてくれました。近くの畑の中の農道からよく見えるとのこと。
 そこからのパノラマが上の写真です。正面が蓼科山。その右手には北横岳や縞枯山などがあり、写真では切れていますが八ヶ岳連峰へと続いています。左手には王子ヶ峰、車山、霧ヶ峰が並びます。

 蓼科山

 諏訪富士と呼ばれる均整のとれた姿。独立峰のように見えますが、実はちょうどここから真裏になる北東方向に尾根が伸びていて、見る方向によっては印象が変わるようです。
 撮影を終えて再び出発。ここから更に高度を上げつつ、登山口のある蓼科山の北側に回り込みます。

 蓼科牧場

 「白樺リゾート池の平ホテル」で有名な白樺湖畔を通り過ぎ、その先にある蓼科牧場(冬季はスキー場)へ。そこが蓼科山登山の起点です。
 8時半過ぎに白樺高原総合観光センターの駐車場に車を停めました。この時刻、散策をする人がまばらにいるだけで、静かな高原の朝といった感じでした。

 ゲレンデの方を見ると丘の向こうに蓼科山の山頂部分が見えました。ということは山頂からここが見えるということか。


Kashmir 3D

 今日はここからゴンドラで標高1830mまで上がって、そこが山歩きのスタート地点。山頂が2530mなので、標高差は700mになります。しばらく登ると車でも行ける七号目登山口に出て、そこから稜線目指してひたすら登ります。稜線に出たところが将軍平。ここには蓼科山荘という山小屋があります。将軍平からも山頂への直登。やがて高い樹木がなくなり視界が一気に開けると山頂はすぐそこです。復路は来た道を戻ります。

 ゴンドラの車窓から

 ゴンドラ乗り場は機械も止まっていて人影もがありませんでした。が、チケット売り場に行ってみたら運行は9時からとのこと。案外ギリギリまで動き出さないものなんだなあと感心。それでも9時ちょうどに乗車開始となり、一人ゴンドラに乗り込みました。定員6人の小型のゴンドラでした。
 標高が上がるにつれ西側の眺望が。まだら模様になっているのは車山の山腹にあるゲレンデ。山頂には気象レーダー観測所のドームが見えます。東京大手町の気象庁から遠隔操作していると聞いたことがありましたが、あらためて調べてみると長野地方気象台から操作しているようです。この秋、より高性能のドップラーレーダーに更新されるようです。

 登山口

 およそ7分ほどで到着。あたりにはまだ数人の観光客しかいません。蓼科山に登る人の多くはここから更に上の七合目登山口まで車で行くようです。 十分に準備体操をして、9時15分、スタートです。

 歩き出しはササが足元を覆う針葉樹林。朝陽も差し込み明るい雰囲気です。 途中、車道を2回横断。ジグザグに延びる車道を串刺しにするような格好です。

 七合目登山口

 歩き出しから15分、七合目登山口に到着しました。強い日差しが降り注いでいます。ここには50台以上停められるほどの駐車場があり、既に満車状態。何組ものグループがスタートして行っています。

 鳥居をくぐって再び森の中に入りました。空気は涼しく、気持ちいいです。

 コメツガ

 この辺りは針葉樹林。これはコメツガですな。

 足元には大小の石が転がっていて結構歩きにくいです。捻挫をしないように要注意。

 シロバナヘビイチゴ

 緑一色の森の中に時折こうやって可愛いやつが現れます。これはシロバナヘビイチゴ。

 傾斜が増してきました。足元は更に石だらけになって、一歩を踏み出すたびにズリッ、ズリッと小さく滑ります。これが地味にこたえるんですよね。

 ナナカマド

 陽が差し込むところではナナカマドが花を咲かせていました。

 一方、陽があまり差し込まない林床はコケの世界。

 天狗の露地

 10時20分、分岐があらわれました。地図を見ると西側から上がってくる道がここで合流するようです。標識には「天狗の露地」とありました。

 延々と登り続けます。不安定な石を避けつつ、一歩一歩足を置く場所を見極めながら登っていきます。

 頭上が開けてきました。振り返るとこんな感じ。

 そして前を向くとこんな感じ。決して土石流の痕ではなく、石が崩れるのを防ぐために木材が設置されているのです。とはいえ、その木材自体もかなり流されていましたが。

 おお、木立の切れ目から建物が見えました。きっとあれが蓼科山荘でしょう。

 蓼科山荘

 10時50分、稜線に出ました。広場を庭のようにして蓼科山荘が建っています。ここは将軍平と呼ばれる場所ですが、地形的には蓼科山の山体から北東に延びる尾根の付け根に当たり、平地はありません。
 ここまでの道でかなり足腰に負担がかかりました。リュックを下ろして小休止です。

 右手は蓼科山の山頂方向。ここからピークは見えませんが。

 コバイケイソウ

 これはコバイケイソウの若い花穂。これからググッと伸びて白い小さな花をブラシ状に沢山付けます。花の時期には常にアブが来ていて、写真を撮ると必ずと言っていいほど写ってしまいます。

 ゴゼンタチバナ

 ゴゼンタチバナが咲いていました。yamanekoの好きな花の一つです。和の雰囲気がいいですね。

 ミツバオウレン

 これはミツバオウレン。黄色いのが花弁で白いのは萼片という、何度聞いても腑に落ちない構造です。

 休憩を終えて再スタート。



 地図を見るとほぼ直登。これまでとは違い、大きな岩が積み重なっています。ただ、岩同士はガッシリと組み合っていて、これまでのようにズリズリと滑らないのが救いです。

 ツマトリソウ

 辛い登りの中でも時折こんな花に出会うと、一瞬だけ苦しさを忘れることができます。これはツマトリソウですね。ゴゼンタチバナが咲く環境でよくセットで見かけます。

 周りに高い木々がなくなると高度感が出てきました。みんなしんどいのかペースが落ちるようです。

 振り向くとこんな風景(北東方向)。眼下に蓼科山荘が小さく見えています。正面の山は前掛山。なだらかな丘のようにも見えますが、2354mもあります。その遙か遠景には浅間山が。ここから直線距離で約40km離れています。浅間山は大きな山で、あちこちの山からその存在を確認できます。5月に登った秩父の両神山からも見えてました。そういえば新宿に住んでいたときの家のベランダからも。いやホント。
 さて、山頂はもう目の前です。続きは後編で。