谷川岳 〜「魔の山」 再び(後編)〜


 

 (後編)

【群馬県 みなかみ町、新潟県 湯沢町 平成23年9月10日(土)】
 
 職場の仲間との谷川岳登山。後編です。(前編はこちら


Kashmir 3D
 

 標高1700mを超えて、頂上まであと少しというところまでやって来ました。空気は澄んでいて、深呼吸すると肺の中がひんやりとする感じ(あくまでも感じです。)。でも日射しはきつく、暑いです。

 

 頂上が近づくと階段が出てきます。これがまたなかなか厳しい。

 肩ノ小屋

 10時50分、肩ノ小屋に到着しました。この小屋は有人で売店もあり、宿泊もできます。屋根にはソーラーパネルが設置されていますね。
 ここで小休止です。

 西方向

 西方向の山並み。累々と続いています。草津白根山、浅間山などもかすかに望めました。中央分水嶺の新潟県側は雲海に覆われています。雄大な風景。満々と雲を湛えた巨大なダムのようです。 

 道標

 山頂方向に向き直ると、西黒尾根への分岐を示す道標が見えました。魔の山の頂近くに佇む道標。吹雪や濃霧の中でこれに救われた人も多いでしょう。

 トマの耳へ

 小休止を終えて、いよいよ山頂に向かいます。すぐそこにトマの耳が見えています。

 

 11時5分、トマの耳に到着しました。たくさんの人で山頂は賑やかでした。でも、正式な山頂はオキの耳の方です。

 オキの耳

 で、北に目を向けるとオキの耳が。鉈で削ったような山容をしています。その稜線は奥の一ノ倉岳、茂倉岳へと続いています。
 さあ、オキ耳に向かって歩き始めましょう。

 

 オキの耳までの道には細い刃の上を渡るようなところもありました。のぞき込むと深い崖です。

 蛇紋岩

 やっかいなことにこの辺りは蛇紋岩で構成されていて、この岩はツルツルと滑りやすいのです。写真の青みがかった部分は、登山者が踏んで特にツルツル。これで雨でも降った日には極めて危ないと思います。

 トマの耳

 オキの耳までの中間点でトマの耳を振り返ってみました。行者の修験欲(?)をそそるような威容をしています。遠くに天神平が見えますね。あそこを出発してここまで来たのです。

 谷川岳山頂

 11時25分、とうとうオキの耳に到着しました。出発してから約2時間半。yamanekoにしてはハイペースでした。こちらの標識には「谷川岳山頂」と明記されています。ちなみに写真の外人さんのすぐ向こうは断崖です。

 東尾根

 のぞき込むとこんな感じ。オキの耳からふもとの谷底まで急激に落ち込む東尾根です。

 東方向

 顔を上げると東方向の眺めが。どうです、この笠ヶ岳(至仏山の隣のとは違う山。)の堂々たる広がり。その向こうには奈良俣ダムや矢木沢ダムなど関東の水瓶を擁する大きな谷が広がっているはずです。 

 北方向

 ここから北に向かって歩き出す人もいました。一ノ倉岳方面です。息災を祈る。

 

 標高2000mに舞うキアゲハ。もう羽根もあちこち痛んでいます。短い夏を精一杯生きたでしょうか。

 トマの耳と俎ー

 オキの耳からみた南方向です。中国地方の準平原化した山に慣れ親しんだyamanekoとしては、中部山岳の山々には何回見ても嘆息を禁じ得ません。特にこの辺りの山はノミで荒削りしたばかりのような、大きな力で日本列島をへし折ったときにできたような、なんと表現したらよいか、まあ凄いと感じるわけです。
 中国地方の山々も別な魅力がありますが、それはまた別の機会に。

 

 たっぷりと眺望を楽しんでから下山にかかりました。時刻は11時50分。まだ昼食をとっていないので、肩ノ小屋まで戻ってから食べることにしました。

 ハクサンフウロ

 花にほとんど出会わない中で見つけたハクサンフウロ。残り花ですね。

 

 12時25分、昼食を終え、本格的に下山にかかりました。遠くに見える天神平を目指します。下りは事故が多いので、特に気をつけて歩かねばなりません。

 チシマゼキショウ

 なんとこれはチシマゼキショウの実では。初めてお目にかかりました。高山の岩地に生える花で、よく似たイワショウブは標高の高い湿原に生えます。尾瀬ヶ原ではたくさん見ることができます。

 ジョウシュウオニアザミ

 ションボリしているわけではなく、これが普通の姿のジョウシュウオニアザミ。重そうな頭花ですからね。

 マイヅルソウ

 マイヅルソウ。葉も、実も、秋に向けて色づき始めています。

 

 難所では下りもやっぱり渋滞気味。しかし山ガールは後ろから見ると誰でも20代ですね。

 ミヤマダイモンジソウ

 もうずいぶん下りてきました。樹林帯をどんどん下ります。そんな中、岩肌を流れる小さな沢にミヤマダイモンジソウを見つけました。下りではついつい休憩もなしに歩いてしまいがちですが、こんな可愛い花に出会ったときには、休憩しなさいよという合図と思ってしばし足を止めることにしています。

 

 1時50分、天神平のゴンドラ駅が見えてきました。1時間半でここまで来るとは。やっぱりいつもよりハイペースです。

 

 天神平に着いて振り返るとこの風景。あのてっぺんから下りてきたのです。ひゃー、疲れました。午後に湧いてきた雲が谷川岳の表情をまた違ったものにしていますね。それにしても、怪我もなくここまで戻ってこられてうれしい限りです。

 湯テルメ谷川

 ゴンドラで土合まで下りて、その後、温泉へ。水上温泉から利根川の支流の谷川(谷川という川があったんだ!)に沿ってさかのぼり、向かったのはその名も谷川温泉。「湯テルメ谷川」という町営の温泉施設です。広々とした露天が気持ちよく、汗もきれいさっぱり洗い流して、心身ともに解放することができました。そして、湯上がりに飲んだノンアルコールビール! 初めて美味いと感じました。
 ところで、この谷川をどんどんさかのぼっていくと、やがて谷筋もなくなり、険しい断崖となって荒々しいピークに行き着きます。ここが俎ー。昔、俎ーが谷川岳と呼ばれていたのは、そういうことだったからなのかもしれません。
 
 さて、帰りの関越道。なんと渋滞なしでした。覚悟していただけに、拍子抜けというかなんというか…。