釈迦ヶ岳 〜風の峰々を歩く(後編)〜
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(後編) |
【栃木県 塩谷町 平成25年10月13日(日)】
強風の中、釈迦ヶ岳を目指しての山歩き。後編です。(前編はこちら)
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大間々の駐車場を午前8時45分に出発し、八海山神社、無名峰のピークを越えて、剣ヶ峰をスルーし、アップダウンを繰り返しながら釈迦ヶ岳の手前までやって来ました。時刻は11時30分です。
ミヤコザサ |
強風に煽られてミヤコザサが狂ったように踊っていました。ミヤコザサはこの辺りの林床を広く覆っています。風の強弱に合わせてスタジアムのウエーブのようにザザザーッと動いていました。
山頂に近づくに連れ傾斜が増していき、ときには両手を使って登ることも。山歩きをしている感満点です。
ときおり頭上を見上げると胸の空くような青い空。ダケカンバの白い幹とのコントラストが鮮やかです。
傾斜が緩やかになってきて、山頂が近いのかと思いきや…
またこんな急登が出てきたりします。
クチベニタケ |
この丸いものはクチベニタケ。こんな姿ですがキノコです。直径1.5pほど。胞子を噴出する先端部が赤いゼラチン質になっていて、これを口紅に例えたのだそうです。かなり息が上がってきていますが、こういう可愛いものを見つける余力はあるんです。
おっ、いよいよ |
鷄頂山との分岐を過ぎるとようやく傾斜が緩やかになってきました。山頂まではあと少しです。
そして頭上が開けてきました。いよいよ山頂か。
釈迦ヶ岳山頂 |
そして12時15分、釈迦ケ岳の山頂に到着しました。樹林などの遮蔽物がないので眺望は素晴らしいですが、その分風がもろに吹きつけてきます。
南方向 |
山頂からはほぼ360度の展望。南から東にかけては鬼怒川が形成した河岸段丘が広がっていました。霞んではいますが遙かに筑波山も見えています。都心まで約140q。この空間の広がりはそのまま関東平野に続いています。
南西方向 |
南西の方向。紅葉の向こうに日光連山の女峰山や男体山が見えています。ここから約25qほど離れています。
釈迦如来像 |
山頂には釈迦如来座像が鎮座していました。山の名前のとおりです。とりあえず手を合わせて無事の下山を祈念。
いつの間にか陽も陰っていて体感温度がどんどん下がっていくのが分かります。ザックから薄手のダウンを出してジャケットの下に着込み防寒対策。その後、ササの陰に隠れるようにして風をしのいで弁当を開きました。じっとしていると急速に体温を奪われていき、次第に手がかじかんできて寒くてたまりません。結局、弁当を全部食べ切る前に昼食を断念しました。
鶏頂山 |
西にはおむすびのような鷄頂山が。ここからは1qちょっと。よく見ると山頂に山小屋らしき建物が見えます。
後で調べたところ、あの建物は鶏頂山神社のようです。双眼鏡で見ると何人かの登山者が休憩しているのが見て取れました。
コーヒーで暖を |
カップコーヒーで暖をとってひと心地。でもすぐに冷えてくるんです。
山頂には30分ほどの滞在。体が完全に冷え切る前に下山することにしました。山頂直下の急斜面は上りより下りの方がハードです。油断していると本当に転がり落ちそうになります。
風が強いため、フードを被ってその上から帽子を被っている妻。ぱっと見、盗っ人か。それにしてもかなりの急斜面をトラバース。風に煽られてグラッときたらそのまま谷底です。
無名峰 |
下るに連れてまた陽が差してきました。風は相変わらず強いです。
眼下に無名峰が見下ろせました。これからぐるっと回ってあの峰を越えて下山するのです。
童話や昔話の世界のような木立。ここを転がるように下っていきます。
ときどきこんなホッとするような道になったりもします。
そしてすぐにまたこんな急坂に。それにしてもこんなに長かったか? 道のり。だいたい往きより帰りの方が短く感じるものなのに。
前黒山 |
おっ、ここからは前黒山がよく見えます。山頂はササ原で見晴らしの良い山だそうです。
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最も低い鞍部まで戻ってきました。午後の日射しを受けてダケカンバの木立が輝いています。
無名峰 |
その無名峰が綺麗に見渡せるところがありました。これからあれを越えて行かなければなりません。
剣ヶ峰 |
時刻は2時30分。往きにスルーした剣ヶ峰に寄ってみました。メインの登山道から分岐すること10mでそのピークはありました。 それにしてもここがなんで「剣」で「峰」なのか国土地理院に聞いてみたいところです(別に国土地理院が名付けたわけじゃないか。)。
那須連山 |
さあ、ここからはまた本格的な上りです。無名峰に登る途中、北側に遠く那須連山が望めました。
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ズームしてみると…。中央が茶臼岳でしょうか。
八海山神社 |
鞍部から急な斜面を登り返して矢板市最高地点を越え、2時55分、八海山神社まで戻ってきました。まだ風が強く吹いています。
林間コースへ |
八海山神社からは林間コースを下っていきます。
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森の中に入ると風がピタリと止みました。いや、木々の先端を揺らして森の上を吹きすぎているのです。ここまでの強風が嘘のよう。静かな山歩きになりました。
沢を渡る |
水は流れていませんでしたがそれなりに大きな沢を渡ります。石段を下るとかなり筋肉が張ってきたのが分かります。
林間コースは本当に静かでした。陽も傾いてきて、出会いたくないヤツに出会っては困るので、熊鈴を出して歩きました。
大間々駐車場 |
午後4時、無事に大間々駐車場に戻ってきました。出発時にほぼ満車だった駐車場が、ドリーム号を含めて5台になっていました。装備を解いて、整理体操をして、それから駐車場の端にある展望塔に登ってみました。
夕映えの山々。大間々の溶岩台地の向こうに見える山塊は大佐飛山地、その右肩奥に見えるのが那須連山です。なんと雄大で印象的な風景。しばらく瞼を閉じてこの眺望を目に焼き付けました(写真にも撮りましたが。)。
帰りの東北道は矢板ICに乗った時点で混雑が始まっていて、鹿沼IC辺りから動いたり止まったりの状態に。これが埼玉県の羽生IC辺りまで続きました。行楽シーズンなのでしょうがないですが、疲れた体にはこたえました。なので、今日一日で出会った風景を思い出しながらハンドルを握り続けました。
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