白金自然教育園 〜都心に残された森・春3月〜


 

【東京都 港区 平成24年3月25日(日)】
 
 3月下旬ですがなかなか暖かくなりませんな。都内の桜もあとちょっとで咲き始めるといった状況です。
 さて、春3月の白金自然教育園はどんな感じでしょうか。

 

 入口にあるヤブツバキ。ちょっと分かりにくいですが紅白で並んで咲いています。

 モクレイシ

 入ってすぐ右手に見慣れない花が咲いていました。標識には「モクレイシ」とあります。調べてみるとニシキギ科の常緑樹。沿岸部に生える小高木だそうです。モクレイシとは変わった名前ですが、漢字では「木茘枝」と書き、実が裂けて橙赤色の種子が顔を出す様子がニガウリに似ていることから、ニガウリの別名「ツルレイシ(蔓茘枝)」に対して付けられた名前だそうです。

 バイモ

 中国原産のバイモ。別名をアミガサユリといい、それは花冠の中を覗いてみれば納得できます。バイモ自体は園内のあちこちで見かけましたが、咲いていたのはこの一輪のみでした。

 キブシ

 この時期の定番、キブシです。去年は小山田緑地で満開のキブシを見たなあ。

 アオイスミレ

 観れば見るほど変わった姿をしているアオイスミレ。葉の形がフタバアオイに似ているからこの名が付いたといいます。訪れた虫を囲い込むかのような形状ですが、訪れるのはアリが多いんですよね。

 ヤブレガサ

 「破れ傘刀舟悪人狩り」って時代劇がありましたね、萬屋錦之助の。写真は芽吹いたばかりのヤブレガサで、これから葉を広げていくところです。白い産毛のようなものに覆われています。

 

 園内にはこんなスペースも。

 館跡

 散策路脇にある白金長者の館跡。写真左側の土の盛り上がりは、馬蹄型に巡らされた土塁の一部で、その土塁に囲まれるように館が建っていたと伝えられています。それにしても白金長者とは何者なのか。ここに館が建っていたのは明らかなのですが、白金長者自体のことは何も分かっていないのだそうです。

 アオキ

 アオキの花芽もほころんできました。

 シロヤブツバキ

 水鳥の沼の畔に下りてきました。シロヤブツバキの花、清楚できれいですね。

 

 園内に入った直後まで柔らかな春の日射しに覆われていたのに、一瞬で大きな雲の塊が太陽を隠してしまい、寒々とした風景になってしまいました。この雲さえ移動してくれればまた明るくなるのに。

 

 水鳥の沼からいもりの池に向かう水路。流れているのかいないのか、といったくらいの緩やかな流れです。水がぬるんでくるとここにもいろいろな生き物が現れるでしょうね。

 紫色の蕾を付けたこの花。何だろうと気になっていたので、1週間後に確かめに行ったときの様子が右の写真。開花の状態を見てもまだ何なのかが分かりませんでした。なんとなくヒヤシンスに似ていることを頼りに調べてみると、どうやらローマンヒヤシンスであることが判明。園芸種だそうですが、一般的なヒヤシンス(ダッヂヒヤシンスというそうです。)に押されてややマイナーな存在なのだとか。それにしても何でこんなところに生えているのか。

 

 雲がどいてくれたのか、また日射しが戻ってきました。

 シュンラン

 武蔵野植物園にやって来ました。ここは園入口近くの路傍植物園とともに草本の多いエリアです。
 写真はシュンランです。野生で見かけるものとは異なり、こんもりと大きな塊状になって、そこから沢山の花茎をつき出していました。ただ、残念ながらほとんど向こう向きに咲いていて、後頭部しか見ることができませんでした。

 カタクリ

 スプリング・エフェメラル。カタクリも群生(群植か?)していました。ちょうど咲きそろったばかりといった感じでした。

 フッキソウ

 桜が咲き始める直前に咲く花で、この花を見ると春が来たなと感じます。顔を近づけてよく見ると、「富貴草」の名のとおり上品な美しさが感じられます。

 アマナ

 春の日射しをキャッチするように花冠を開いたアマナ。これでも満開状態なんです。
 だいたい名前に「菜」と付くのは食用にされてきた過去をもっていて、アマナは読んで字のごとく甘い菜ということです。地下にある鱗茎に甘味があるのだそうです。

 カンアオイ

 カンアオイの若葉。二つ折りになっているんですね。

 アズマイチゲ

 アズマイチゲも咲いていましたが、ひとりぼっちで何だか寒そうです。

 ユキワリイチゲ

 ユキワリイチゲは密集していて、こっちは春爛漫といった感じ。

 ヒロハアマナ

 ヒロハアマナは葉の中央に白いラインが入っています。柔らかく弱々しいアマナに比して全体的に固くしっかりした感じがします。

 ウグイスカグラ

 ウグイスカグラは葉が展開しきる前に花を開きます。春が浅いとこんな小さな花もよく目立っています。

 

 丘の上にある武蔵野植物園から低地に下りてきました。写真は森の小道に沿って広がる湿地。倒木もあえてそのままにしてあります。

 水生植物園

 水生植物園までやって来ました。左奥の木立が白金長者の館跡がある丘になります。どんな長者だったか知りませんが、自分が治めていた郷が千年の後に世界有数のメトロポリスになるなんて絶対に想像できなかったでしょうね。

   ノイバラ

 丸裸だったノイバラにも柔らかな葉が出てきました。どんな固い葉も、芽吹いたばかりのときには初々しくしなやかなんですよね(世のご婦人方も…)。

 定点写真

 雲から太陽が顔を出す瞬間を待って定点写真を撮りました。木々の枝先はまだ茶色。あと半月もしたら黄緑色になってくるでしょうね。

 物語の松

 さて、斜面を登って入口の方に戻りましょう。物語の松、相変わらずの存在感です。

 

 路傍植物園で見かけた謎の植物。葉芽を広げはじめたところでしょうか。次回要チェックです。

 アブラチャン

 管理棟近くまで戻ってきました。アブラチャンの花が満開でした。
 春本番を目前に控えたこの季節。ここの桜もなかなか見事なので、多くの人が桜を愛でに訪れるでしょう(もちろん花見宴会はできませんが。)。来月観察に来たときには既に散っているかもしれません。でも葉桜も結構好きなので、それも楽しみに一月後また訪れたいと思います。
 
 

   自然教育園の周辺の様子