白金自然教育園 〜都心に残された森・冬2月〜


 

【東京都 港区 平成24年2月19日(日)】
 
 再びやってきました、自然教育園。先月と比べてもうちょっと春めいているかと思いきや、2月下旬にもかかわらず、寒いです。時刻は12時過ぎ。一日のうちで最も気温が上がる時間帯のはずですが、底冷えしています。

 

 ゲートの脇から管理棟に入り、パンフレットでこの時期の見所を確認してから園内へ。振り返ると目黒通り沿いのマンションが見えます。手前にあるゲートが俗世との境界。これから都心とは思えない異次元に入っていきます。

 マンサク

 路傍植物園を歩いて行くと、丸裸のマンサクの木に1箇所だけ花を付けているところがありました。折りたたまれていた花弁はこれから伸びるところです。中心の紅色は萼。こんなに派手な姿をしていてもこの時期寄ってきてくれる虫なんていないだろうに。

 

 ここはどこ? この手つかずの森は。(港区白金台5丁目です。)

 

 原っぱになっているところがありました。でもここは立入禁止エリア。人が定期的に手を入れるエリアの自然を研究しているようです。

 ヤブコウジ

 これでも立派な常緑樹。ヤブコウジの平均的な樹高は15pくらいです。漢字で書くと「藪柑子」ですが、柑子と言えば在来のミカン。どこを見てもミカン的な要素が見当たらないのにこの名前は何故?

 アカガシ

 道の脇に何気なくあるアカガシの巨木。こちらの樹高は平均20mほどになります。

 分岐

 入口から300mほどで分岐が現れます。右に行けばひょうたん池へ、左は館跡を通って水鳥の沼に出る道です。今日は左の方から回ります。

 ムクノキ

 足下に大量のムクノキの枯れ葉が落ちていました。これほどの量の葉を落とすのはよほどの巨木、と見上げたのが右の写真。他のどの木よりも伸びやかに広げたその枝は、まるで血管のようでもありす。ムクノキの葉の一枚一枚は大きくありませんが、数で勝負ですね。なにしろこんな巨木なのですから、その枚数もきっと何万枚。生成される糖も大変な量でしょうね。しかしこの枝、よく見ると周囲の木の枝と重なり合うことなく、うまく空間に収まっています。というより、これはムクノキの枝が光を遮った範囲では他の木は生育できなかったということでしょうが。
 この先にももう一本、巨大なムクノキがあり、それは先月紹介したもの。こんな大きな木が何本もあるということも凄いことだと思います。 

 水鳥の沼

 園の西端にある水鳥の沼までやってきました。名前に反して水鳥の姿は見えません。木立の向こうを走る首都高からの騒音が聞こえてくるのみです。でも、樹林が特定の音域をカットするのか、不快な感じではありませんでした。

 

 水辺にはコナラの林から舞い落ちた枯れ葉が沈んでいました。静かな晩冬の午後です。

 ガクアジサイ

 ガクアジサイもドライフラワー状態。

 ヤブツバキ

 ヤブツバキは日向がよく似合います。春近しという感じですね。椿はまだ寒い時期に咲くので、花粉の媒介はメジロなどの小鳥が行います。そう言われればヤブツバキを訪れるメジロを見かけたことがあるような。

 

 水鳥の沼から北に向かって歩いて行きます。

 イモリの池

 水鳥の沼から流れ出た水がここにいったんまどろんで、水生植物園の方に下っていきます。その水を求めてか、小鳥が数羽に群れて梢に訪れ、しばらくして枝先を渡っていきました。そしてあたりはまた静寂が下りてきました。

 

 武蔵野植物園に向けて歩いて行きます。この分岐を右手に下りると水生植物園。左手が武蔵野植物園に続く道です。

 フクジュソウ  ユキワリイチゲ

 春が少しずつ近づいていることを教えてくれる花たち。みな光を求めて一生懸命です。
 フクジュソウは旧暦の正月の頃に咲き始めることから、おめでたい花として親しまれています。今年は2月になってからも何回か雪が積もったので、雪から顔を出す姿も見られたでしょう。
 ユキワリイチゲはもともと関東では見られない植物。ここの開園当初、広島県から移入されたものだそうです。

 

 武蔵野台地の雑木林を彷彿とさせる小径。心がのんびりとしてきます。

 

 湿地の脇の小径を行きます。園内の流れはこの辺りで一つになり、この左手で外界に流れ出ていきます。

 水生植物園

 先月は氷が張っていた池の水。今日は少しぬるんでいるようです。

 

 これはギボウシでしょうか。その果実の鞘です。中の種子はこぼれ落ちていて空っぽです(下の鞘に少し残っているのが見えます。)。

 定点写真

 定点写真のポイントにやって来ました。見た目はほとんど先月と同じ。唯一凍結していないのが異なる点でしょうか。

 ひょうたん池

 鏡のような水面に青空が映り込んでいました。
 「春隣り」 この時期を表す言葉にこんなものがありますが、冴え冴えとしたこの日陰の池にも、すぐ隣りに春がやって来ているような柔らかさを感じます。

 アオキ

 ぐるっと回って路傍観察園まで戻ってきました。
 アオキの実。日光を浴びてツルッと輝いています。色といい形といい、棗(ナツメ)の実にも似ています。

 ヤブラン

 こちらはヤブランの種子。真夏に咲く薄紫の涼しげな花がこういう種子を作るのです。不思議ですね。

 セツブンソウ

 帰り間際、小さな小さなセツブンソウを見つけました。往きには気がつかなかったなあ。

 

 最後に管理棟で展示物を観察。観察路で拾われたいろんなものが小箱に展示されていました。お洒落雑貨店なんかにありそうです。
 さて、次は3月、今年は寒さが長引き梅もまだほとんど咲いていません。来月の観察では桜もまだ堅い蕾でしょう。それでも今回より少しは春の気配が深まってはいるでしょうね。楽しみです。
 
 

   自然教育園の周辺の様子