石老山 〜ひたすらに汗の道場〜


 

【神奈川県 相模原市 平成23年7月3日(日)】
 
 7月に入りました。薄い曇り空で蓋をされて蒸し焼きにされるような暑さの日々が毎日続いています。直射日光こそないものの見上げると目を細めるようなまぶしさで、薄いベールがかかったような天気。ひょっとしてこれは降り注ぐ紫外線が見えているのではないか?(そんな馬鹿な)
 そんな梅雨後半の休日、近場の山で一汗かこうと神奈川県北部の石老山にやってきました。
 
                       
 

 相模湖駅

 JR中央線を一路西へ。国分寺、立川、八王子と過ぎて、都県境を超え最初に停車する駅が相模湖駅です。ここからは、駅前のロータリーからバスに乗り換えて津久井湖方向に10分ほど行くと、石老山登山口というわかりやすいバス停が現れるので、そこで下車します。

 カナチューの車窓から

 石老山は丹沢山系の北にあって、北麓に相模湖(人造湖)を抱える標高694mの山。登山道には巨岩や奇岩がたくさんあって、関東百名山にも選ばれている低山派にはそこそこ有名な山のようです(ちなみに、相模湖は人造湖で初めて「○○湖」という名が付けられた湖だそうです。でもどうやって検証したんだろう?)。
 写真はバスの車窓から撮った石老山。中央やや左のピークです。湿度が高いせいか、景色がクリアではありませんね。


Kashmir 3D
 

 登山口バス停には9時40分に到着。ここで下車したのはyamaneko以外に女性3人の山ガールのみでした。さすがに夏場にわざわざ低山に登ろうという人は多くはないのかもしれません。
 この近くには「相模湖リゾートプレジャーフォレスト」という野外型遊園地があり、今から20年前くらい、まだ子供が幼稚園に上がる前に遊びに来た思い出があります。当時は「相模湖ピクニックランド」といっていましたが、どうやら経営主体が変わったようです。その頃、東京に引っ越してきたばかりで、慣れない仕事にかなり消耗していたところ、家族でここに来てずいぶん癒された記憶があります。懐かしい思い出です。
 今日のコースは、ここから山腹にある顕鏡寺を経由して石老山山頂を目指し、帰路はそこから1本西側の尾根を下って行くというもの。標高が低い分、暑さは半端ないと思います。

 寸沢嵐集落

 バス停脇の空き地でストレッチをするだけですでに大汗。今日はスポーツドリンクを多めに持参しているので、熱中症にならないように早め早めの給水を心がけようと思います。
 スタート後、しばらくは車道です。山裾の集落を縫う生活道路で、あたりには民家と耕作地が点在していました。先ほどの山ガール一行はもうずいぶん先を歩いています。やがて寸沢嵐(すあらし)という集落に入り、さらに登っていくと相模湖病院が見えてきます。ここの裏手に登山者も使える駐車場があって、ここを起点に山頂まで往復する人も多いようです。

 

 病院の裏手には石造りの立派な階段がありました。ここは顕鏡寺の総門があったところで、参拝者の休憩場所にもなっていたのだそうです。

 ヤマユリ

 駐車場脇には茂みから大きなユリが張り出していました。今にも咲きそうな蕾を付けています。葉の形、付き方からするとおそらくヤマユリだと思います。

 登山口

 10時15分、あらためてスタート。本格的な登山道はここから始まります。日射しは遮られていますが、風がなく、粘度の高い空気が肌にまとわりついてくるようです。

 アカショウマ

 白い花なのにアカショウマ。これは花柄の根元が赤みを帯びているからだそうですが、なにもそんな端っこのところをとらえて名前を付けなくても、と突っ込んでしまいそうです。

 マムシグサ

 こちらは青味もみずみずしいマムシグサです。秋になると実が朱くなり「美味しいよ〜」とアピールしてきますが、毒性は高いそうです。いったい食べられたいのか食べられれたくないのか。もしかしたらとりあえず食べてもらって、種子が消化される前に下痢をさせて排出させようという作戦か?

 

 結構な急坂で汗がどっと噴き出してきました。さっそく給水です。

 

 おお、出てきました、巨岩が。残念ながら解説板に何が書いてあったか忘れてしまいました。

 イワタバコ

 というのも、岩肌に着生しているイワタバコの葉に気をとられていたから。みな生き生きとしていて、ここが湿潤な環境であることが分かります。花はまだのようですね。

 ハエドクソウ

 汗を拭いながら一歩一歩登っていきます。仕事で溜まった何か悪いものを絞り出すにはちょうど良いかもしれません。
 写真はハエドクソウです。花が咲き始めていますね。ごく小さな花なのでつい見過ごしてしまいそうです。

 

 写真の画角に入りきらない巨岩たち。右奥のものも山肌ではなく大岩です。

 ムラサキニガナ

 ひょろっと伸びた花茎の先に紫色の花を付けているのはムラサキニガナ。これも咲き始めです。背の高さは1mくらいでしょうか。森の中で見かける花です。

 

 壁のような大岩です。いったいどんな経緯をたどって今ここにあるのでしょうか。

 カノコガ

 一見ハチのように見えますね。でも、カノコガという蛾です。確かに鹿の子模様をしています。フタオビドロバチという蜂に擬態しているといわれています。

 

 石段が現れました。顕鏡寺のものでしょう。小休止をして息を整え、水分を補給します。

 蛇木杉

 石段を登った先の右側の大杉。大蛇のような根をもっていることから「蛇木杉」とと名付けられているそうです。この根のうねり。広島の岳山にあった大杉を思い出しました。

 顕鏡寺

 10時35分、顕鏡寺に到着しました。ずいぶん長かったように感じましたが、駐車場から20分しか経っていませんでした。
 歴史を感じさせる佇まい。寺の縁起を記した看板には次のような記述がありました。「今から千百年余り昔のこと。当時の宮人、三条貴丞卿の若君武庫郎と八条殿の姫君の子として生まれた男の子は、岩若丸と名付けられ、若君は子供との再会の証として、鏡を割って一片を渡し、道志法師となって諸国行脚に出た。その後成長した岩若丸は父母と再会。岩若丸は僧となって源海上人と号し、古い石の山から寺の号を石老山といい、鏡から顕鏡寺と呼んだといわれています。」 いろんなことを修飾語としてくっつけているので何が何だかよく分かりませんが、要は三条貴丞卿の孫の岩若丸が、諸国行脚に出ていた父と再会したのを機に僧となり、ここに寺を開いた、ということですね。

 

 境内からの眺め。北東方向になります。バス停からトコトコ歩いてきた辺りですね。

 岩窟

 源海上人親子が住居としていた岩窟だそうです。入口をコンクリートブロックで覆っていますが、その上に乗っている岩の大きさを見るとちょっとびっくりします。ちなみに入口の高さは1.5mくらい。中はひんやりとしていました。

 ユキノシタ

 ユキノシタの花期はそろそろ終わりです。

 

 顕鏡寺から山頂を目指して更に登っていきます。

 

 岩もこれだけ大きくなると、目に見えないフォースが宿っていても不思議でない気がします。

 一本杉

 南東方向の展望が開けているところに出ました。ここは八方岩といい、正面に見えているのは一本杉という山です。

 

 八方岩は素通りして、再び樹林の中を登っていきます。汗、汗、汗…です。

 ヤブレガサ

 キクの仲間、ヤブレガサの花序です。もうじき咲きますね。ヤブレガサとは変な名前ですが、これは葉が深く裂けていることから。特に若葉の頃、破れた番傘そっくりの姿をしています。この花の名を聞いていつも萬屋錦之介の「破れ傘刀舟」を思い出すのはオヤジでしょうか(間違いなし)。

 融合平

 11時5分、、融合平に出ました。周囲は鬱蒼とした森で、「平」とはほど遠い感じです。正面に相模湖が見えます。方角としては北西方向です。

 ハナイカダ

 ハナイカダはすでに実を付けていました。熟すと黒くなります。

 

 晴れていて日射しはあるのですが、遠景となると薄ぼんやりとした景色になるのです。やはり湿度が高いからですね。

 山頂

 11時35分、ようやく山頂に到着しました。バス停から2時間弱、登山口からは1時間20分の行程。実感としてはもっと長かったように感じられます。ここまでで3リットルのスポーツドリンクが半分以上なくなっていました。
 山頂には20人くらいの先客がいました。やっぱり暑くても好きな人は登っているんですね。

 焼山

 山頂からは南西方向が望めました。方角的には富士山や丹沢山塊が見渡せると思いますが、今日は5、6q離れたところにある焼山(1060m)のおぼろげな姿を認めるのがやっとでした。

 モミジイチゴ

 みずみずしいモミジイチゴの果実。これは食べても美味いです。

 

 山頂では汗が引くのを待っておにぎりを食べ、20分ほど休憩して、下山にかかりました。

 

 下りもかなりの傾斜です。歩幅はあくまで小さく、小さく。

 センチコガネ

 道を横断しているセンチコガネに出会いました。しゃがんでじっくりと見てみます。角度によっていろんな色に見える。しかもそれが金属光沢で。宝石みたいな昆虫です。ちなみにセンチとは雪隠(せっちん)=トイレ、のことですが。

 ホタルブクロ

 夏の花、ホタルブクロ。涼しそうな姿をしています。

 大明神展望台

 12時35分、大明神展望台までやってきました。ここがコースで随一のビューポイント。見えているのは丹沢の山々です。それにしてもずいぶんご大層な名前の展望台ですね。

 相模湖

 北に向いてみると眼下に相模湖が。ちょうど正面辺りに相模湖駅があるはずです。街の上に通っているのは中央道。右手の山の鞍部が都県境の小仏峠です。

 

 ひとしきり展望を楽しんだところで、再び下りにかかります。こんな癒される空間もあったりして、十分にリフレッシュできました。

 相模湖休養村

 1時5分、相模湖休養村まで下りてきました。ここから先は車道を辿ることとなり、その先にあるバス停に向かって更に下っていきます。
 いや、それにしても今日はかなり大量の汗をかきました。スポーツドリンクはほぼ飲みきってしまいましたが、ここまでかくとなんかすっきりした気がします。
 バス停からは相模湖駅まで戻り、そこからJRで東京を目指します。乗り継ぎがうまくいけば、1時間半かからずに到着することができるでしょう。帰ったらシャワー浴びてビール飲むぞ−!