尾瀬ヶ原 〜一面のミズバショウを求めて(前編)〜


 

 (前編)

【群馬県 片品村 平成28年5月22日(日)】
 
 今年はゴールデンウィーク中に訪れようと思っていた尾瀬。宿も予約して楽しみに待っていたのですが、直前の予報では寒波襲来で雪が降るとのこと(マジか!)。急遽予定を変更し、半月ほど後ろにずらすことにしました。
 そして半月後。折しもHP情報では今ミズバショウが満開とのこと。例年は6月上旬が見頃」なんですが、今年関東地方はどの花も開花が早く、このミズバショウもそれに倣ってか、今がベストなのだそうです。これはラッキーです。
 
                       
 
 前日の土曜日、午前中で家の用事を済ませたり、近所の小山内裏公園を散策したりして、出発したのは11時前。尾瀬行きにしては超ゆっくりなスタートです。日帰りのときは午前2時発、泊りのときでも午前5時発とかが普通ですが、今回は尾瀬の麓(戸倉地区)のペンションに一泊し翌朝尾瀬入りする予定なので、夕方までに宿に着けばよいのです。
  圏央道、関越道と走り継ぎ、途中の上里SAで遅めの昼食をとって、群馬県の沼田ICで高速を降りました。そこからは国道120号線を片品村に向って走ります。時間に余裕があったので、これまで何度尾瀬に行ってもその都度素通りしてきた吹割の滝に寄ってみることにしました。若干水量が少なめでしたが、その水が削り出したダイナミックな地形に感動。梅雨の最中などは圧巻だと思います。

 ペンション「セ・ラ・ヴィ」

 目的のペンションは片品高原スキー場の手前、国道から300mくらい脇道に入ったところにありました。ここでちょっとしたサプライズが。あとわずかで到着ということろでなんとニホンカモシカに遭遇したのです。こちらに一瞥をくれたあとも悠々と道路の真ん中に佇んでいました。人間に危害を加えられることがないので恐れないんでしょうね。車を止めて待つこと1分弱、ようやく道を空けてくれ、悠々どこかに歩いて行きました。

 ペンションの泊まり客は我々を含めて2組だけ。ダイニングから見える山が夕焼けに染まり、やがて暗くなっていく様子を眺めながら食事を楽しみました。左のピークが笠ヶ岳(2246m)、右のピークが三ツ峰(2032m)です。特に有名な山ではないと思いますが、さりげなく2千mオーバーです。

 尾瀬エリア
 Kashmir 3D
〔今回のルートを大きな地図で〕

 翌朝は6時半発。オーナーさんにお礼を言って、ドリーム号始動。目的地はすぐ先にある戸倉の駐車場です。
 5分ほどで戸倉の第1駐車場に到着。駐車場は4割方埋まっている感じでした。装備を整えワゴンタクシーで鳩待峠へ。みんなミズバショウを楽しみに来ているんでしょうね。

 鳩待峠

 7時30分、鳩待峠に到着しました。以前はこの広場まで車が上がり、バスやタクシーの客待ち駐車場になっていましたが、今回行ってみると峠の30m手前に新しい駐車場ができていて、タクシーやバスはそこでお客を降ろすようになっていました。環境保護にはその方が良いでしょうね。
 右手のゲートが尾瀬ヶ原に下りて行く入口。湿原までの標高差は約190mあります。左手の看板のところには至仏山への登山口がありますが、雪解けのこの時期は植生保護のために入山禁止になっています。

 いやー、それにしてもいい天気。輝くような晴天です。今年もまた尾瀬に来られて幸せです。

 ストレッチをしてから山ノ鼻に下る入り口へ。そこには案内のおじさんが立っていて、通る人にここ数日頻繁にクマの目撃情報が寄せられていると注意喚起していました。今朝は環境省の職員が入って狼煙を上げたりしていたそうです。話を聞くとおじさんは仙台の人で、毎年春から秋までここでガイドをしたり環境保全の活動をしたりしているとのこと。毎朝、ハイカーが途切れるまでここにいて、その後道々ゴミ拾いをしながら山ノ鼻に下り、そこでトイレの掃除などをして、午後また鳩待峠に上がってきているのだそうです。そんなおじさんから衝撃的な情報が。何と一昨日の朝霜が降りて、尾瀬ヶ原のミズバショウがあらかた朽ちてしまったと。ええー!ここに来てそんなことになっているとは! 大ショックです。…が、これもやむなし。自然のすることです。一面のミズバショウでなくても何株かでも見られれば良しとしましょう。

 ひとしきりおじさんと話をしてから、ゲートをくぐりました。時刻は7時50分です。
 ああ、懐かしいこの風景。何回来てもこの風景にはワクワクします。

 エンレイソウ

 早速エンレイソウが出迎えてくれました。今回も花いっぱいな予感がします。そう、なにもミズバショウだけではないんですよね。

 ムシカリ

 ムシカリが咲いています。葉もまだ完全には開ききっていなくて、花冠も含め瑞々しい感じがしますね。

 ミヤマキスミレ

 この黄色いスミレはミヤマキスミレ。オオバキスミレの品種で、葉が輪生状に付くのが特徴なのだそうです。

 ムラサキヤシオ

 ムラサキヤシオが咲いています。色が濃いのが特徴。あと、花冠がミツバツツジのような顕著なラッパ状ではなく、やや平板的な形をしています。葉が少ないのは花が咲いてから展開するタイプだから。尾瀬ではここ山の鼻への道と東電小屋の辺りで見られるそうです。

 木道にはまだ雪が残っているかもと一応軽アイゼンを持ってきているのですが、まったく不要でしたね。完全に春ですわ。

 ハウチワカエデ

 このパラシュートみたいなものはハウチワカエデ。ぶら下がっているのが花序で、これから開花するところです。

 至仏山

 おっ、木立の向こうに至仏山の山頂が望めました。わずかに雪渓が残っていますね。例年よりかなり早い雪解けだそうです。

 イタヤカエデ

 まさに今、葉の展開が進んでいるところ。イタヤカエデです。花は葉と同じ色で目立ちませんが、今が盛りのようです。

 ムシカリ

 ムシカリです。この木をみると深山に来たなと思います。

 カツラ

 渓流に枝を伸ばすカツラ。丸い葉が可愛いですね。カツラは渓畔林の代表的な構成種です。

 ヒロハツリバナ

 ヒロハツリバナ。果実に4つの翼があることが特徴で、熟して開裂するとプロペラのような形になります。普通のツリバナは開いても笠状になるだけです。

 山ノ鼻への道は川上川の谷に沿って延びています。その川上川に幾つかの支流が流れ込んでいて、木道はそれをまたいでいきます。

 コマガタケスグリ

 これはコマガタケスグリの花ですね。去年、八ヶ岳の山麓で初めて見た花で、強く印象に残っています。これも渓畔林で見られる樹木です。

 ツルネコノメソウ

 渓流に咲くツルネコノメソウ。岩の間を走る水音が聞こえてくるようです。

 ミズバショウ

 おっとミズバショウが現れました。やや湿ったところで咲いています。ここの地形は狭い谷なので霜を免れたのかもしれません。

 ミヤマシキミ

 ミヤマシキミが開花の季節を迎えていました。決して派手な花ではありませんが、林縁を彩る可憐な存在です。

 木道はどんどん下っていき、川上川の河床とほぼ同じ高さになりました。

 ここにもミズバショウが。まだ生き生きとしています。

 ツボスミレ

 朝露を身にまとったツボスミレ。

 カンムリタケ

 木道の端に蛍光オレンジの何かが。これはカンムリタケ。半ば水没して朽ちかけた樹木に生えるキノコだそうです。小さいですが綺麗ですね。

 アズマシャクナゲ

 岩場の上、高さ5mくらいにところにアズマシャクナゲが咲いていました。普通に歩いていると気が付かない高さです。

 シラネアオイ

 シラネアオイですね。日本の固有種。どこで出会っても気品のある姿にハッとします。

 道が平坦になってきました。森の木々はまだ木漏れ日が届くくらいの葉の展開具合です。

 オオタチツボスミレ

このスミレは?オオタチツボスミレでしょうか。微妙な違いを覚えるのは難しいんですよね。

 ちょっとしたミズバショウの群落がありました。前を歩くのは歩荷さん。話しかけたりカメラを向けたりしないのがマナー。たまたま写り込むのは問題なしです。

 やあ、なかなかの景色ですな。こんなところを歩けるなんて。



 純白の仏炎苞が綺麗ですね。やっぱり今日来て正解でした。

 サンリンソウ

 これはサンリンソウかな。

 川上川を跨ぐ橋が現れました。山ノ鼻まではあと僅かです。む、橋の向こうで妻が何かに見入っていますね。

 ムラサキヤシオ

 行ってみるとムラサキヤシオツツジでした。花冠をアップで。確かに平板な感じですね。

 山ノ鼻

 ほどなく建物が見えてきました。

 9時30分、山ノ鼻に到着。広場では多くの人が休憩していました。ちなみに、山ノ鼻の「山」とは至仏山のことで、その鼻先に位置しているので山ノ鼻と呼ばれるようになったのだそうです。ここには3軒の山小屋と環境省のビジターセンターがあり、いつも賑わっています。

 上田代へ

 小休止の後に湿原に向けて出発しました。すぐ目の前から上田代が広がっていて、奥に向かって中田代、下田代と続き燧ケ岳の麓に至ります。

 上田代に入りました。広々としていますね。一面のミズバショウを想像していましたが、湿原の中では川筋とかある程度土壌があるところでないと生えないとのこと。

 至仏山

 振り返ると至仏山が。遥か1億年前、中生代の岩石でできている山。いつ見ても堂々としていて、安心感を与えてくれます。

 リュウキンカ

 木道脇にリュウキンカの小群落が。尾瀬によく似合う花ですね。

 あー、ミズバショウ、こんな感じでダメージを受けたんだ。霜に焼けてしまって無残な感じです。

 ミズバショウ

 これは霜の降りた日より後に伸びたものでしょうか。

 燧ヶ岳

 尾瀬のもう一つの名峰、燧ヶ岳。その燧ヶ岳に向かって木道はまっすぐ延びています。ああ、こんな風景の中に身を置く幸せよ。(後編に続く)