大山 ~馴染みの山へ初山詣で~


 

【神奈川県 伊勢原市 平成27年1月10日(土)】
 
 年が改まって2015年、平成27年になりました。
 今年は未年です。前回の未年はどんな年だったかなあ、と思い返してみると、2003年、平成15年当時は広島に住んでいました。この年に何があったかググってみたら、朝青龍の横綱昇進、SARSの流行、六本木ヒルズのグランドオープン、りそな銀行発足、異常冷夏、住基ネット稼動、日本産トキの絶滅、などなど。そういえばそんなこともあったなぁという感じです。
 
 この正月、初詣は元日に近所の神社に行き、初山詣でを2日にと考えていましたが、元日の昼前から天気が荒れたので山の方は延期していました。で、松の内も過ぎてしまいそうな3連休の初日に神奈川県の大山に行くことに。いつもベランダから眺めている馴染みの山です。(前回の大山はこちら)。
 
                       
 
 今日は公共交通機関で移動です。まず、7時過ぎの電車で橋本まで行って、そこからJR横浜線で町田へ。町田からは小田急線で伊勢原に向かい、そこからバスとケーブルカーで大山の中腹まで上がります。町田以降の交通機関を割安に利用できる「丹沢・大山フリーパス」というクーポンを小田急の各駅で販売しているので、迷わずこれを購入。これはかなり割安です。
 伊勢原までは約1時間で到着しました。大山ケーブル行きのバス停には既に長蛇の列ができていたので、1本見送って、8時25分発の便に乗車。これでちゃんと座って行けました。

 バス終点

 8時55分、終点の大山ケーブルバス停に到着。ここからは両側に商店が並ぶ参道を上っていきます。


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 大山には阿夫利神社という神社があって、一年を通じて参拝客が多く、また東京近郊の見晴らしのいい山なので、登山客もかなりの数に上ると思います。
 山の中腹に阿夫利神社の下社、山頂に上社があり、古くは修験の山だったそうですが、江戸の頃からは庶民の行楽として大山詣でが盛んになったといいます。今日のルートは、まず下社まで上がって、そこから時計回りに登山道を歩き、また下社に戻ってくるというものです。

 参道商店街

  商店街はお土産屋さんの他に名物の豆腐を売る店も多いです。あと、元は宿坊だったものか、旅館的な豆腐料理屋も何軒かありました。豆腐懐石がどこも一様に結構な値段設定でした。観光地相場でしょうか。

 おおやま号

 ケーブルカーの駅に行ってみるとそれほど混んではいませんでした。ケーブルカーは下社まで行きますが、そこまで昔ながらの参道が続いていて、途中に大山寺という寺もあるので、その区間を歩いて登る人もいるのです。yamanekoも歩いて登りたかったのですが、妻の強い反対に会い断念しました。この寒い中、上で待たされるのは勘弁願いたいとのことです。歩きだと所要時間は4、50分くらいでしょうか。ケーブルカーなら6分です。
 乗り場で待っていてくれたのは緑色の「おおやま号」。ケーブルでつながって今上の駅にいるもう一台は赤色の「たんざわ号」です。

 9時35分、下社に到着しました。駅からはほぼ水平移動で境内下の広場へ至ります。ここには茶店が何軒かあり、暖かいものも食べられます。ここから階段を上った先に拝殿があります。

 阿夫利神社下社

 境内には早くも大勢の参拝客がいました。この場所は明治の初めの神仏分離令発布までは神社ではなく不動堂(大山寺)があったのだそうです。もともと神仏習合で寺と神社が混然としていたものを明確に分けようとするのが神仏分離の目的だったようですが、全国の現場では寺の権力構造を破壊する方向で広がっていき、この時期に廃寺になったり仏像が壊されたりするものが多かったそうです。ここの不動堂もその流れで一旦は廃されましたが、数年後に150mほど下った所にある現在の大山寺の場所で再建されたのだそうです。
 早速茅の輪くぐりをして神社に参拝です。yamanekoは家内安全と自らの健康を祈念しましたが、妻は家内安全と世界平和をお願いしたそうです(偉いんだか何だか…)。

 登山口(この奥)

 参拝後は登山口へ。登山口は本殿の左手奥にあります。そこで入念に準備体操をしました。正月明けで体が鈍っていることに加え、今日は気温も低く、筋肉が硬くなっていると思うのです。

さあ、登山開始。門をくぐったらいきなりこの急階段。大山の先制パンチです。

序盤は木立の中を登っていきます。しょっぱなの階段で体は温まりましたが、空気はピンと張っていて、そのヒンヤリ感が気持ちいです。

 足場は根の露出や浮石などで捻挫に注意。登山道がやや荒れ気味なのは、人気の山ゆえにオーバーユース気味なのかもしれません。

 センニンソウ

 満開の桜にも見えますが、これはセンニンソウの果実。なかなか壮観でした。「枯れ木に花を咲かせましょう」の花咲か爺さんは、案外センニンソウを使ったトリックだったのでは。新説です。

 しばらく行くと林の中に何か動くものが。シカです。距離は15mほどでしょうか。餌を探しながらも一応こちらを気にしている様子ではありました。こうやって見ると可愛いんですがね…。

 夫婦スギ

11丁目にあった大きなスギ。夫婦杉という名で、樹齢5、6百年だそうです。ざっと室町時代の生まれになりますね。大山の登山道は元々参道なので、所々に丁石が置かれています。ちなみに山頂は28丁目になるのだそうです。

 今日は冬の野山歩きにしては申し分のない天気ですね。こんな日に野山歩きができる幸せ。しみじみです。

 ブナ

 これはブナですね。丹沢にはブナも多いです。

 南側の眺望が開けている場所に出ました。14丁目辺りです。

 湘南

 冬の太陽は低いところにあるので眩しいです。 見えているのは茅ヶ崎、藤沢辺り。湾内に浮かんでいるのは江ノ島です。その向こうに伸びているのは三浦半島。その更に奥で霞んで見えるのは房総半島です。富山の特徴的な二つの耳も見えていました。

 牡丹岩

 眺望を楽しんだ後は再び登り始めます。
 この辺りの岩には写真のような状態になっていて、牡丹岩という札が掲げてありました。yamanekoには牡丹というよりタマネギに見えてしまいます。

 天狗ノ鼻突岩

 しばらく行くと天狗の鼻突き岩というのもありました。岩に丸い穴が空いていて、これが天狗が鼻で突いて空けたものという言い伝えがあるそうです。いろいろ考えるものですね。

 15丁目に休憩できる広場が。ベンチもあります。ここで持参のアンパンでパワー補給。

 富士見台

 11時ちょうど、富士見台というところに出ました。西側の眺望が開けていて、大勢の人が休憩していました。その名のとおり富士山の姿を拝めます。

 富士山の東面。裾野が広いですね。右手前の山は、大山からヤビツ峠に向かう尾根と、峠の向こうにある塔ノ台が重なって見えているものです。

 だいぶん傾斜が緩やかになってきました。両側から大きなアセビが張り出していて、トンネルのようになっています。冬枯れの風景の中に緑色の葉があると、何だかほっとします。

 11時20分、ヤビツ峠への分岐に到着しました。ヤビツとは「矢櫃」のことで、戦の際に矢を運ぶための入れ物のこと。それがこの峠付近で出土したことによる名前だそうです。ヤビツ峠は表丹沢に向かうルートの玄関口です。

 やがて鳥居が現れてそれらしい雰囲気に。ここまで来れば山頂はあとわずかです。

 11時35分、山頂に到着しました。この先に阿夫利神社の上社があります。

 階段を上ったところが大山祇大神を祀る本社です。その裏手には奥社も。

 山頂からはほぼ360度の眺望が得られています。それだけ大山はどこからでも眺めることができるということです。山の形も整っていることから、信仰の対象として、また沖をいく船の道しるべとして、昔から多くの人から敬われてきたのだと思います。
 写真の左端に江ノ島。輝く相模湾をはさんで右端は箱根の山々で、そこから海に向けて真鶴半島が伸びています。その奥のうっすらとした山影は伊豆半島ですね。

 炎の昼食

 山頂はたくさんの人で賑わっていましたが、どうにか二人分のスペースを見つけて腰を下ろし、昼食タイムにしました。
 今日のメニューはカップ麺とおにぎりです。今日は寒いだろうと朝コンビニで蒙古タンメンの北極ラーメンを購入。ところがこれが悲劇の始まりでした。そうでなくても激辛なのに付属の辛味ペーストも全部絞り入れたものだから、一口食べて悶絶。二口目を食べる前に頭の毛穴が全部開きました(そんな感じがしました。)。そして喉や舌は言うに及ばず、唇の周りまでが痛くなるほどの超絶な辛さを味わうはめになったのです。それでも一口すする度に水を飲みながら食べたのですが、途中からなんか首筋から背中、腰回りにかけてスースー寒いんですよね。これはおそらく辛さの刺激で全身の血管が拡張して体温が放散されたからだと思います。暖まろうと買った激辛ラーメンですが、度がすぎると逆に寒い思いをするという、なんか寓話のような話でした。

 山頂は凍った地面が融けてかなりぬかるんだ状態。前のベンチでは中高年のおじさんグループがワイワイやっていました。見ると、お酒は各種揃っていて、料理もおでんや焼き鳥など、完全に居酒屋仕様です。山頂は気圧が低いので酔っ払いやすいし下山は大丈夫かね、などともっともらしいことをを妻にのたまったのですが、いうまでもなくこれは羨ましさからの発言です。

 メギ

 激しい昼食を終えて辺りを散策。この赤い実はメギですね。別名をコトリトマラズ。冗談みたいな名前ですが見ての通り鋭いトゲが四方八方に向いて密生しているので、確かに小鳥は停まれないでしょうね。ちなみにメギ科にはヘビノボラズという木もあります。投げやりなネーミングですね。

 奥社

 ちょっと山頂部を散策。こちらが雷大神を祀る奥社です。

 山頂から東側に一段下がった広場に下りました。ここからは横浜から都心、埼玉方面にかけての眺望が素晴らしかったです。
 それにしてもだだっ広いですね、関東平野。

 12時35分、下山開始。雷ノ峰尾根を下ります。登山道にグレーチングが施されていますが、これは山頂部にシカが侵入しないようにしているのだとか。蹄が網の隙間に入り込むのでシカが嫌うのだそうです。

 途中、登ってきた方角の谷を見下ろせました。谷底を埋めるように門前町が伸びています。写真右下に見える建物は阿夫利神社の下社です。

 明け方に凍った地面を日中の陽射しが融かして、登山道のあちこちがぬかるんでいます。靴の底がぼってりと重たいです。

 所々に鎖が張ってあるところもありましたが、高度感はなく、凍結でもしていない限りは特に危険はありません。

 見晴台

 1時45分、急な下りも終わり、平坦な見晴台に到着しました。6人掛けくらいのベンチが並んでいて、かなりの広さがあります。

 大山

 振り返ると山頂があんな高いところに。どおりで急な下りが続いたはずです。

 氷柱

 元は霜柱だったのでしょうが、それがブロック状になってガチガチに固まっています。まるで石のよう。こんなのが足元にごろごろ転がっていました。

 見晴台からは山腹をトラバースするようにして徐々に高度を下げていきます。

 この辺りは谷が深く、ところどころ大規模に崩れたりしていました。滑落事故も多いようです。

 二重社

 二重社という小さめの神社までやって来ました。ここは阿夫利神社の摂社で、高龗神(たかおかみのかみ)、すなわち水神が祀られているところだそうです。この社のそばには二重滝という立派な滝があるので、これを龍に見立てたのかも。ひっそりとして雰囲気のあるスポットでした。

 14時15分、下社の下の茶店のところに戻ってきました。

 ここからはケーブルカーは使わずに歩いて下りたいところです。妻は当然にケーブルカー利用ですが、下の商店街でお土産を見て時間を潰すとのことで、晴れて別行動ということになりました。
 ところが下り始めてほどなく左膝に痛みが。これはいつもの腸脛靭帯炎です。平地や上りではなんともないのですが、下りでは、特に階段状のところを下るときに膝に釘を打ち込んだような痛みが走るんです。

 女坂

 すぐに男坂と女坂との分岐が現れました。距離が短いのは男坂ですが、女坂には途中に大山寺があるのでそちらを選択しました。でも、こっちも結構な斜度です。

 地図を見ると女坂は途中でケーブルカーの軌道と交差するのです。まさか踏切じゃないだろうし実際にはどうなっているのかと思っていたら、ケーブルカーがくぐる短いトンネルの上を参道が通っていてここで軌道を跨ぐ形になっていました。
 トンネル脇でしばらく待っていると、まず下りの「おおやま号」がトンネルから出てきて、次に入れ替わりで上りの「たんざわ号」がトンネルに入って行きました。写真は「たんざわ号」です。ちなみにこの二つの車両、今年の秋には新型車に代替わりするのだそうです。10年前に改装されたそうですが、新型車両になるのは50年前の開業以来だそうです。

 大山寺

 14時45分、大山寺に到着しました。ケーブルカーの中間駅の大山寺駅からだとほぼ水平移動でここまで来ることができます。この寺の創建は奈良時代と古く、開祖はあの奈良の大仏を建立した良弁僧正だそうです。 建物は荘厳でしたが、やはり立地のせいでしょうか、阿夫利神社に比べると人影も少なくひっそりとしていました。
 ところで現在、下の駅が「大山ケーブル駅」、中間駅が「大山寺駅」、上の駅が「阿夫利神社駅」となっていますが、前回来た時(7年前)にはそれぞれ「追分駅」、「不動前駅」、「下社駅」でした。どうもその直後に駅名変更が行われたようです。以前の駅名は分かりにくいという声があったのだとか。まあ確かに名前だけではどこの駅か特定しにくいですが。

 大山ケーブル駅

 大山寺からは両側にミツマタの並木。まだ蕾は固かったですが、早春には歩いて楽しい道になるでしょうね。
 痛む左足をかばいながらケーブルカーの駅まで下りてきました。時刻は15時です。ここで妻に電話をしてみると、すぐ下の商店街のお土産屋にいるとのこと。行ってみるとちょうど孫の手を買おうとしていました。なんで? 修学旅行生がおもわず木刀を買ってしまうようなことでしょうか。

 反省会

 お土産を買い終わったら数軒先の食堂で反省会をして帰ることに(およそ反省会と名の付く会で反省などしたことがありません。)。名物の湯豆腐とおでんで熱燗を一杯。お酒は 「阿夫利大山」という、大山の伏流水を使って地元の酒蔵で造られているものです。疲れもありすぐにほわーんとなってしまいました。これからバスや電車を乗り継いで帰らなければならないのに。
 
 さて、初詣でを兼ねた今年最初の野山歩き。また膝が痛みましたが、まあ無事に終了しました。今年も健康第一、安全第一で野山歩きを楽しみたいと思います。とりあえず、明日の新年会では飲みすぎないように。